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年金受給年齢の引き上げ

 スウェーデンでは、平均寿命の伸びを考慮して年金受給年齢の引き上げが議論されていたが、政府は案に対する各団体の意見を求めることを発表した。この案は6党の合意によるもので、レミスの後に法案が国会に提出される。主な内容は以下である。

2020年
 年金受給のための最低年齢を61歳から62歳まで引き上げる。雇用保障を67歳から68歳まで引き上げる。

2023年
 年金受給のための最低年齢を62歳から63歳まで引き上げる。保障年金を得ることができる年齢を現在の65歳から66歳まで引き上げる。雇用保障を68歳から69歳まで引き上げる。

2026年
 年金受給のための最低年齢を63歳から64歳まで引き上げる。
 保障年金の受給年齢を66歳から67歳まで引き上げる。以降、平均寿命の増加に合わせて標準年齢(riktåldern)という概念が使われ、この標準年齢は新しく社会保険に導入され、およそ平均寿命増加の3分の2が自動的にこの標準年齢に反映される。年金受給に関する年齢および雇用保障年齢はこの概念に適応される。なお生涯での就労年齢が最低44年になる人に関しては、保障年金の受給年齢の引き上げは例外とされる。
 ポイントは標準年齢(riktåldern)という概念を使うことにより、毎回政治的議論を行う必要が無いことである(もちろん法律の数字は毎回国会での決定が必要になると思われるが、基本的な合意は出来ているので毎回の議論は必要ではない)。どの国でも年金受給年齢の引き上げなどは政治的対立を呼ぶ可能性がある。スウェーデンではこのようにして年金額の引き下げと同じように、前もってほぼすべての党が長期的な解決方法に合意して変更を実施に移していくことに特徴がある。

スウェーデンに「サ高住」のようなものはあるか。

 先日、ある人からスウェーデンには「サ高住」のようなものはあるかと質問があった。結論から言うと、存在しない。
 まず、住宅市場において自由に購入あるいは賃貸できる住宅(シニア住宅など)のようなものは存在する。もしホームヘルパーなどが必要になれば、市に申請して市が認めたホームヘルプ業者(市の運営も含む)によって行われる。住宅会社が市の許可を得てホームヘルプを行うのは可能だがあまり聞かない。ただし住宅会社がホームヘルプの一部(窓拭き、清掃)などを行うのは可能であるが、市の認定によるホームヘルプとして行うためには市の条件を満たさなければならない。法律的にはこの様な形態は一般住居におけるホームヘルプ(社会サービス法による決定)として取り扱われ、入居とホームヘルプがセットになっているわけではない。また利用者としてホームヘルプ業者を選ぶ権利があり、住宅会社はこれを拒否出来ない。一方、(24時間ケアである)「特別な住居」は入居とケアがセットになって認定される。
 1992年のエーデル改革以降、種々の理由により「特別な住居」は減少した。特にサービスハウスの減少が大きい。このため特別な住居の定義に含まれないシニア住宅などの建設が進められたが、これでは不十分だとして今年から認定によるサービスハウスのような形態が新しく導入された。対象は24時間ケアが必要な人ではない高齢者で、職員は24時間勤務していない。食事などは一緒に取るようなので、グループホーム形態ではないかと思われる。
2019年1月27日編集加筆。
 

何人、移民した?

 日本のマスコミは「スウェーデンは多くの移民者、難民を受け入れてきた」と書くことが多い。間違いではないが、数字は正しくないことが多い。たとえば2017年、スウェーデンは14万4489人の移民者を受け入れた。もちろんこの数字には難民申請者は含まれていない。しかしこの数字にはおよそ2万人のスウェーデン人が含まれていることに注意は払われない。なぜなら人口統計における移民者数とは国籍に関係なくスウェーデンで住民登録した人の人数である。一方、滞在許可や就労許可あるいは留学許可は移民庁によって許可されるが、北欧諸国からの移民は含まれない。なぜなら北欧諸国では許可を必要とせずに自由に移れるからである。この結果、2017年度中の移民者14万4489人の中で、スウェーデン人が1万9513人、他の北欧諸国から7575人、その他の諸国からは11万7401人である。
 2000年以降スウェーデン人の移民は年に1万6千人から2万人ぐらい、他の北欧諸国からは年に7千人から1万人ぐらいである。難民などは年によって大きく異なる。

家族人数と等価計算

どの国でも家計の可処分所得の比較を行っている。その場合問題となるのは家計の構成員の人数および年齢である。たとえば夫婦と子供一人の世帯は単身者の世帯に比べて必要な消費量はどれだけ多いだろうか。このためにスウェーデンでは消費単位という言葉が使われる。

スクリーンショット

この計算方法を使えば、夫婦と15歳の子供一人の消費は2.03(=1.51+0.52)になり、単身世帯に比べて2.03倍の消費が必要である。もし家族の可処分所得が4万クローナの場合、一消費単位あたりの可処分所得は19704クローナ(=40000/2.03)になる。家計の可処分所得などの比較においては、この計算方法は使われる。EUでもよく似た計算が使われているが、日本はOECDと同じく(年齢に関係なく)家族人数の平方根を使っている。この結果、日本の方が家族の人数効果を大きく取っている。

スクリーンショット1

日本がなぜこのような計算方法を使っているかは不明であるが、多分OECDで使っているからだと思われる(なおOECDの計算方法が最適だという理由ではなく、OECD諸国は統計が不十分な国も含むのでこのような簡易的な計算が使われると思われる)。

新年あけましておめでとうございます。


新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


移民者とは誰か

 日経にこんな記事が載っていた。内容は不正確である。確かに移民者の定義は国によって異なるが、関係問題はいわゆる移民政策の中で議論されている。また「制限無く」外国人を受け入れている国はどこにもないし、誰もそのようなことを議論していないし言ってもいない。だから首相の言っていることは詭弁である(どのマスコミもこれに対して反論していないのは不思議であるが、どの国が無制限に移民を受け入れているか例を挙げてほしい)。

 何回も書いているように、スウェーデンでは一部を除き1年以上滞在する人はすべて移民者である(1年以下の場合、住民登録されない)。もちろんその中には難民認定者もいれば、労働許可を持っている人あるいはその家族などもいる。労働移民できた人も婚姻のためにきた人も、留学のためにきた人もいる。日本の会社から派遣されて数年滞在する人も移民である。もちろん滞在許可の種類によって滞在中の条件などは異なり、すべての人が永住者ではない。しかし1年以上滞在する場合、原則的に種々の権利などはスウェーデン人と同じである(日本と違って、1年以下の滞在は移民者に含まれない)。

 スウェーデンの移民者数、移住者数は人口動態統計で公表されているので、簡単にその数字は入手できる(在住許可に関しては担当官庁である移民庁から入手)。日本の移民者数がはっきりとわからないので探していたところ、OECD統計に見つけた。しかしその数字は各国が提供しているものであって、国によってその定義が異なる。このため各国の移民者数の比較は止めた(OECDにはInternational Migration Databaseがあるが、こう書かれている”OECD countries seldom have tools specifically designed to measure the inflows and outflows of the foreign population, and national estimates are generally based either on population registers or residence permit data. This note is aimed at describing more systematically what is measured by each of the sources used.”)。

 日本の今回の改正によって、外国人の社会保障問題が大きく議論されているが、遅すぎはしないか。移民者あるいは他の名前をつけるにかかわらず、初めから外国人の社会保障問題は議論しておくべきもので、そこで大きな問題になるのは、日本での社会保障の多くは世帯単位であることである。このため扶養者が日本に住んでいるか外国に住んでいるかが問題になる。しかしあくまで原則は日本人と外国人に対する対応を同じにするということではなかろうか。そもそも日本人と外国人が同様に扱われない国で、誰が喜んで働こうと思うであろうか。外国人は使い捨てではない。今回の議論においてまだ年金の問題は議論されていないようである。外国人の場合(と言うよりも日本での居住あるいは就労期間が短い場合、日本人も含めて)、就労期間中の年金保険費用は掛け捨てになるのではないか。
 スウェーデンでは扶養家族の問題は原則起こらない。なぜなら保険のベースは子供を除き、原則個人であるからである。また海外での医療費なども、EU外では二国間協定が無い限り個人負担となる。このため、海外滞在のために旅行保険をかける人が多い(多くの家庭が持つ家庭保険に含まれている)。なお医療を受けられるのは1年以上滞在する人であって、日本のように3ヶ月ではない(EU国および二国間協定がある国を除く)。なお難民申請者および不法滞在者は特別規定による。

 日経は、「ーーーー欧州では1960年代以降にアジアや中東などから労働者を受け入れ、孤立した低所得の外国人が様々な社会問題を引き起こしました。日本で与野党ともに「移民政策はタブーだ」という意識が根強いのは海外の失敗例を多く知っているからです。」と書いている。
 本当に与野党は海外の例を十分知っているのであろうか。各国によって多少状況が異なるが、大きな問題は統合政策が不十分であったことである。今回の日本の議論はまさにこの統合政策が問題であり、欧州の経験から学んでいるとは思えない。そもそも「使い捨て政策」が統合政策に結びつくとは思えない。「技能実習制度」がその良い例である。

 日経は最後の結論において、「結論: 移民の定義は幅があり、国際的には1年以上の外国居住を移民と位置づける考え方もあります。日本政府は条件つきの在留資格は移民とは異なるとの立場です。」と書いている。国連の定義でも触れられているが、移民と位置づけられたからといって無条件なのではない。日経の記事は報道機関ではなくて政府の代弁機関のような結論である。
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Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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