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スウェーデンのcovid-19感染状況(9月19日アップデート)

 スウェーデンのcovid-19感染が話題になっているので、公的資料から現状をまとめてみた。次の表は毎週のPCR検査の結果を表している。27週目から対象が個人から検査数になった。左軸が人数/検査数で、下軸は週番号である。

図1 PCR検査の変化 
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 まずスウェーデン政府は今までに何回か検査の対象を拡大しているので、単純に数字を比較することは出来ない。初期の頃はコロナ感染の疑いがあっても症状がないあるいは軽症の場合、検査を受けることが出来なかった。これは検査のキャパシティが十分ではなかったからである。その後キャパシティの増加により、医療職や介護職だけでなく、その他の職にも広げられた。公衆衛生庁は5月5日、「covid-19検査に関する国家戦略」を発表、そして政府は公衆衛生庁と県行政庁に対して検査拡充の確保を指示した。検査の実施主体は県であるので、県によって検査の進捗状況は若干異なる。上図からも分かるように、週23ぐらいから週28ぐらいまで検査人数は急増したが、その後減少した。しかし市民が夏の休暇から家庭に戻り、また学校の秋学期が始まる第34週ぐらいから、再び検査人数は急増した。

図2 週当たりの陽性者数の変化

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図2a 日当たりの陽性者数の変化
 
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 上記には週当たりと日当たりの陽性者数/件数を載せた。第37週の検査数はおよそ14万2700件で、このうち陽性件数はおよそ1680件であった。第35週に比べると陽性件数は26%増えているが、検査件数は67%の増加であり、その結果陽性率は1.6%から1.2%まで減少している(このようにただ単に陽性者数の変化だけでなく、検査数/検査対象の変化にも注意する必要がある)。

図3 10万人当たりの年齢別陽性者数

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 10万人当たりの陽性率の変化を見てみると、80歳以上の高齢者は第16週まで急増し、その後対策が取られた結果、急減している。一方、第22週当たりから、他の年齢層、特に20-59歳における陽性者数および陽性率が増えた。これは特に医療、ケア関係者などに対する検査を強化した結果である(ストックホルム県などでは希望者全員が対象)。そして第26週当たりからはすべての年齢層において陽性率は急減した。第30週以降は夏休みの結果、特に20-29歳の青少年層の陽性率が一時的に増えた。

 スウェーデンでは高齢者住居(社会サービス法による認定にもとづいて入居)における感染者および死亡者数が多かった。次の図は週当たりの高齢者住居における新規感染者数を表している。これを見ても分かるように第12週から第16週まで高齢者住居における新規感染者数は急増した。その後徐々に新規感染者数は減少、第30週頃からは感染者数に大きな変化はなく第37週では全国で10人であった。今までの陽性者数のうち、およそ8.2%が高齢者住居入居者で、65歳以上に限定すると37%になる。
 
図4 高齢者住居における新規陽性者数
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 スウェーデンの戦略は医療崩壊をもたらす事なく、感染の拡大を防ぐ事で、医療資源の必要性の把握は非常に重要である。医療を運営している県自治体では非常事態に入り、病床、医療職員の確保に努めた。次の図はCovid-19による病院入院者の変化を表している(8月21日まで)。紅色は病院入院者、青色はICUのみ。4月から5月にかけて入院者は最大で、その後入院者数は急減している。公衆衛生庁の報告によれば、8月21日現在のcovid-19関係の入院者(総入院者数であって新規入院者数ではない)は全国で172名、ICUだけでは26名であるとの報告がなされた。入院者数が最大であった4月下旬/5月上旬に比べるとほぼ10分の1になった事になる。第31週までにICUでのケアを終えた人は2524名になり、このうち24%は死亡という形でケアを終えている。

図5 covid-19患者用病床数(一般病床およびICU)

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 次の図はICUの新規患者の変化である。4月8日に新規患者数が一番多く、49人であった。その後新規患者は減少し、現在1日にゼロから4人の間で、週37では全国の新規ICU患者は7名である。

図6 ICUにおける新規コロナ患者

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図7 ICU病棟における年齢別コロナ患者数

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 ICUデータベースによると、年齢が生存率に大きく寄与している。40-59歳ではICUでの治療が始まってから30日後に患者の87-90%が生存しているが、80歳以上の男性では46%、女性では28%に急減する(SIR=Svenska Intensivvårdsregistretによる)。

図8 ICUでの治療を始めてから最低30日後の生存率

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 スウェーデンのコロナ戦略は外国で大きく話題になったが、その中でも特に気がついたのは死亡統計の誤解である。スウェーデンではコロナ感染による死亡統計という場合、公衆衛生庁による死亡日による死亡者統計を指す。しかしなぜか日本を含む外国のマスコミが使う死亡統計がスウェーデンのものと異なる事を不思議に思っていた。
 その原因が分かった。スウェーデンでは死亡日による死亡者統計が使われているが、外国のマスコミが使っているのは死亡日ではなく報告日による死亡統計のようである。スウェーデン放送の報道ページには2つの図が載っていた。一つはよく知られている死亡日による死亡統計で、スウェーデンではおなじみである。他方(development of reported deaths)は報告日によるもので、Johns Hopkins University & Medicineが出所である(現在は訂正されている)。この2つの統計が大きく異なる事が分かる(日本のマスコミに出ていたのもJohns Hopkins Universityのものであった。前回のブログ(死亡日か報告日か)を参照)。

図9 死亡者の変化(死亡日、報告日ごと)

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 スウェーデンの統計によれば、死亡者が多かったのは4月8日と15日でそれぞれ115名がなくなっている。以降、死亡者数は連続的に減少し、現在一日当たりの死亡者数は一人かゼロである。死亡者数という観点からは第二波は訪れていない。公衆衛生庁の報告によれば、第37週までの死亡者数は5847人で、平均年齢は82歳(中央値84歳)、55%が男性、89%が70歳以上の高齢者である。なおcovid-19による死亡者数のうち47%が特別な住居(社会サービス法による高齢者住居)の居住者である。なお死亡統計には報告の遅滞が存在するので、直近1-2週間の数字は注意しなければならない。
 corona-19に関連の死亡診断書の分析によれば、covid-19による直接の死亡者はおよそ15%で、70%は他の要因が死亡の直接的原因(corona-19は副次的要因)であった。また死亡者のうち47%が高齢者住居居住者である。なおある県における調査では、死亡者のうち90%は重度の持病を持っていたと報告されている。

図10 年齢別死亡者

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 スウェーデンのコロナ戦略は、よく海外で言われているような「集団免疫戦略」ではなく、政府および公衆衛生庁は繰り返しこれを指摘していた。スウェーデンは先進国の中でも病院の病床が少ない事はよく知られている。このためコロナ戦略の核は医療破壊を招くことなく、感染を減らすことである。

図11 スウェーデンのコロナ戦略

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 具体的には病床数などの医療資源を指すが、他の方法は病院での手術の中でも救急でない手術の延期である(これによって余った病床および職員をコロナ患者のために使う事が出来る)。全国の手術件数は第3週ぐらいから第11週ぐらいは平常体制であった。しかしその後covid-19患者用の病床を作り出すため、多くの手術が延期になった。これは第16週では70%の減少となって現れた。その後救急でない手術件数はマイナス50%前後まで復活したが、第25週からおよそ5-6週間再び救急でない手術件数は減っている。8月になってから手術件数は大きく改善され、コロナ感染前のおよそマイナス20%近くまで回復している。なお救急の手術件数は大きな変化はない。なおスウェーデンでは2都市において軍隊による野戦病院が準備されたが、最終的に使用する事はなかった。

図12 救急でない手術件数の変化

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 最後に北欧諸国において携帯電話を使った移動分析を引用する。これによると、移動の減少が一番大きかったのはフィンランドであるが、26週ぐらいに第10週とほぼ同じレベルまで回復している。ロックダウンを導入しなかったスウェーデンでは週12から週21まで移動率はほぼマイナス20%であったが、現在はマイナス13%である。ロックダウンをしたノルウェーとデンマークは徐々に移動率が上がり、現在第10週とほぼ同じである。

図13 北欧における移動の増減

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資料)Folkhälsomyndigheten(公衆衛生庁)、Veckorapport om covid-19, vecka 37(第37週の報告)、SIR=Svenska Intensivvårdsregistret(スウェーデンICUデータベース)、スウェーデン放送コロナ特集ページ(https://www.svt.se/datajournalistik/har-sprider-sig-coronaviruset/)など。

2020年9月22日追加編集。

死亡日か報告日か

 外国メディアによるスウェーデンのコロナ死亡者数がスウェーデンで使われる数字と異なる事に、疑問を抱いていた。たとえば先日ある日本の番組でスウェーデンのコロナ対策が話題になった。コロナ関係で国際比較が行われる場合、Johns Hopkins大学の統計がよく使われる。この番組でもJohns Hopkins大学の数字が使われていたが、この統計では全般的にスウェーデンの死亡者数がスウェーデンで使われる数字よりも大きいのである。死亡者が最大なのは4月15日(?)185人と載っている。念のためJohns Hopkins大学のページで数字を確認した。確かに185人という数字が載っていた。また一見しておかしいのは曜日による違いが大きすぎることである(おかしいと思わなかったのであろうか)。

Johns Hopkins大学の統計(ある番組より)
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原因が分かった。以下の図表はスウェーデン放送の特別ページに載せてあった死亡日と報告日による「死亡者数」である。

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 上記の表はスウェーデンの正式な統計である公衆衛生庁による死亡者数で、これは死亡日ごとの数字である。死亡者数が最大なのは4月8日および15日115人である。公衆衛生庁の統計によれば1日の死亡者が100人を越すのは今までに4日である。
 最下の表は報告日による死亡数でありスウェーデンはほとんど使われないが、Johns Hopkins大学の統計では使われていた(先日Johns Hopkins大学の統計ページを確認すると、スウェーデンの数字は訂正されていた。しかしこの日だけなのか、全体的な訂正なのかは確認できなかった)。なお公衆衛生庁では直近の数字は暫定的であると注意している。日本を含む多くの外国メディアはJohns Hopkins大学の数字を引用することにより、報告日と死亡日を区別する事無く記事を書いていたのではないか。

2020年9月19日加筆修正

covid-19に関する政府広報動画(英語)

Health and medical care during the COVID-19 pandemic
Swedish experiences during the #COVID19 pandemic: Minister for Health and Social Affairs, and Olivia Wigzell, Director General The National Board of Health and Welfare, talks about the Government’s overarching goal to safeguard people’s lives and health and to ensure health system capacity.

Social distancing and adapting society during the COVID-19 pandemic
Swedish experiences during the #COVID19 pandemic: The pandemic has had a huge impact on the whole world. Listen to Johan Carlsson, M.D., Ph.D. Director General of the Public Health Agency, to learn more about Sweden´s strategy, risk group protection and social distancing.

Care of older people during the COVID-19 pandemic
Swedish experiences during the #COVID19 pandemic: A large quantity of deaths have occured in elderly care facilities all over Europe. “We will continue to implement measures to improve results and increase care quality” says Olivia Wigzell, Director General, The National Board of Health and Welfare.

Strategy in response to the COVID-19 pandemi(スウェーデン政府が4月6日に発表)

Strategy in response to the COVID-19 pandemic
Published 06 April 2020

The COVID-19 pandemic is testing our society. In recent weeks, the Swedish Government has presented a range of different measures to safeguard people’s lives, health and jobs.

“This crisis will continue for a long time. It will be tough. But our society is strong. If everyone takes their responsibility, together we will overcome it,” says Prime Minister Stefan Löfven.

On 1 February, the Government classified COVID-19 as a disease that constitutes a danger to society, opening the possibility of extraordinary communicable disease control measures.

The overall objective of the Government’s efforts is to reduce the pace of the COVID-19 virus’s spread: to ‘flatten the curve’ so that large numbers of people do not become ill at the same time.

It is important to implement the right measure at the right time, to achieve the best possible impact. The Government will take every decision necessary to safeguard people’s lives, health and jobs.

The measures taken by the Government and government agencies to reduce the pace of the virus’s spread need to be weighed against their effects on society and public health in general. The measures taken are reviewed constantly as the situation develops.

An important starting point is careful consideration of the expert knowledge contributed by government agencies. These expert agencies can make recommendations to the Government on the measures they consider should be taken, but they can also take decisions of their own.

“Our government agencies and our health care system are doing everything they can. But every person in Sweden needs to take individual responsibility. If everyone takes responsibility, we can keep the spread of the virus in check. Follow the authorities’ advice: if you have even the slightest symptoms, do not go to work and refrain from meeting other people,” says Mr Löfven.

People in Sweden have a high level of trust in government agencies. This means that a large proportion of people follow government agencies’ advice. In the current situation, people in Sweden are on the whole acting responsibly to reduce the spread of infection by, for example, restricting their social contacts.

This crisis may continue for a long time, and in order for the measures to work over time, people need to understand and accept them.

The efforts and decisions of the Government aim to:
1. Limit the spread of infection in the country
By limiting the spread of the virus, the Government aims to relieve pressure on the health care system and protect people’s lives, health and jobs.

2. Ensure that health and medical care resources are available
The Government aims to ensure that the municipalities and regions, which provide the health care, have all necessary resources. For this reason, central government will cover all extraordinary costs arising as a result of the pandemic, e.g. higher costs for additional staff and protective equipment.

3. Limit the impact on critical services
To ensure that society can continue to function, the Government monitors needs and takes the decisions required to ensure that the health care, police, energy supply, communications, transport and food supply systems, for example, can maintain their activities.

4. Alleviate the impact on people and businesse
The Government has presented crisis packages to mitigate the financial impact of the pandemic on Swedish businesses, organisations and agencies, and to save people’s jobs and livings.

5. Ease concern
By continuously providing information, the Government aims to make it clear what measures are being taken, and why. The Government broadcasts important information live on its website, regeringen.se. Written information about the Government’s efforts, measures and decisions is also available there.

6. Implement the right measures at the right time
The Government is monitoring developments in the COVID-19 pandemic closely. It is taking the decisions that are needed, when they are needed, to limit the spread of the virus and counter its impact on society.

なお他に英語での情報として、公衆衛生庁のホームページがある。
FAQ about COVID-19

スウェーデンのコロナ感染対策に関する誤解 個人的覚え書き

 スウェーデンのコロナ感染対策は、日本のマスコミだけではなく英語圏のマスコミにおいても誤解あるいはフェイクが少なくない。スウェーデンの対外広報を担当するSwedish Instituteは、すでに4月8日13の言語圏(日本は含まれていない)におけるスウェーデンに関するマスコミ情報などを分析、公表した。そしてこれには次のような文章が書かれている。
「There are misunderstandings about Sweden's strategy, both that it is primarily aimed at creating herd immunity but also that there would be economic motives for Sweden's actions」

「集団免疫戦略」
 いわゆる「集団免疫戦略」は公衆衛生庁の国家感染官Tegnell氏や政府首脳によって否定されているが、現在でも英語誌や日本のニュースにあたかもこれが真実のように報道されている。ただし公衆衛生庁は抗体検査などの調査をしているので、これに関する発表などもある。そしてこの結果を参考にするということが、あたかもこれが目的のように取られたのではないか。あるいは高齢者住居における死亡の多さが、「集団免疫戦略」の結果(あるいは目的)としてリンクづけられたのではないか。あるいはロックダウンに対する「戦略」として、二者択一のように思われているのではないか。
 「集団免疫」とは多数の人々が免疫を持つことにより、病気の拡大は収まるか緩やかなものとなると考えられている。日本語の記事を含めて「スウェーデンの集団免疫戦略」という言葉を使っている記事を一部読んでみたが、情報源はもちろんの事、具体的な説明もされていない。たとえば、ニューズウィーク日本語版5月8日には、「ウイルスにさらされる人を増やして「集団免疫」を獲得し、感染拡大の第2波を防ぐというのが彼らの戦略だ」と書かれている。初めて聞く説である。
 「スウェーデンの集団免疫戦略」とは集団免疫ができるまでcovid-19の拡散を防ぐのではなく、反対に集団免疫ができるまで拡散させる「戦略」という意味に使われているのだろうか。これはすでに公表されている政府戦略と相反するものである(そもそも政府の戦略はあまり外国のマスコミによって紹介されていない)。ロックアウトをしていない事がなぜか「集団免疫戦略」としてリンクづけられ、事実関係を調べる事無く言葉が一人歩きしているのではないか。

 DN誌の医療レポーターであるAmina Manzoor氏は5月15日の記事で以下のように述べている。google訳。
「The word flock immunity has almost become a scapegoat during this pandemic. It has, for example, been used by Trump (he really just said "the flock") to show that the Swedish strategy without hard shutdowns is a failure and that one is sacrificing individuals to achieve the flock immunity.
He is not the only one who has misunderstood this. The Public Health Authority and the government have repeatedly denied that flock immunity would be Sweden's strategy. Instead, the Swedish corona strategy focuses on leveling the curve and reducing, but not completely stopping, the rate of spread of infection - albeit not to the same extent as most other affected countries. A side effect of the strategy is that with a large proportion of infected people in society can reach the limit of herd immunity. Government officials have repeatedly talked positively about flock immunity, which may have contributed to the confusion.」

都市封鎖なし
 スウェーデンは都市封鎖をしなかったという記事が多いが、これも不正確である。スウェーデン政府は都市封鎖を完全否定していたのではなく、その時期ではないという考えであった。そのために、政府は4月18日には「感染予防のため一時的制限法(prop/19/155)」を公布している(6月30日までの時限立法)。一言で言えば、国会の決議なしに一時的制限法を導入できる権限を政府に与えた(この法律による決定は公布後に国会に事後報告を行う)。これによって政府は交通機関の使用禁止、レストランなどの業務停止などを含む6種類の命令を出すことが出来るようになった。法案には直接都市封鎖という言葉はないがそれに準じる内容であり、政府の意図は、さらに悪化した場合に備えて法律面での準備をしておくことである。
 確かにスウェーデンは他の国のような都市封鎖はしていないが、不用不急の旅行の自制、三密の回避などの要請を行い、多くの国民はそれに従っている。これは携帯電話の位置情報の分析からも分かっている。また三密を避けるための条例はすでに公衆衛生庁によって公布され、たとえばストックホルム県では21ヵ所のレストラン/バーなどが業務停止命令を受けた(その後このうち19ヵ所では改善後に再オープンしている)。スウェーデン政府は上記の記述のように都市封鎖という方式を完全否定していたのではなく、その時期ではないという判断であった。この判断の背景には都市封鎖は長期的には機能しないという判断があったようである。日本ではこれらの背景および考え方は全く報道されていないようである(学校閉鎖も同じ問題である)。
 なお「都市封鎖をしなかったのは経済を優先した結果である」という表現が一部のマスコミで使われているが、これも誤解である。「covid-19対策は長期化する事が考えられ、このために社会経済は機能しなければならない」と言う考え方で、経済を感染防止よりも優遇するという事ではない。感染防止が一番大事な対策である事に変わりは無い。

スウェーデンの戦略
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 ではスウェーデンの「戦略」はどうなっているのであろうか。まず公衆衛生庁や政府が戦略を説明する時に必ず使われる図がある。図の縦軸はコロナ疾患の件数、横軸は時間、点線は医療の病床数である。橙色は医療の病床以上にコロナ感染が広がり、いわゆる医療崩壊を表す。青色はスウェーデンの戦略で、医療崩壊を起こすことなく、感染の拡大を引き延ばすことを表している。これがスウェーデンの戦略である。この図はスウェーデンでは有名でありながら、英語圏や日本語圏におけるコロナ感染ニュースでは見た事がない(もちろん見落としたという事は考えられるので、100%否定をするものではない)。不思議な話である(政府資料を調べていない証拠?)。

報道は正確か?
 公衆衛生庁、社会庁および市民防衛庁などは毎日現状についての共同ブリーフィングを行っていた(現在は週に2回)。公衆衛生の専門家として参加しているのはTegnell氏などの公衆衛生庁の疫学者である(現在の公衆衛生庁は以前の公衆衛生庁と感染予防研究所が統合されたもので、Tegnell氏は感染予防研究所の所長であった)。Tegnell氏は今まで無名の公務員であったが、ファンクラブが出来るほど一躍有名になった。
 日本を含む外国の報道には誤解あるいはフェイクが少なくないと書いたが、いくつかの例を挙げる。6月3日、スウェーデンラジオ放送はTegnell氏にインタビューを行い、放送した。この内容が外国メディアでも大きく話題になったが、内容は不正確であった。6月4日、BBC日本語版は「スウェーデン、ロックダウンせず「多くの死者出た」 政府疫学者」という記事を公表した。この中で、BBCは「新型コロナウイルスの感染症(COVID-19)対策を指揮してきたアンデシュ・テグネル博士は3日、厳格なロックダウン(都市封鎖)を敷かないという判断によって同国で想定より多くの死者が出たと認めた」
 これはフェイクである。前日のインタビューにおいてTegnell氏はそんなことは言っていない。
「- Should we encounter the same disease, with exactly what we know about it today, I think we would land in doing midway between what Sweden did and what the rest of the world did.」
 Tegnell氏が言ったのは、上記の言葉(google翻訳)で、前半分を略して、あたかも間違いを認めたかのようにmistakeという言葉を使ったかのように書いているマスコミも多い(NHKニュースでも、前半分を略してミスを認めたような書き方をしている)。

 インタビューの最後で、Tegnell氏はロックアウトではなく段階的な対策を取る理由について重要なことを言っている。
「- Actually, all countries have thrown everything in right away. Sweden is one of the few countries that has worked up a stop more and more. All other countries started with the huge lot at once, and the problem with that is that you don't really know which of the measures you have taken has the best effect. We may know that now when you start taking action off one by one, and then maybe we will get some kind of lesson about what else, besides what we did, you could do without driving the total shutdown.」Google訳

統計をどう読むか。
 6月15日のニューズウィーク日本語版に、「スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に、死亡率も世界屈指」という記事がある。この中で以下の指摘がある。「スウェーデン政府の公衆衛生局は6月11日、1日あたりの新型コロナウイルス感染確認者数が過去最高の1474人になったと明らかにした。」当日のブリーフィングでは、確かにこの数字は上げられているが、直近の数字は死亡者数と同じく暫定的なものなので、注意深く判断しなければならないと何回も指摘されてきた。
 下記の表は公衆衛生庁の同様の図である。これを見てもわかるように陽性者数は日によって大きく異なり、金曜日から月曜日には大きく減少している。これは主に軽度の人やケア職員に対する検査が大きく拡充されたことによる(このため毎日の表よりも毎週の表の方が見やすい)。

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 同様にして、6月23日のニューズウィークには、「スウェーデンが「集団免疫戦略」を後悔? 感染率、死亡率で世界最悪レベル」という記事がある。<人口100万人当たりで換算すると、感染者数も死者数もアメリカと並んで世界屈指の惨状>という副タイトルに続き、「新型コロナウイルス対策でロックダウン(都市封鎖)を行わず、集団免疫戦略を取るスウェーデンで6月17日、約1カ月ぶりに1日の死者が100人を超えた。19日時点で感染者数は5万6043人、死者数は5053人に上る」
 死者数5053人は正しいが、100人の死者というのはどこからの引用なのだろうか。公衆衛生庁ではない。なお6月17日の死亡者数は後日、33名と判明している。直近の数字は変わる可能性があるのはこのような統計には付きものだが、あまりにもお粗末である(少なくとも私が知る限り、訂正記事は出ていない)。同様にして感染率や死亡率も比較には注意が必要である。感染率は国の検査方針に大きく依存し、積極的に検査を行えば感染者は増えるが、感染率は低くなると考えられる。同様にして、検査を積極的に行えば感染者数は増え、条件が変わらなければ死亡率は低くなることが予想される。これだけフェイク記事あるいは不正確な記事が続くと、どの様な背景があるのかと疑いたくなる。

なぜ誤解あるいは拡大解釈が多いか。
 スウェーデンに特派員を置いているマスコミは少ないため、スウェーデンに関しては昔から誤解が多かったように思える。今回は特にスウェーデンに関する話題が時期的に集中したので、これが余計目につく。かなり思い込みで書かれている記事が多いように思える。科学的分析ではないが、理由を考えてみた。1.今回の報道を見てあるいは読んで事実確認が不十分であると思われることが何回もあった。コロナ感染により移動が制限され、スウェーデンに来て取材をする事が不可能になった。しかし公衆衛生庁などは毎日マスコミ用のブリーフィングをし、その記録もYoutubeにアップされている。残念ながらスウェーデン語であるが、ブリーフィングには海外からの参加も可能で、英語で事実確認をする事ができる。日本メディアで直接事実確認をした事があったであろうか。このため報道は英語圏あるいは通信社の情報がメインになり、情報の正確さ、妥当性を調べる事無く、単純なコピーになりやすい(なおこの場合も正確に引用先/情報源が書かれていない事が多く、内容のチェックが難しくなる)2.特にインタビュー記事などでは元の記事などにおける一つの文章を引用するのではなく、文章の一部が引用される事が多い。これによってインタビューにおける文の関連、流れが削がれ、前後の関連が失われる場合もある。マスコミは読者の興味をひくため、刺激的なタイトルを好む傾向にある。これがさらに誤解を増やしている。3. スウェーデン語から英語そして日本語と訳される場合に、文章のニュアンスが失われたり、誤解、不正確な情報の再生産が行われる危険性が増える。日本のマスコミにスウェーデン語で取材をするべきだとまでは言わないが、少なくとも英語で第一情報源に対して取材はするべきではなかろうか。ただ最近、スウェーデン在住の人が書いた記事を見る機会が増え、情報の正確さという点から改善されている事を付け加えておく。

2020年8月9日追記。

政治家の育休休暇

 小泉氏の育休が話題になっているようであるが、議論の仕方に違和感がある。丁度、こんな記事があった。
 スウェーデンではどうか調べてみた。まず大臣および国会議員は24時間、365日、それぞれの職務に就いていると考えられ、国会が閉会中もその職務を行う。大臣は他の労働者と同じように雇用されているのではないため、社会保険法典は直接適用できない。また大臣という性格から、長期的に休むことは困難であり適当ではない。
 首相が憲法に従い内閣の役割分担などの権限を持っており、大臣が病気になった場合、他の大臣が代わりを務めるか新しい大臣を任命する。大臣が育児などで休む場合もほぼ同じ扱いである。一般的には休職が1ヶ月以上になれば、新しい大臣を選ぶことが多いようである。
 大臣が休むことを首相が認めた場合、給与は10%減給される(国会議員および国会に勤務している者が育休を取る場合、社会保険庁から80%、国会事務局から10%、あわせて90%保障される。大臣の場合もこれと同じように考えられているが、政府が90%保障する。ただし大臣という性格上、親保険の対象とは考えられていない)。なお国会議員には各党とも補欠要員という制度があり、議員が何らかの理由で1ヶ月以上欠席する場合、議員の代わりを務める。
 スウェーデンでは、大臣が育児のために長期的に休んだというのはないと思う。長くても数週間ではないかと思う(多分この時も仕事量を減らすという形であったと思う)。なお前の外務大臣が社会大臣だった時に育児のために勤務場所をストックホルムではなく、地元の市に移したことがある。
 最近、労働省の政務次官が育児休暇で8ヶ月間休むため、代わりの政務次官が任命された(本来の政務次官は8ヶ月後に職に戻る)。育児休暇中の仕事をどう配分するかは雇用主が決めることであるが、普通は雇用主が臨時雇用として職員を募集する。
 日本でよく話題になる育児休暇を取ったら同僚に迷惑がかかるという考え方は、スウェーデンにはない。一つは育児休暇は権利であること、第二に育児休暇中の仕事の配分は会社あるいは上司の管理能力の問題であると考えられる(育児休暇中は社会保険から手当が出るが、会社の直接の負担はない)。
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Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
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スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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