高齢者ケアにおける費用負担

高齢者・障害者ケアにおける自己負担は、社会サービス法によって各市が決定できるものとされている。この場合第1に実費を越えてはならないこと。第2にすべての利用料を支払った後、生活費が残らなければならないこと。第3に夫婦の一人が特別な住居に入居した場合、在宅に住んでいる配偶者の生活が経済的に悪化しないように市は保障しなければならない。

− 介護費用、デイケア費用、市の訪問看護費用は、1772クローナ(2016年)を越えてはならない。
− 賃貸法が適用されない住居の場合、その費用は一月当たり1846クローナを越えてはならない。
− 介護費用、デイケア費用、市の訪問看護費用、賃貸法が適用されない住居の費用を徴収するためには、最低額(minimibeloppet)が残らなければならない。単身者の最低額は5001クローナ、同居している夫婦あるいは共生の場合は一人あたり4225クローナである。これに住居費を加えた額が最低保証額(förbehållsbeloppet)になる。
− 法律による最高額、最低保証額の規定は守らなければならないが、この範囲内で市は費用計算を決定できる。たとえば2013年に行われた調査によると、在宅における介護費用を時間単位で決めていたのは市の50%になる。また時間ではなくレベルごとに費用を決めていたのは32%、レベルと収入によるのは8%である。
− 高齢者ケア全体では個人負担の割合は平均でおよそ3.8%である(ホームヘルプは5.7%、特別な住居における介護などは3%。ただし特別な住居は住居なので、この計算においては家賃は含まれていない)。

費用計算の根拠となる収入の定義は1年間の見なし収入とし、高齢者のための住宅手当も収入に含まれる。財産は費用に影響しない。夫婦の場合、両者の収入総額を2で割ったものを個人の収入と見なす。収入の定義は、原則的に年金庁の高齢者に対する住宅手当と同じ計算方法を使用する。費用決定は、行政裁判を通じて不服申請ができる。

なお「特別な住居」における食費は各市が決定し、家賃は住宅会社(普通は市の住宅会社)が決定する。

この文章は「医療福祉研究No26(2017年号)」(医療福祉問題研究会)に載せた「スウェーデンの社会保障における最低保障」という記事から引用しました。一部追加あり。

来年は選挙

来年の9月9日は統一選挙である。今日の新聞によると、選挙で話題になると思われる5つのテーマが載っている。

1.福祉分野における利益制限。
福祉、医療、教育分野における民営化はスウェーデンの政治において一番大きい問題である。政府委員会は福祉分野の利益制限案を公表し、現在これが議論されているが、最新の情報によると政府は次期選挙において利益制限案を国民に問い、新政権において利益制限案を国会に提出すると述べている。現在、社民党、左翼党、環境党が利益制限案に賛成で、保守党などは反対である。

2.新規移民や青少年などのために低賃金労働の導入
移民者や青少年のために賃金が低い労働を導入する案は以前から話題になっていた。今回、保守党などは最高3年間正規給与の70%に相当する特別な就労制度を導入する案を出している。社民党はスウェーデンモデルに反するものであるとして反対している。

3.病院における待機期間削減
病院における待機期間は常に政治的問題になっている話題であるが、この解決方法は各政党ごとに異なる。与党は医療機関への国庫補助を考えているが、中央党は小さな診療所を開く可能性を増やすことを案として出している。

4.難民政策の規制緩和?
難民申請の急増に対して、スウェーデン政府は一時的な制限案を可決し、来年度この制限案の期限が切れる。このため各政党間で、その後の対応策が議論されている。特に極右政党は難民あるいは移民者受け入れを選挙の話題にしようとしている。

5.最近話題になっているのは中欧諸国からの物貰いの増加である。街頭などでの物貰いを禁止することに対して、世論の支持は高いが政党間で意見は異なる。現在禁止案に賛成な政党はスウェーデン民主党と穏健党でいる。物貰いの禁止案がどの程度効果があるか不明であるが、司法分野でシンボル的な意味を持っている。

なお野党の支持率は減少しているので、その存在感を示さなければならないという背景もあり、選挙までは対立が続くものと思われる。

女性の給与


スクリーンショット1

スクリーンショット2

出典)SCB, Women and men in Sweden, 2016

カルテ

 スウェーデンでは電子カルテが普及しているが、その方法は県によって異なる。クラウド方式にしている県もあれば、病院ごとに行っている場合もある。また法律によって治療のための各職種の連携が重要視されている。そして本人に異論がない限り、医師は他の医師が書いたカルテにアクセスできる。

 患者中心の医療という観点から、カルテの公表も強化されている。少なくとも成人の場合は、本人の申請に基づいて原則カルテは本人に公開しなければならない。その例外は公開が本人の医療的ケアに関して問題を起こすと判断された場合である。
 カルテが非公開になった場合、医療機関が公的な場合には高等行政裁判所に公開を求めて行政裁判に訴える。もし医療機関が民間の場合、医療機関の代表(主治医?)は非公開にした理由をつけて医療福祉監査庁に報告する。監査庁ではこの判断が適当かどうかの判断を下す。なお民間医療機関が業務を終えた場合には、この機関が保有するカルテは県に移される。

病床数

 各国の病床数を調べてみた。資料はOECDのHealth Statistics 2015である。

スクリーンショット

 OECD加盟国33ヶ国の中で、一番病床数が多いのは日本で、千人あたり13.32であり、OECD平均は4.77である。日本はOECD平均の2.8倍ということになる。日本に続いて多いのはドイツで、3番目からオーストリア、韓国と続く。なおスウェーデンは千人あたり2.41で、下から2番目である。
 病床は急性期医療、精神病床、他の病床、長期ケアに分けられている。医療の国際比較は難しいが、その一つは国によって長期ケアの位置づけが異なることである(特に認定などに基づく長期ケア)。このため、総病床数から長期ケア病床を差し引いて見た。長期ケア病床を差し引いた日本の総病床数は人口千人あたり10.64で、OECD平均は4.17である。日本の病床数はOECD加盟国の中で一番多く、OECD平均の2.6倍である。
 日本の急性期医療病床は7.92でOECD加盟国で一番多く、OECD平均の2.4倍になる。またOECD統計によれば、日本の長期ケア病床は千人あたり2.68で、OECD平均は0.6である。一番長期ケア病床が多いのは韓国で、千人あたり3.84である(スウェーデンは0.19)。
 
 日本はどの病床形態を取っても病床数は多いが、特に異常なのは精神病床である。日本の精神病床は人口千人あたり2.67で、OECD平均の4倍にも達する。日本に続いて精神病床数が多いのはベルギー1.74、ノルウェー1.16、チェコ0.96である(スウェーデンは0.46)。日本はOECD平均の4倍も精神病床が必要であるとは考えられないので、医療原因ではない何か構造的要因があるのであろう。なおベルギーやノルウェーの精神病床数が多いのは予想外であったが、その内容を分析する必要がある。

 どの国でも社会保障費あるいは医療費が話題になっている。もし日本の病床数をOECDの平均にすると、病床が65%減ることになり、大きな構造改革になる。しかし病床数が減れば、在宅介護を含むプライマリケア費用が増える(医療に属さない介護住宅も必要になる)ので総費用で65%減るわけではないが、分析に値する改革である。なお日本人の平均寿命は長いので、病床の大きな削減は出来ないという意見もあるが、日本とほぼ同じく平均寿命の長いスウェーデンの病床数は2.41(長期ケア病床を除く)で、人口比でほぼ日本の23%であることに注目する必要がある。

インターネットを使ったケア会議の例


病院からの退院時におけるケア介護(患者、家族、市の訪問看護ナース、市の作業療法士、病院のナース、地区診療所のナースなど)、スウェーデン語







プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
詳しいプロフィール

カウンター
検索フォーム
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク