FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

移民者とは誰か

 日経にこんな記事が載っていた。内容は不正確である。確かに移民者の定義は国によって異なるが、関係問題はいわゆる移民政策の中で議論されている。また「制限無く」外国人を受け入れている国はどこにもないし、誰もそのようなことを議論していないし言ってもいない。だから首相の言っていることは詭弁である(どのマスコミもこれに対して反論していないのは不思議であるが、どの国が無制限に移民を受け入れているか例を挙げてほしい)。

 何回も書いているように、スウェーデンでは一部を除き1年以上滞在する人はすべて移民者である(1年以下の場合、住民登録されない)。もちろんその中には難民認定者もいれば、労働許可を持っている人あるいはその家族などもいる。労働移民できた人も婚姻のためにきた人も、留学のためにきた人もいる。日本の会社から派遣されて数年滞在する人も移民である。もちろん滞在許可の種類によって滞在中の条件などは異なり、すべての人が永住者ではない。しかし1年以上滞在する場合、原則的に種々の権利などはスウェーデン人と同じである(日本と違って、1年以下の滞在は移民者に含まれない)。

 スウェーデンの移民者数、移住者数は人口動態統計で公表されているので、簡単にその数字は入手できる(在住許可に関しては担当官庁である移民庁から入手)。日本の移民者数がはっきりとわからないので探していたところ、OECD統計に見つけた。しかしその数字は各国が提供しているものであって、国によってその定義が異なる。このため各国の移民者数の比較は止めた(OECDにはInternational Migration Databaseがあるが、こう書かれている”OECD countries seldom have tools specifically designed to measure the inflows and outflows of the foreign population, and national estimates are generally based either on population registers or residence permit data. This note is aimed at describing more systematically what is measured by each of the sources used.”)。

 日本の今回の改正によって、外国人の社会保障問題が大きく議論されているが、遅すぎはしないか。移民者あるいは他の名前をつけるにかかわらず、初めから外国人の社会保障問題は議論しておくべきもので、そこで大きな問題になるのは、日本での社会保障の多くは世帯単位であることである。このため扶養者が日本に住んでいるか外国に住んでいるかが問題になる。しかしあくまで原則は日本人と外国人に対する対応を同じにするということではなかろうか。そもそも日本人と外国人が同様に扱われない国で、誰が喜んで働こうと思うであろうか。外国人は使い捨てではない。今回の議論においてまだ年金の問題は議論されていないようである。外国人の場合(と言うよりも日本での居住あるいは就労期間が短い場合、日本人も含めて)、就労期間中の年金保険費用は掛け捨てになるのではないか。
 スウェーデンでは扶養家族の問題は原則起こらない。なぜなら保険のベースは子供を除き、原則個人であるからである。また海外での医療費なども、EU外では二国間協定が無い限り個人負担となる。このため、海外滞在のために旅行保険をかける人が多い(多くの家庭が持つ家庭保険に含まれている)。なお医療を受けられるのは1年以上滞在する人であって、日本のように3ヶ月ではない(EU国および二国間協定がある国を除く)。なお難民申請者および不法滞在者は特別規定による。

 日経は、「ーーーー欧州では1960年代以降にアジアや中東などから労働者を受け入れ、孤立した低所得の外国人が様々な社会問題を引き起こしました。日本で与野党ともに「移民政策はタブーだ」という意識が根強いのは海外の失敗例を多く知っているからです。」と書いている。
 本当に与野党は海外の例を十分知っているのであろうか。各国によって多少状況が異なるが、大きな問題は統合政策が不十分であったことである。今回の日本の議論はまさにこの統合政策が問題であり、欧州の経験から学んでいるとは思えない。そもそも「使い捨て政策」が統合政策に結びつくとは思えない。「技能実習制度」がその良い例である。

 日経は最後の結論において、「結論: 移民の定義は幅があり、国際的には1年以上の外国居住を移民と位置づける考え方もあります。日本政府は条件つきの在留資格は移民とは異なるとの立場です。」と書いている。これは報道機関ではなくて政府の代弁機関のような結論である。
スポンサーサイト

スウェーデン人はどれくらい税金を払っているか。

 スウェーデン人はどれくらい税金を払っているのであろうか。まずスウェーデンは世帯課税ではなく個人課税である。普通の所得者層が支払うのは地方自治体(県と市)に対する地方所得税(平均は32.12%)のみである(他にスウェーデン教会税あるいは埋葬税があるが略する)。社会保険料は年金の本人負担分(収入の7%)を除いて雇用主が負担する。スウェーデンは相対的に控除の種類が少ないが、それでも基礎控除があったりして税額の計算は複雑である。
 源泉徴収額は日本と同じように雇用主が前もって差し引く額で、これには年金の本人負担額も含まれる。遅くとも12月には前年度の所得が確定され、源泉徴収額との差額が返還される(場合によっては支払わなければならない場合もある)。なおスウェーデンでは通勤費は本人負担で、年間1万1千クローナを越す場合のみ差額を控除できる。またローンの利子支払い分は30%控除できる(住宅ローンなどの利子支払いは一番普遍的な控除である)。

別表は、スウェーデン人がどれくらい税金などを支払っているかの表である。20歳から64歳に限定すると平均して所得の28%を支払っている。

 間接税として大きいのは消費税であるが、この計算はさらに複雑である。所得税などは個人課税であるが、消費税は名前のごとく消費に対する税である。消費税額を計算するためには世帯の可処分所得の計算が必要になるが、世帯によって給付の有無および消費/貯蓄が異なる。また消費税は原則として25%であるが食品などは12%である(医療や教育などの対象外は消費税がゼロである)。

 たとえば子供のいる世帯の平均出費額は年間40万7000クローナで、夫は月給3万クローナ、妻は月給2万クローナを得ていると仮定する。二人の可処分所得はあわせて45万6000クローナである。ここから40万7000クローナの出費を行っていると仮定する。出費の中に占める消費税はおよそ5万クローナ、12,3%になる。所得税も含むと、世帯の税率は32,4%(=(((4484+7554)x12)+50000)/(240000+360000))になる。32(地方自治体の平均所得税率)+25(標準消費税率)=57%にはならない。なお保守政権によって減税される前の源泉徴収額は今よりも数ポイント大きかったことを指摘しておく。

2018年10月21日追加編集

キャシュレス社会と電子認証




 スウェーデンはキャシュレス社会だという記事は増えているが、この問題と個人認証の問題は大きく関連している。キャシュレスの例としてカードの使用が一般的で、次がSwishである。まずカードを使用する場合、暗証番号での認証あるいは身分証明書での認証が必要である。Swishはスウェーデンの主要銀行が共同開発したスマートフォン用の決済アプリで、Mobilt BankIDを使用することにより自分の銀行口座から相手口座への送金が出来る。一般的にはカードが使用できない場合などに使うことが多く、私自身は使ったことがない。カードの手数料を支払いたくない小規模の店舗などもSwishを使っているようである。
 電子認証方式として開発されたのがBankIDで、2018年現在650万人が利用している。BankIDにもいくつかの方式があり、カードを使った電子認証とともに行政や銀行などとのコンタクトに使われる。この中で一番普及しているのは携帯電話を使った認証システムであるMobilt BankIDである。18歳以上の住民の73%、携帯電話を持っている住民の88%がMobilt BankIDを使っている。なお皮膚の下に埋め込む生体認証が日本で注目されているが、その使用はまだ制限的である(一般的な身分証明として機能しない)。

総務省の「統計から見た我が国の高齢者」

 総務省の「統計から見た我が国の高齢者」が発表されたので、ダウンロードしてみた。特に「国際比較でみる高齢者」に書かれているスウェーデンの数字を見た。なぜかスウェーデンの数字が合わないのである。たとえばスウェーデンの人口は2018年7月現在998万人であると書かれている。そしてこれは国連のWorld Population Prospectsからの引用であるらしい。World Population Prospectsには5年ごとの数字は出ているが、2018年の数字は出ていない。
 スウェーデンは毎年12月31日現在の人口が人口統計に使われるが、毎月の人口推計は統計庁のホームページに出ている。まず2017年12月では1012万人で、高齢化率は19.82%である。総務省の報告書には2018年7月の人口が998万人、高齢化率20.1%と載っている。しかしスウェーデン統計庁の推測では2018年7月の人口は1018万人である。一様念のためにWorld Population Prospectsにおけるスウェーデンの総人口数と統計庁の数字を比べてみた。統計庁の公式の数字と合わないのである。1950年以来、World Population Prospectsはスウェーデンの人口数を常に過小評価している。過去の数字でさえ、統計庁の数字と合っていないというのはWorld Population Prospectsの数字はいったい何なのだろうか。

2018年の選挙結果

 先日行われた選挙結果が確定、公表された。暫定開票とほとんど結果は変わらない。議席数は左派ブロック144、右派ブロック143、スウェーデン民主党62議席である。なお投票率はさらに増え、今回は87.18%まで増加した。
 今回の選挙においては排他的なスウェーデン民主党がどれだけ躍進するか、注目を浴びた。日本のマスコミでは第2党になるあるいは第1党になるとも書かれた。スウェーデン民主党は前回よりも躍進したが、第2党にも第1党にもならなかった。スウェーデンで指摘されているのは世論調査におけるスウェーデン民主党支持の不確定要素が大きいことである。世論調査会社間で大きな違いがある。
 
スクリーンショット 2018-09-16


 各政党の候補者は政党の投票数に応じて候補者リストの上から順に決まるが、1998年に個人投票が導入された。これにより候補者リストの順に関係なく選ばれることが出来る。条件は投票区における政党の得票数の最低5%を得なければならない。この個人投票によって選ばれた政治家の割合は政党によって大きな違いがある。中央党は議席の55%が個人投票によって選ばれているが、穏健党30%、社民党18%、スウェーデン民主党に至ってはわずか1.6%である。国会議員全体ではおよそ26%になり、これくらい多いとは私も知らなかった。キリスト教民主党の党首、現在の文化大臣(環境党)などが議員に選ばれたが、反対に現在の住宅大臣は議席を失った。
 選ばれた議員の名簿はすでに発表されているが、平均年齢はおよそ45歳である。今回は2006年の選挙に続いて2番目に男女平等に近づいた選挙であり、女性の割合は46.1%である。一番若い議員は22歳、一番高齢は85歳である。349人の議員のうち31%、108人が新しい議員である。なお組閣はまだ出来ていないので、議員の中から大臣が選ばれれば議員としての補充者が選ばれる。

 後は組閣であるが、国会が始まるまで状況の変化はないと思う。スウェーデンが他の国と異なるのは、国会において賛成を問うのではなく反対を問うことです。つまり国会議長の首相案に対して反対が過半数でなければ、首相案は決まる。なお国会議長の首相案は4回まで出すことが出来、すべてが成立しなければ臨時選挙になる。しかし歴史上、この理由で臨時選挙になったことはない。どの政党もスウェーデン民主党と協力あるいは組閣することは拒否しており、現在さんすくみ状態で、組閣まで時間がかかると思われる。

難民認定

日本のマスコミではスウェーデンの難民が話題になっているので、少し調べてみた。まず難民申請者数は年間に移民庁に難民申請をした人数である。そして決定件数は年間に難民申請の合否が判断された人数である。最後に難民認定率は難民として滞在が認められた人数を決定件数で割った数字で、その年の難民申請者数ではないことに注意する必要がある。なお2014年、申請から認定に至るまでの期間は142日であったが、2017年には496日まで延びている。

スクリーンショット 2018-09-04

                (移民庁統計より作成)

この表を見てみると、2015年にはおよそ16万人の難民申請があった。しかし2016年からは入国が厳格化され、申請数は3万人以下になった。これは2000年から2011年までの平均数に近い。2016年にはおよそ11万人分の申請が判断され、難民として認められたのはおよそ60%である(ダブリン条約関係を含む)。2017年になると難民申請者数はさらに減少したが、およそ6万6千人分の申請書の判断が行われた。認定率は41%に下がっている。難民者数を使うには、このような時系的変化を考慮する必要がある。

なお難民申請が認められなかった人はどうなるか、この記事を参照。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
詳しいプロフィール

カウンター
検索フォーム
カレンダー
11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。