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政治家の育休休暇

 小泉氏の育休が話題になっているようであるが、議論の仕方に違和感がある。丁度、こんな記事があった。
 スウェーデンではどうか調べてみた。まず大臣および国会議員は24時間、365日、それぞれの職務に就いていると考えられ、国会が閉会中もその職務を行う。大臣は他の労働者と同じように雇用されているのではないため、社会保険法典は直接適用できない。また大臣という性格から、長期的に休むことは困難であり適当ではない。
 首相が憲法に従い内閣の役割分担などの権限を持っており、大臣が病気になった場合、他の大臣が代わりを務めるか新しい大臣を任命する。大臣が育児などで休む場合もほぼ同じ扱いである。一般的には休職が1ヶ月以上になれば、新しい大臣を選ぶことが多いようである。
 大臣が休むことを首相が認めた場合、給与は10%減給される(国会議員および国会に勤務している者が育休を取る場合、社会保険庁から80%、国会事務局から10%、あわせて90%保障される。大臣の場合もこれと同じように考えられているが、政府が90%保障する。ただし大臣という性格上、親保険の対象とは考えられていない)。なお国会議員には各党とも補欠要員という制度があり、議員が何らかの理由で1ヶ月以上欠席する場合、議員の代わりを務める。
 スウェーデンでは、大臣が育児のために長期的に休んだというのはないと思う。長くても数週間ではないかと思う(多分この時も仕事量を減らすという形であったと思う)。なお前の外務大臣が社会大臣だった時に育児のために勤務場所をストックホルムではなく、地元の市に移したことがある。
 最近、労働省の政務次官が育児休暇で8ヶ月間休むため、代わりの政務次官が任命された(本来の政務次官は8ヶ月後に職に戻る)。育児休暇中の仕事をどう配分するかは雇用主が決めることであるが、普通は雇用主が臨時雇用として職員を募集する。
 日本でよく話題になる育児休暇を取ったら同僚に迷惑がかかるという考え方は、スウェーデンにはない。一つは育児休暇は権利であること、第二に育児休暇中の仕事の配分は会社あるいは上司の管理能力の問題であると考えられる(育児休暇中は社会保険から手当が出るが、会社の直接の負担はない)。

新年あけましておめでとうございます。


新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

スウェーデンはどこまで「高福祉高負担」か

 「高福祉高負担」というのは、日本のマスコミが北欧諸国について書く時の常套文句である。しかし個人レベルにおいてどの程度まで「高負担」なのか、ほとんど分析されることはない。2017年度の税負担について少し調べてみた。2017年には、およそ800万人の人が種々の税金(直接税)を納めていた。このうち地方自治体の所得税(住民税)を納めていたのは納税者の95%である。一方では所得が大きい人が対象である国に支払う所得税を納めたのは16.5%である。また国税である資本税を納めたのは30.6%になる。このように大多数にとっては一番大きい税金の種類は地方税であって、これは主に医療を含む社会保障、教育などに使われる(ただし年金の個人負担分以外の社会保険は雇用主が負担する)。
 また実質の税負担を計算するためには税控除も考える必要がある。特に利子控除とサービス/修理控除が多く利用されている。住宅などを購入すれば住宅ローンを借りるのが一般的で、このうち利子支払額のおよそ30%が控除できる。また住宅の修理、清掃、家事サービスに対する控除がある。ローン控除は410万人、後者のサービスは163万人が利用している(ローンは主に就労世代の利用が多いのに対して、サービス業務は高齢者も利用できる。高齢者に対する清掃はこの税控除制度を使った方が、高齢者ケアの清掃サービスを使うよりも安い場合がある)。
 平均の課税率は所得(就労所得と資本所得)に対して平均27.8%で、100万クローナの収入がある場合36:2%である。実質で60-70%も課税されているわけではない。

Final tax

年金制度に関する不思議な記述

 スウェーデンの制度に関しては日本で十分理解されているとは言いがたいが、政府関係の国際比較でスウェーデンが含まれることもある。先日、厚生労働省によるスウェーデンの年金制度についての報告書を見つけた。この報告書はよくまとまっていると思うが、一般的によく使われる「年金制度の国際比較」は誤解を与える説明がされている。
 まず被保険者は、日本は全居住者、スウェーデンは一定以上の所得のある者と説明されていて、あたかもこの所得水準以下の人は公的年金の対象外であるような書き方である。スウェーデンの年金制度は、所得年金は就労による保険制度、保障年金は居住による保険制度であり、所得のあるもののみが年金の対象ではない(基本的には適用対象外は存在しない)。
 他の欄では保障年金について触れておきながら、制度上の対象者に含めない理由が理解できない(欄外には「スウェーデンは所得に基づく年金に関する記載」と言い訳のように書かれているが、社会保険法典による公的年金であるにもかかわらず、保障年金を除外する理由が分からない)。なおスウェーデンの社会保険制度を理解する上で、就労による給付と居住による給付が分けられていることは非常に重要である。
 日本では会議や講演会などでOHPが使用されることが多い。もともとOHPは説明をわかりやすくするための資料であって、OHPの図表だけは独立して存在できるものではない。このためこれらの図表が誤解を与える可能性があるとすれば、十分な説明なしにこれらの図表が使われていることではなかろうか。

年金受給額

 日本では「老後に2千万円不足」という報告書が出て話題になった。スウェーデンではよく似た報告書がないか調べてみたが同様の統計はなかった。一般的に有子家庭、子供のいる単身世帯などの区別はあるが、高齢者世帯という定義は使われていない。
 スウェーデンの年金統計などは個人ベースであり、日本のように夫婦/世帯ベースではない。下記の統計において、公的年金(allmän pension)、協約年金(Tjänstepension)および私的年金(privat pension)に分けられ、額は中央値である。

スクリーンショット


 65歳以上の男性の高齢者は年間16万9千クローナ、女性は12万7千クローナの公的年金を得ている。そして9割近くの人は労使契約による協約年金を得ている。その額は男性8万クローナ、女性4万1千クロである。また私的な年金保険などを掛ける人も多く、その額は男性4万6千クローナ、女性3万5千クロである。これは年金総額のおよそ20%に相当する。
 年金制度は典型的な男女平等問題でもあり、女性の協約年金額は男性のおよそ半分である。また何らかの理由によって所得年金が少額である場合は、所得年金額に応じて保障年金(garantipension)が税金から支払われる。男性の場合、保障年金を受けているのは12%であるが、女性の場合49%になる。これは育児のため働いていなかったあるいは主婦であったがために、所得年金が低いことによる。保障年金を含む公的年金額を見ると、女性の公的年金額は男性の75%になる。
 スウェーデンでは保障年金および高齢者住宅手当によって、「妥当な生活水準」が保障されている(なお法律では「最低水準」という言葉は使われていない)。
スウェーデンの年金制度についてはこのページを参照。

保険か税か

 日本では税よりも社会保険が適当であると、多くの関係者は言う。なぜなのか、増税は政治的議論が起こるが、社会保険料はほとんど議論なしに増やせるからである。事実、そのように動いてきた。たとえば1965年GDP比の国民負担率は17.6%で、社会保険料は3.8ポイントである。そして2016年には国民負担率30.6%、社会保険料12.4%に増加している。1965年に国民負担率における社会保険料率がおよそ22%であったものが、2016年にはおよそ40%まで増えている。問題は増えたことではなく、ほとんどその議論が行われずに増えているからである。厚生労働省を含む政府関係者が保険制度を好むのは、「隠れ増税」ができるからではなかろうか。

日本の税金と社会保険料割合の変化(GDP比)

図3

OECD各国の税金と社会保険料の割合(GDP比、2016年)

図4


 OECD各国の負担を見てみると、社会保険制度を通じての負担は各国によって大きく異なることである。その中でも一番右端に位置するフランスは税負担はそこそこであるが、社会保険負担は一番大きい(16.7, 28.8)。日本の社会保険負担は平均よりも高いが、税負担はほぼ最低である(12.4, 18.2)。スウェーデンの社会保険負担はほぼ平均に近いが、税負担は大きい国の一つである(10.0, 34.1)。なお社会保険負担がほぼゼロの国が3つある。オーストラリア、ニュージランド、デンマークで、北欧諸国でもデンマークが大きく異なっていることは日本ではあまり知られていない。
2019年5月31日再編集追加
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Author:Taro
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