精神障がい者のサポートに関するネットワーク

スウェーデンはすでに70年代に入院治療から通院治療に変わり始めた。そして1995年には精神保健改革(高齢者、知的障がい者に続き、第3のエーデル改革とも呼ばれる)が行われ、サービス供給責任が市に移ることによって在宅への移行が促進された。
その後も改革は続き、2009年にはKURというプロジェクトが始まった。この目的は2つある。第1は社会保険庁、職業安定所、市、県の間のネットワークの強化である。精神障がい者に対する援助は福祉を行っている市、医療を行っている県、給付を行っている社会保険庁、就労援助を行っている職業安定所の協力および連携が必要で、この協力体制をさらに改善する必要がある。
第2はこれらの行政機関における職員の知識向上である。関係機関の職員には精神障がい者に対する知識が十分であるとは言えず、このために研修を行う必要がある。このプロジェクトが始まってからすでに6千人の行政関係者が研修を受けたと報告されている。なおこのKURプロジェクトは現在第2段階に入り、2015年12月まで続く。

精神障害者ケア

 2003年にリンド外相が殺害されたり、精神障害者による傷害事件がいくつか続き、社会の話題になった。このためスウェーデン政府は1995年に行われた精神障害者ケア改革に続いて、精神障害者政策の洗い直しのための委員会を2003年に設置した。この委員会は11月27日最終報告書を政府に提出した。700ページにもなるこの報告書はあくまでも委員会の報告書であって、政府法案ではないが、将来の方向付けを明確にしている。2015年までに、すべての精神障害者に住居を与え、就労、勉学あるいは意義のある活動が行えるようにすると明記している。このためアクセス、関係機関間の協力、知識、当事者参加の改善などが上げられている。財政的には2009年から2015年まで毎年8億クローナの国庫補助金を地方自治体に、1億クローナを研究、1億クローナを方法論の開発に出費する。この委員会が他の委員会と異なるのは、同時にアクションを起こしていることで、すでに42のプロジェクトが各地でスタートし、これに対して国が補助金を出している。(2006年11月28日記、29日追記)

特殊学校を維持

 スウェーデン政府は知的障害者のための教育について審議するために、2001年に審議会を設置した。審議会は2004年に最終報告書を政府に提出し、この中で特殊学校を維持すべきであるとしている。政府はこの報告書およびこれに対する各団体からの意見を考査して、今年の3月に審議会と同様に学校形態として特殊学校の保持、普通学校とのさらなる協力が必要とする報告書を国会に提出した。法案自体は後日に国会に提出するとしているが、特殊学校の廃止を主張している政党はないので、法案はほとんどそのまま国会を通るものだと思われる。なお学校形態と実際の授業とは別の問題で、学校形態としての特殊学校は独自の指導要綱があると言う事である。また普通学校でも特殊学校でも、児童に医療介助などが必要があればアシスタント制度があるので、児童の医療介助の問題とも別である。

 なお特殊学校に行く権利がある生徒の親が代わりに普通学校を望めば、1996年から試験的にこれが出来るようになっている。今回これが恒久化される予定である。ここで興味があるのは、親が望むならば普通学校に行く機会を与えながら(普通学校の指導要綱にしたがう)、特殊学校に行く権利という概念を使っている事である。著者はこの分野の専門ではないが、同じ指導要綱にしたがうか(つまりは同じ知識目標を持つか)どうかというのは重要な視点であるように思われる。

 北欧は統合教育だと言われているが、スウェーデンの特殊学校の存在は本当ですかという人もいる。特殊学校の存在がユネスコのサラマンカ宣言あるいはインクルージョンの考えに合っていないと断定するほどの知識は著者は持っていないが、統合の概念にしろ、簡単であるように見えるがゆえに誤解が多いという研究者も多い。1年ほど前のテレビ番組で、特殊学校を廃止するにしろ存続させるにしろあまりにも形式論に陥って、どの様な条件のもとで教育が行われるかという事の方が重要であるという指摘もあった。なお上記の報告書において、政府はサラマンカ宣言などについて触れているが、(スウェーデンの)特殊学校が孤立した存在ではないので宣言などには触れないとしている。(2006年5月21日記、22日追記)

強制不妊手術の被害者に補償

日本で報道されたスウェーデンの強制不妊手術については以前に書いた。被害者に対しての補償およびこの事件の調査のために政府には調査委員会が設置されて、今年の夏までに報告書を出す予定である。今日この委員会から中間報告書が出され、被害者に対して一人当たり17万5千クローナの補償費を払うことを提案している。日本の新聞に載っていた6万人というのは不妊手術をした人の総数で、何らかの形で強制だと見られているのは6千人から1万5千人だと見られている。中間報告では強制的に手術されたのは何人かは不明としているが、最終報告においては明記したいとのことである。問題は強制の意味ですべて何らかの形での同意があり、どこまでこれが実質的に強制であったかは研究者によっても意見が分かれている。なおこの補償についての意見は他の委員会報告と同様に関係団体などから意見を求めて、3月に法案として国会に提出される。なおこの報告書はスウェーデン語であるが、政府のホームページに載せられている。(1999年1月26日記)

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Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

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