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病院からの退院

スウェーデンでも包括ケアが話題になっているが、その一つが病院からの退院である。エーデル改革は日本で話題になり、ナーシングホームなどが福祉施設/特別な住居になったことは一部では知られているが、病院からの退院時におけるプロセスについてはあまり知られていない。

− 1992年施行のエーデル改革と同時に「市の支払い責任法)が導入された。身体長期医療、身体短期医療、老年科医療では、市の福祉事務所がケア計画会議の招集を受けてから土、日曜、祝日を除いて5日後には市に支払い責任が生じる。なお精神科医療では30日後(休日および祝日を除く)から支払い責任が生じる。
− 患者の退院後に市の社会サービス、訪問看護あるいは県のプライマリケア、精神科外来などの医療が必要ならば、ケア計画を作成しなければならない。担当医はケア計画を作成するために、他の関係者にケア計画会議の招集を行う。
− ケア計画会議の招集、方法については県ごとに異なるが、ある県では、市はケア会議の招集に対して24時間以内に受領返信を行い、この時間を持ってケア計画が始まったと見なされる。最近はこの会議のためにIT技術が使用されることが多い。ケア計画には援助の内容、その責任者などが書かれ、患者が退院の際に持って帰る。
− 遅くとも予定された退院日の前日までに、担当医は退院連絡を関係機関および関係者(県のプライマリケアおよび市など)に送付する。
− 市がケア会議の招集に応じなければ、前項の条件で支払い責任が生じる。
− リハビリに関しても県と市は連携しなければならない。

− 病院からの退院の手順の例
1. 月曜日午後1時にケア計画会議の招集を連絡
2. 2週目の月曜日12時に退院連絡を行う
3. 2週目の火曜日に退院
4. もし2週目の火曜日に退院できなければ水曜日から市に支払い責任が生じる。

− 病院の担当医が退院可能と決定してから実際に退院するまでの期間は平均して4.2日である(2015年9月)。これも地域によって差がある。なお退院可能というのは治療が全く終わったということではなく、病院での治療が終わったということで、その後の治療はプライマリケアあるいは市の医療に引き継がれる。

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スウェーデンに寝たきり老人はいない?

スウェーデンには寝たきり老人がいないと言われたことがあり、一方ではそれは間違っているという批判もあった。字義通りにとらえるならば、両者とも間違っている。まず90年代までのスウェーデンの施設はサービスハウス、老人ホーム、ナーシングホームなどに別れていた。エーデル改革によってこれらの施設は住居化され、特別な住居と呼ばれるようになった。
エーデル改革以前には、施設によって「寝たきり老人」の割合には差があった。この問題が話題になった頃、良く紹介されたのは日本からの視察者が行く サービスハウス(ケア付き住居)で、サービスハウスは介護度の低い高齢者が住む住居であった。このためサービスハウスには寝たきりの高齢者はいなかったと思われる。介護度の高い高齢者が住んでいたのはナーシングホームで、当時は医療機関であった(日本からの訪問者はいなかった?)。80年代の後半、日本の長期ケア施設における「寝たきり老人」の割合は約34%であり、同様にスウェーデンでは約4%であった(1995年に発行された厚生省高齢者介護対策本部事務局監修「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」234ページに、その数字は引用されているが、マスコミがこれをほとんど参考にしていないのは不思議である)。そもそも比較の対象が間違っているのである。スウェーデンには「寝たきり老人」がいないと言われたのは、文字通り一人もいないということではなくこの大差が問題とされたのである。そしてこれは寝かせきりになって(されて)いる老人が多いという批判でもあった。

なお、スウェーデンで寝たきり老人がいないのは在宅での24時間介護が普及しているからだと言われることがある。しかしこれもおかしい。ナイトパトロール などによる24時間介護が普及しているのは事実であるが、24時間介護が普及するということは相対的に介護度が高い人も在宅で看られるということであり、 単純に考えるならば在宅での寝たきり老人が増えても良いのである。スウェーデンで在宅での寝たきり老人が少ないのはいくつかの理由がある。第1は、スウェーデンでは高齢者が子供たちと一緒に暮らすということはほとんどないので、介護が必要な高齢者は連れ添いかホームヘルプの介護を受けているのが普通である。第2に、24時間介護の普及により介護度が高くなっても在宅に住み続けることが可能になったが、一般的に在宅での介護と施設での介護の境界線は常時介護/看護を必要(常に職員が近くにいる)とするかどうかである。もし常時看護/介護が必要になれば、施設(特別な住居)に移るのが普通である。なおガンの末期症状などでも在宅に住み続けることが出来るが、末期症状であるということは常時看護/介護が必要であるということと同じではない。

なお政府の報告書によれば、(自称)ナーシングホームにおける寝たきり老人の割合はおよそ4%(1998年)で、その後このような調査は行われていない。また全国統計においては特別な住居以外に種類分けは行われていないので、分母に何を持ってくるかによって数字は変わる。しかし私個人の施設などの訪問経験から言えるのは、寝たきり老人はいないわけではないが、非常に少ないということである。

2年ほど前に、読売新聞にも「スウェーデンには寝たきりはいない」という記事が出たので、その情報源を聞こうとしたが、編集部からは返事がなかった。記事を読んだ限りではいくつかの施設訪問がメインであったようである。スウェーデンで寝たきりが考えられるのはガン、ALSなどの病気、老衰などの末期症状などであることが考えられる。

(2016/07/10追加)
上記の4%という数字は1985年に行われた施設調査からの引用であるが、これは全施設調査なので少し訂正が必要である。この調査の対象は老人ホーム、長期療養施設/ナーシングホーム、精神医療、障がい者ケアで、また寝たきりには一時的な人も含まれる。このため上記の数字から一時的な寝たきりを除外し、老人ホームと長期療養施設/ナーシングホームに限定して再計算した。これによると老人ホームにおける寝たきりの割合は0.7%、医療施設に含まれる長期療養病床/ナーシングホーム5.6%で、両者を含むと3.1%になる。なおこの調査には同じように認定によって入居するサービスハウスは住居基準を満たしているので、施設の定義には含まれていないことに注意する必要がある(サービスハウスの対象は介護度が軽度の高齢者なので、サービスハウスを含めなくても結果的には影響しない)。

(2016/11/11追加)
スウェーデン語資料の名前を挙げておきます。
Socialstyrelsen, Att bo på institution, 1987

特別な住居の所有と運営


スクリーンショット 2016-01-08


90年代以降、高齢者のための特別な住居における民営化は増えている。日本でもよく似た議論があるが、これを所有と運営に分けてみると、その違いがよく分かる。まず伝統的な形は市が所有して同時に運営もしている形態である(1)。そして90年代に(2)が出始めた。建物自体は市の住宅公社などが所有し、入札などによりその運営を委託するものである。そして一部民間団体/会社が所有し、運営も行っている例が(4)である。大都市などでは教会系などのNPOが特別な住居を運営してきた伝統がある。この場合は、この施設は何人分という形で、市と契約する。市は契約書にしたがってその費用をこの会社/団体に支払う。家賃はこの会社/団体に直接支払う場合と、市に支払う場合がある(なお選択の自由性を導入している市では若干プロセスが異なる)。
最近もう一つの形態が出始めている。これが(3)の形態である。建物の所有は民間住宅会社であるが、特別な住居としての運営は市が行っている。なぜこのような複雑な形態を取るのか。いくつかの理由がある。

1.将来的に特別な住居は改築の必要性があり、売却することによりその改築費は住宅会社の負担になる。また市では売却することによりまとまった収入が増え、これを市の住宅会社所有の一般住居の改築に使うことが出来る。
2.特別な住居を売却すれば、その市の特別な住居は減少するのではないかと思われるが、そうではない。この売買において市はこの住宅会社と交渉を行う。もちろんその交渉内容は市によって異なる。一般的には、市はこの民間住宅会社と特別な住居の長期リース契約を行う。たとえば20年間の長期リースである。民間会社にとっては仮に改築の必要性があっても、長期リースであるので安定した収入を得ることができる。市にとっては売却により一時的な収入が得られ、長期契約により社会サービス法による特別な住居の提供義務を果たすことが出来る。市によってはこの売却に住宅建設の許可条件を追加する場合もある。これによって民間会社も市も利益を得る。大事なのは入札が公平、オープンに行われることである。なお市の住宅公社は「ビジネス的」に運営することが法律で決められている(何年にもわたって赤字運営は出来ない)。

特別な住居

高齢者ケア用の「施設」は名目上も、事実上も住居である(ショートステイなどにおいて一部住居基準を満たさない場合が存在する可能性はある)。社会サービス法では「介護とサービスのための特別な住居形態」と呼ばれているが、介護住居と呼ばれる場合もある。以前のように老人ホーム、ナーシングホームなどの形態別の区別はされなくなった。特に最初に二点についてシニア住宅や「安心住居」と異なる。

・社会サービス法により入居の決定および介護が行われる。
・保健医療法により、市の看護が行われる(医師による医療は県などによって行われる)。
・住居としての管理は市の住宅公社が行っていることが多く(例外あり)、ケアの運営は市の福祉部あるいは民間団体が行っている。
・ユニットごとに別れて日常の業務、生活が行われる。
・住居基準を満たす
・住居として賃貸法の対象となり、賃貸契約が行われる。死ぬまで住み続けることが出来る。また住居であることによって、普通の住居と同じように家賃補助が行われる(法律上は、市の福祉部が第1次契約者で入居者は第2次契約者である)。


01:設計図1

ある介護住居の居室(フラット)。居室の大きさに関しては直接の規定はないが、35㎡ぐらいが平均であるようである。特にトイレなどの大きさに関しては、労働環境の面から職員の働きやすさが重要視される。場合によっては入居者が車いすを使用しているということが考えられるので、特にベッドの回りおよびトイレなどでは十分な広さが求められる。

15:設計図2

大抵はユニットに別れていて、ユニットごとに生活、活動が行われる。ユニットの大きさは8-10名であることが多い。


日本との直接の比較は行わないが、いくつかの違いが分かる。
1.スウェーデンではすでにほぼすべての特別な住居が住居基準を満たし、在宅になっている。このため、「在宅(住居)対施設」という対立構造はほとんど存在しない。
2.住居であることによって、特別な住居も在宅になり死ぬまで住める。
3.特別な住居においては原則的にユニットケアであり、ユニット内で生活が行われる(なおその他の高齢者住居はユニットケアではない)。
4.各居室/フラットが住居基準を満たしているので、建物が住居であるということと同じではない。
5.運営の効率化および対象の多様化などから、特別な住居は複数のユニットを有しているのが普通である。

シニア住宅と「安心住居」

特別な住居ではなく一般住居に含まれる高齢者住居にはシニア住宅と「安心住居」がある。
シニア住宅は統一した定義はないが、55歳あるいは65歳以上の高齢者を対象とした住宅である。
共同組合式(利用権買い取り式)住宅として発達し、最近は賃貸形式も増えている。
2014年の調査によると、全国で2万7800戸存在し、およそ55%は市の住宅公社の所有である。
介護職員はいないので、必要であれば、(市の)ホームヘルプ/訪問看護を申し込む。


12346532.jpg
ストックホルム郊外にあるシニア住宅
120戸、168名居住、居室は61-79㎡

スクリーンショット1
全体の見取り図

スクリーンショット2
居室の見取り図(2LKと3LK)


「安心住居」は最近出来た高齢者住居である。「安心住居」の対象は一人で住むことに不安感を持つ70歳以上の高齢者で、余暇のための共有設備などの条件がある。「安心住居」の形態は問わない(賃貸、利用権型マンション、共同組合型賃貸など)。
「安心住居」には職員はいるが、介護職員ではない。シニア住居と同じく、必要に応じてホームヘルプ/訪問看護を申し込む。
2014年の調査によると、6600戸存在し、およそ55%は市の住宅公社の所有である。


12342686.jpg
地方のある市にある「安心住居」
20戸、61-73㎡
市の住宅公社が管理

スクリーンショット3
居室の見取り図

スウェーデンの在宅主義

スウェーデンの在宅主義が十分理解されてないことは、このブログでも書いた。最近、スウェーデンの在宅主義について講演する機会があったのでこれをまとめてみた。

・出来るだけ長く現在の住居(一般住居)に住み続けられるようにするのが大原則である。
・現在の住居に住み続けることが難しくなったときに、初めて「特別な住居」への移転が考慮される(申請する)。
・ほぼすべての「特別な住居」は、建設・計画法による住居基準を満たし、死ぬまで住める。このため、特別な住居も在宅である。日本のように施設対在宅という対立構造にはならない。
・一般住居に住み続けることは自由選択であるが、特にこの10-15年間特別な住居の入居は難しくなったと言われている。このため一般住居に住み続けることは、住み続けざるを得ないとの観点から「強制」だと批判されることが多くなってきた。在宅(一般住居)における介護は特別な住居での介護よりも安いとは限らない。市のコストが安くなっても社会的コストが高くなるということも考えられる。
・特別な住居への入居が遅くなり、入居者の平均居住期間が短くなった。
・なおこれらはハードとしての住宅の問題ではなく、ケアのあり方の問題である(この結果として、シニア住宅や「安心住居」などの中間的な住居の必要性が高まった)。


スクリーンショット 2015-12-11

元社会大臣による批判記事。DN 2013/10/18
タイトルは「高齢者が介護住居を拒否される時、在宅での強制ケア」


スウェーデンの公的介護

スクリーンショット 2015-09-25

上図は1985年から公的介護を受けている高齢者の割合を表している。公的介護を受けている割合は徐々に減少している。そして2000年頃に大きな変化があったことが分かる。2000年頃まで特別な住居に入居している高齢者の割合はほとんど変わらなかったが、ホームヘルプを受けている高齢者は減少した。2000年頃から徐々に特別な住居入居者は減少し、2014年現在高齢者の4.3%が特別な住居に入居している。一方、ホームヘルプは2000年代後半まで徐々に増加したが、その後若干減少している。2014年現在、高齢者の8.6%がホームヘルプを受けている。

この原因は複雑である。
1.統計の取り方の変更。特にホームヘルプに関しては、この期間何回か統計の取り方が変更されているので、比較には注意を要する。
2.特に2000年代の特別な住居減少の一つの原因は、サービスハウスの減少である。サービスハウスが一般住居であるシニア住宅などに改築されることにより、特別な住居統計ではなくホームヘルプ統計に含まれることになった。
3.特に2000年代には、前期高齢者の人数は変化しなかった(反対に減少した市もある)。この結果、サービスハウスなどの介護度が低い高齢者を対象とした特別な住居の必要性は減少した。
4.特別な住居入居が徐々に厳しくなった。
5.スウェーデンの高齢者ケア政策の一つの原則は在宅主義であるが、「行きすぎた」在宅主義に対する批判も多くなった(日本のように、施設対住居という対立構造ではなく、特別な住居も住居なのでどの様な住居にどの様な高齢者が住めるかという議論である)。
6.これらを背景として、特別な住居や「安心住居」の建設に対して国庫補助が出された(2007-2014年)。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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