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高齢者ケアの目的

The objective for elderly policy is for elderly people to be able to lead active lives and have influence in society and their own everyday lives, for them to be able to grow old in security and retain their independence, for them to be met with respect and to have access to good health and social care.

Elderly care must meet high standards. Elderly people and their families must be able to feel confident that health and social care is of good quality and that enough staff with appropriate training and experience are available.
(社会省のホームページより)

高齢者ケアは社会サービス法の3つの分野の一つである。これらの分野はsocial careと呼ばれ、social omsorgの英訳である。特に1991年に決定されたエーデル改革以降、vård och omsorgという言葉が使われるようになった(omsorgは社会サービス法、vårdは医療法の言葉である)。英語ではCare and Servicesと呼ばれるが、上記の文章のようにhealth and social careという言葉が使われることもある。70年代後半から言葉の使い方が変遷しているので、注意が必要である。

著者の「スウェーデンの高齢者ケア戦略」(2010年)より引用。
1998年に決定された高齢者国家行動計画(Prop 1997/98:113 Nationell handlingsplan för äldrepolitiken)には、一般的社会保障の原則が述べられている。
「良い社会は連帯を基本に築かれなければならない。すべての人が同じ価値を持つという原則を出発点として、共同で責任を取ることは、社会において人々を結びつける力でもある」
● 必要性
援助は個人の財政、社会的背景、性別あるいは年齢に関わりなく、必要性に応じて配分される。ケアの供給と配分を市場に委ねることはできない。
● 民主制
選ばれた議会によって民主的に決定される。共通の利益にしたがって、ケアを民主的に発展させることは必要である。
● 連帯性
税金でもって連帯的に負担される。略

上の3つの原則を受けて、さらに高齢者ケアの目標が次のように述べられている。
− 高齢者は安心してまた自立を保ったまま老齢を迎えられるべきである。これは財政的安心感、年金の自由選択、自立した生活、住み続けられること、アクセスの改善、社会での安心感を表している。
− 高齢者は社会生活および自分の日常への積極的な参加ができるべきである。個人は、入居者、患者、ホームヘルプの利用者などとして影響力を行使できる。高齢者は市、県自治体、国会において代表がいるべきである。市や県自治体において高齢者団体が決定前のプロセスに参加できる。
− 高齢者は尊敬をもって迎えられなければならない。年齢によって差別されてはならない。個人として対応されなければならない。
− 高齢者は良質の医療ケアおよび社会サービスの利用が可能であるべきである。本人が望む限り、今まで住んでいた住宅にできるだけ長く住み続けられる可能性が与えられる。介護の必要性が大きくなった場合、特別な住居に入居できる。本人の背景や母国語に応じて、介護が与えられる。若年者と同じ条件で、医療が与えられる。個人の必要性、人間の価値、個人の希望、尊厳、自己決定は尊重されなければならない。終末期ケアの質は高くなければならない。不必要に施設間を移動させられるべきでなく、一人で亡くなることがあってはならない。
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高齢者ケアにおける費用負担

高齢者・障害者ケアにおける自己負担は、社会サービス法によって各市が決定できるものとされている。この場合第1に実費を越えてはならないこと。第2にすべての利用料を支払った後、生活費が残らなければならないこと。第3に夫婦の一人が特別な住居に入居した場合、在宅に住んでいる配偶者の生活が経済的に悪化しないように市は保障しなければならない。

− 介護費用、デイケア費用、市の訪問看護費用は、1772クローナ(2016年)を越えてはならない。
− 賃貸法が適用されない住居の場合、その費用は一月当たり1846クローナを越えてはならない。
− 介護費用、デイケア費用、市の訪問看護費用、賃貸法が適用されない住居の費用を徴収するためには、最低額(minimibeloppet)が残らなければならない。単身者の最低額は5001クローナ、同居している夫婦あるいは共生の場合は一人あたり4225クローナである。これに住居費を加えた額が最低保証額(förbehållsbeloppet)になる。
− 法律による最高額、最低保証額の規定は守らなければならないが、この範囲内で市は費用計算を決定できる。たとえば2013年に行われた調査によると、在宅における介護費用を時間単位で決めていたのは市の50%になる。また時間ではなくレベルごとに費用を決めていたのは32%、レベルと収入によるのは8%である。
− 高齢者ケア全体では個人負担の割合は平均でおよそ3.8%である(ホームヘルプは5.7%、特別な住居における介護などは3%。ただし特別な住居は住居なので、この計算においては家賃は含まれていない)。

費用計算の根拠となる収入の定義は1年間の見なし収入とし、高齢者のための住宅手当も収入に含まれる。財産は費用に影響しない。夫婦の場合、両者の収入総額を2で割ったものを個人の収入と見なす。収入の定義は、原則的に年金庁の高齢者に対する住宅手当と同じ計算方法を使用する。費用決定は、行政裁判を通じて不服申請ができる。

なお「特別な住居」における食費は各市が決定し、家賃は住宅会社(普通は市の住宅会社)が決定する(なお市の住宅は貧困対策ではないので、特に家賃が安いわけではない)。

この文章は「医療福祉研究No26(2017年号)」(医療福祉問題研究会)に載せた「スウェーデンの社会保障における最低保障」という記事から引用しました。一部追加あり。

インターネットを使ったケア会議の例


病院からの退院時におけるケア介護(患者、家族、市の訪問看護ナース、市の作業療法士、病院のナース、地区診療所のナースなど)、スウェーデン語







病院からの退院

スウェーデンでも包括ケアが話題になっているが、その一つが病院からの退院である。エーデル改革は日本で話題になり、ナーシングホームなどが福祉施設/特別な住居になったことは一部では知られているが、病院からの退院時におけるプロセスについてはあまり知られていない。

− 1992年施行のエーデル改革と同時に「市の支払い責任法)が導入された。身体長期医療、身体短期医療、老年科医療では、市の福祉事務所がケア計画会議の招集を受けてから土、日曜、祝日を除いて5日後には市に支払い責任が生じる。なお精神科医療では30日後(休日および祝日を除く)から支払い責任が生じる。
− 患者の退院後に市の社会サービス、訪問看護あるいは県のプライマリケア、精神科外来などの医療が必要ならば、ケア計画を作成しなければならない。担当医はケア計画を作成するために、他の関係者にケア計画会議の招集を行う。
− ケア計画会議の招集、方法については県ごとに異なるが、ある県では、市はケア会議の招集に対して24時間以内に受領返信を行い、この時間を持ってケア計画が始まったと見なされる。最近はこの会議のためにIT技術が使用されることが多い。ケア計画には援助の内容、その責任者などが書かれ、患者が退院の際に持って帰る。
− 遅くとも予定された退院日の前日までに、担当医は退院連絡を関係機関および関係者(県のプライマリケアおよび市など)に送付する。
− 市がケア会議の招集に応じなければ、前項の条件で支払い責任が生じる。
− リハビリに関しても県と市は連携しなければならない。

− 病院からの退院の手順の例
1. 月曜日午後1時にケア計画会議の招集を連絡
2. 2週目の月曜日12時に退院連絡を行う
3. 2週目の火曜日に退院
4. もし2週目の火曜日に退院できなければ水曜日から市に支払い責任が生じる。

− 病院の担当医が退院可能と決定してから実際に退院するまでの期間は平均して4.2日である(2015年9月)。これも地域によって差がある。なお退院可能というのは治療が全く終わったということではなく、病院での治療が終わったということで、その後の治療はプライマリケアあるいは市の医療に引き継がれる。

スウェーデンに寝たきり老人はいない?

スウェーデンには寝たきり老人がいないと言われたことがあり、一方ではそれは間違っているという批判もあった。字義通りにとらえるならば、両者とも間違っている。まず90年代までのスウェーデンの施設はサービスハウス、老人ホーム、ナーシングホームなどに別れていた。エーデル改革によってこれらの施設は住居化され、特別な住居と呼ばれるようになった。

エーデル改革以前には、施設によって「寝たきり老人」の割合には差があった。この問題が話題になった頃、良く紹介されたのは日本からの視察者が行く サービスハウス(ケア付き住居)で、サービスハウスは介護度の低い高齢者が住む住居であった。このためサービスハウスには寝たきりの高齢者はいなかったと思われる(なおスウェーデンの寝たきり老人について書いている人のうち、私の知る限り誰も文献調査をしていない)。介護度の高い高齢者が住んでいたのはナーシングホームで、当時は医療機関であった(日本からの訪問者はいなかった?)。80年代の後半、日本の長期ケア施設における「寝たきり老人」の割合は約34%であり、同様にスウェーデンでは約4%であった(1995年に発行された厚生省高齢者介護対策本部事務局監修「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」234ページに、その数字は引用されている。なお元の調査は1985年に行われた施設の全数調査で、1987年に報告書が公表されている)
そもそも比較の対象が間違っているのである。スウェーデンには「寝たきり老人」がいないと言われたのは、文字通り一人もいないということではなくこの大差が問題とされたのである。そしてこれは寝かせきりになって(されて)いる老人が多いという批判でもあった。

なお、スウェーデンで寝たきり老人がいないのは在宅での24時間介護が普及しているからだと言われることがある。しかしこれもおかしい。ナイトパトロール などによる24時間介護が普及しているのは事実であるが、24時間介護が普及するということは相対的に介護度が高い人も在宅で看られるということであり、 単純に考えるならば在宅での寝たきり老人が増えても良いのである。スウェーデンで在宅での寝たきり老人が少ないのはいくつかの理由がある。第1は、スウェーデンでは高齢者が子供たちと一緒に暮らすということはほとんどないので、介護が必要な高齢者は連れ添いかホームヘルプの介護を受けているのが普通である。第2に、24時間介護の普及により介護度が高くなっても在宅に住み続けることが可能になったが、一般的に在宅での介護と施設での介護の境界線は常時介護/看護を必要(常に職員が近くにいる)とするかどうかである。もし常時看護/介護が必要になれば、施設(特別な住居)に移るのが普通である。なおガンの末期症状などでも在宅に住み続けることが出来るが、末期症状であるということは常時看護/介護が必要であるということと同じではない。

なお政府の他の報告書によれば、(自称)ナーシングホームにおける寝たきり老人の割合はおよそ4%(1998年)で、その後このような調査は行われていない。また全国統計においては特別な住居以外に種類分けは行われていないので、分母に何を持ってくるかによって数字は変わる。しかし私個人の施設などの訪問経験から言えるのは、寝たきり老人はいないわけではないが、非常に少ないということである。

2年ほど前に、読売新聞にも「スウェーデンには寝たきりはいない」という記事が出たので、その情報源を聞こうとしたが、編集部からは返事がなかった。記事を読んだ限りではいくつかの施設訪問がメインであったようである。スウェーデンで寝たきりが考えられるのはガン、ALSなどの病気、老衰などの末期症状などであることが考えられる。

(2016/07/10追加)
上記の4%という数字は1985年に行われた施設調査(Socialstyrelsen, Att bo på institution, 1987)からの引用であるが、これは全施設調査なので少し訂正が必要である。この調査の対象は老人ホーム、長期療養施設/ナーシングホーム、精神医療、障がい者ケアで、また寝たきりには一時的な人も含まれる。このため上記の数字から一時的な寝たきりを除外し、老人ホームと長期療養施設/ナーシングホームに限定して再計算した。これによると老人ホームにおける寝たきりの割合は0.7%、医療施設に含まれる老年科/ナーシングホーム5.6%で、両者を含むと3.1%になる。なおこの調査には同じように認定によって入居するサービスハウスは住居基準を満たしているので、施設の定義には含まれていないことに注意する必要がある(サービスハウスの対象は介護度が軽度の高齢者なので、サービスハウスを含めなくても結果的には影響しない)。
上記の数字からもわかるように、80年代老人ホームには寝たきり老人はほとんどいなかった。主にいたのは病院の老年科あるいは(初期医療に所属していた)ナーシングホームである。このため、「いる、いない」はどの様な施設を訪問したかにもよる。なお現在、そのような統計あるいは調査はないので数字的には不明であるが、個人的には2-3%ぐらいではなかろうかと想像している。ただし以前に比べて在宅での看護の可能性が増えているので、特にガン患者などは終末期を在宅でおくっている可能性は高い。
(2017年7月13日追加)

特別な住居の所有と運営


スクリーンショット 2016-01-08


90年代以降、高齢者のための特別な住居における民営化は増えている。日本でもよく似た議論があるが、これを所有と運営に分けてみると、その違いがよく分かる。まず伝統的な形は市が所有して同時に運営もしている形態である(1)。そして90年代に(2)が出始めた。建物自体は市の住宅公社などが所有し、入札などによりその運営を委託するものである。そして一部民間団体/会社が所有し、運営も行っている例が(4)である。大都市などでは教会系などのNPOが特別な住居を運営してきた伝統がある。この場合は、この施設は何人分という形で、市と契約する。市は契約書にしたがってその費用をこの会社/団体に支払う。家賃はこの会社/団体に直接支払う場合と、市に支払う場合がある(なお選択の自由性を導入している市では若干プロセスが異なる)。
最近もう一つの形態が出始めている。これが(3)の形態である。建物の所有は民間住宅会社であるが、特別な住居としての運営は市が行っている。なぜこのような複雑な形態を取るのか。いくつかの理由がある。

1.将来的に特別な住居は改築の必要性があり、売却することによりその改築費は住宅会社の負担になる。また市では売却することによりまとまった収入が増え、これを市の住宅会社所有の一般住居の改築に使うことが出来る。
2.特別な住居を売却すれば、その市の特別な住居は減少するのではないかと思われるが、そうではない。この売買において市はこの住宅会社と交渉を行う。もちろんその交渉内容は市によって異なる。一般的には、市はこの民間住宅会社と特別な住居の長期リース契約を行う。たとえば20年間の長期リースである。民間会社にとっては仮に改築の必要性があっても、長期リースであるので安定した収入を得ることができる。市にとっては売却により一時的な収入が得られ、長期契約により社会サービス法による特別な住居の提供義務を果たすことが出来る。市によってはこの売却に住宅建設の許可条件を追加する場合もある。これによって民間会社も市も利益を得る。大事なのは入札が公平、オープンに行われることである。なお市の住宅公社は「ビジネス的」に運営することが法律で決められている(何年にもわたって赤字運営は出来ない)。

特別な住居

高齢者ケア用の「施設」は名目上も、事実上も住居である(ショートステイなどにおいて一部住居基準を満たさない場合が存在する可能性はある)。社会サービス法では「介護とサービスのための特別な住居形態」と呼ばれているが、介護住居と呼ばれる場合もある。以前のように老人ホーム、ナーシングホームなどの形態別の区別はされなくなった。特に最初に二点についてシニア住宅や「安心住居」と異なる。

・社会サービス法により入居の決定および介護が行われる。
・保健医療法により、市の看護が行われる(医師による医療は県などによって行われる)。
・住居としての管理は市の住宅公社が行っていることが多く(例外あり)、ケアの運営は市の福祉部あるいは民間団体が行っている。
・ユニットごとに別れて日常の業務、生活が行われる。
・住居基準を満たす
・住居として賃貸法の対象となり、賃貸契約が行われる。死ぬまで住み続けることが出来る。また住居であることによって、普通の住居と同じように家賃補助が行われる(法律上は、市の福祉部が第1次契約者で入居者は第2次契約者である)。


01:設計図1

ある介護住居の居室(フラット)。居室の大きさに関しては直接の規定はないが、35㎡ぐらいが平均であるようである。特にトイレなどの大きさに関しては、労働環境の面から職員の働きやすさが重要視される。場合によっては入居者が車いすを使用しているということが考えられるので、特にベッドの回りおよびトイレなどでは十分な広さが求められる。

15:設計図2

大抵はユニットに別れていて、ユニットごとに生活、活動が行われる。ユニットの大きさは8-10名であることが多い。


日本との直接の比較は行わないが、いくつかの違いが分かる。
1.スウェーデンではすでにほぼすべての特別な住居が住居基準を満たし、在宅になっている。このため、「在宅(住居)対施設」という対立構造はほとんど存在しない。
2.住居であることによって、特別な住居も在宅になり死ぬまで住める。
3.特別な住居においては原則的にユニットケアであり、ユニット内で生活が行われる(なおその他の高齢者住居はユニットケアではない)。
4.各居室/フラットが住居基準を満たしているので、建物が住居であるということと同じではない。
5.運営の効率化および対象の多様化などから、特別な住居は複数のユニットを有しているのが普通である。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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