原発に対する世論

1980年に行われた原発に関する国民投票は日本でもよく知られているが、その後の変化はあまり知られていないようである。2009年2月の保守政権による合意によれば、エネルギー政策の原則は環境の維持、競争力、供給の安定性であり、原発に関しては「既存の原発が寿命を向かえるまで使用し、更新も認める。ただし新設は認めない」というものである。原発問題は時代の流れ、政党間の意見の違い、政治的妥協などがあり、外から見るほど一枚岩ではない。


nuclear power


2012年10月12日追加
上の図はヨーテボリ大学政治学科によって毎年行われている世論調査の結果である。調査が行われ始めた1986年から、原発の使用賛成派は増加、反対派は減少し、2002年からは賛成派は反対派を上回った。
2011年、原発賛成派が46%、反対派が36%で、前年度に比べて賛成派が減り、反対派が増えた。しかし依然として賛成派は反対派よりも10ポイント多く、これは2004年頃とほとんど変わらない。この変化は福島原発問題の影響であると思われるが、これが短期的なものか、長期的な影響であるのかはまだ不明である。
関連団体への信頼性を観ると、おもしろいことがわかる。前年度に比べて環境団体への信頼性が増えることは考えられることであるが、原発産業に対する信頼性は前年度と同じであり、国の監督機関への信頼性は若干増えていることである。なおジャーナリストに対する信頼性も増えている。しかし信頼性は年による変化が大きいので、もう少し詳細な分析が必要である。

混雑税の導入

  この8月から、ストックホルム中心部への車両進入を削減するために混雑税が導入された。車で中心部に乗り入れる際に、混雑税を支払う。混雑税は時間帯に よって異なり、朝夕のラッシュ時は20クローナだが、夜や深夜などは無料である。これはもともと社民党の案で、保守党は反対していた。しかし保守党は去 年、政権につくと同時に、一部変更はあるものの賛成に回った。

 内容に関して、2つの大きな特徴がある。第1は、税金という形を取ってい ることで、支払い義務があるのは車の所有者である。この結果、混雑税を滞納すれば、他の税金と同じように強制執行される。第2に、最近のデジタル技術を最 大限に利用して、混雑税請求は半自動的に行われ、料金所というものは存在しない。市の中心部への入り口の路上にはカメラが取り付けられていて、通過する車 のナンバープレートを自動的に読み取る。これを車両登録と付き合わして、混雑税が課税される。このデジタル化を発展させたのはIBMで、他の国からも興味 が持たれているそうである。なおこのシステムの導入において、通行する車の情報は目的以外には使用できない。この点においては、はるか以前から日本で運用 されているNシステム(?)よりも情報の使用が厳格であるような感じを受ける。(2007年9月29日記)

脱原発からその見直しへ

 昨日、保守4党は記者会見を開き、エネルギー問題について合意にいたっと発表した。原子力問題はスウェーデンの政治上、左右のイデオロジーと並ぶ重要な政策項目であり、保守与党の間でも意見の違いがある。特に保守与党の中央党が原子力発電所の新築に反対しているので、保守与党ではこの問題について触れないことになっていた。2002年の三党合意(社民党、左翼党、中央党)によって、現在ある10の原子力発電所の安全性が保たれ、採算が取れる限り使用していくと合意されたが最終的には廃止することを目指している。今回、保守与党はエネルギー政策の長期的安定が重要であるとして、引き続き原子力発電所を使用していくこと、原子炉の寿命が来れば(同じ場所に)建て替えできること、その費用は電力会社が出すこと、さらに再生可能なエネルギー源にさらに投資することなどを発表した。これによって、中央党はイデオロジーよりも現実主義を取った。なお政府発表文書には、はっきりと脱原発の廃止が明記されている(原発への依存を少なくすると同時に、原発廃止政策は撤回)。

 原子力発電に関しては必ず、1980年の国民投票が話題に上がる。スウェーデンの国民投票に強制力はなく、状況が変わっても30年前の決定に固持することにも問題がある。しかし前回には国民投票を行ったのであるから、今回も行うべきであると言っている政治学者もいる。

 福島原発事故の後、原発問題が世界各国でふたたび話題になっている。日本ではスウェーデンが紹介されることが多いが、上記に見たように、「スウェーデンは脱原発」であると単純に言えなくなっている。良くも悪くも現実路線を取っている。これらの政策変化は少なくとも全国新聞では触れられてはいるが、他のメディアにも十分浸透しているとは言い難い。あとひとつの問題点は、発熱は地域での対応が大きい分野であるが、発電は全国あるいは欧州対応である点で、この区別が十分されていない。

 地域レベルでの対応で力が入れられているのは、地域暖房と公共交通である。地域暖房がカバーする地域が大きくなり、効率化されている。またエネルギー源として自然エネルギーを使うことが増えている。スウェーデンの公共交通の責任は県にあるが、県が積極的に再生エネルギー(エタノール、ガスなど)の使用を実践している。また交通政策として自動車の使用を制限する政策(混雑税など)も行われている。(2009年2月6日記、2011年10月1日追記)
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Author:Taro
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