社会保険庁の不正免除問題

  社会保険庁による国民年金保険料の不正免除問題が話題になっている。第一時的には社会保険庁自体の運営の問題であるが、根本的には公的年金が抱える制度問題を十分議論してこなかったことである。制度問題とは、保険制度と最低保障のことである。保険制度として住民が年金料を支払い、それに応じた年金を受け取る。一方では社会保険という観点から国民全員の強制加入が必要である。問題は強制加入という観点から、何らかの理由で保険料を払えなかった人あるいは収入がない人はどうするかという問題がある。

 「国民年金の財源は保険料でなく全額税方式にすべきだ」との声があるが、保険料か税金かという問題の前に、国民年金の機能は何かと言うことである。不思議なのは税金から出費すれば生活保護と変わらないという人がいることである。生活保護と社会保険の根本的な違いはミーンズテストである。税金から出費されている児童手当は生活保護ではない。公的年金における最低保障の問題をなおざりにしてきたことは、生活保護を受けている世帯にかなり高齢者が多いということに典型的に現れている。

  保険料徴収の簡素化という観点からは、保険料計算の単純化、税金との共同徴収が考えられても良いのではないだろうか。保険と税金という問題をあまりにも原理的に捉えているのではなかろうか。とりわけ社会保険というのは、その国の歴史、政治的考え、伝統などに左右されて、かなり幅の広い世界なのである。もちろん原則は大事だが、机上論のために制度があるのではない。(2006年5月30日記)

 また社会保険庁が話題になっている。約5000万件もの納付記録が該当者不明で放置されていたというのだ。安倍首相は31日付のメールマガジンで「こうした問題を起こした社会保険庁の責任は重大。国の機構として温存するわけにはいかない」と明記しているという記事を読んだが、私の頭では社会保険庁の責任問題と「民営化」の問題が結びつかないのである。そもそもの問題は組織としての指導力、運営能力、責任能力などではないだろうか。この観点からは、これらの問題を解決できなかったあるいは温存してきた社会保険庁歴代長官、および厚労省関係部署、歴代大臣は万死に値する。(2007年7月9日追記)

 今日の新聞によると、「年金記録問題検証委員会」は、歴代の社会保険庁の長官や幹部職員の「責任が最も重い」などとした最終報告書を提出したようである。「社保庁長官のほか、厚生労働省の次官や幹部も重大な責任がある。・・・厚生労働相は統括者としての責任は免れない」、「社保庁の職員団体も待遇改善に偏りすぎた運動を展開し、年金記録の適切な管理を阻害した責任がある」。妥当な報告である。後は、早く名寄せを完了させ、責任者は責任を取り、同じような問題がふたたび起こらないように、組織的、制度的変更を行うことである。報告書をダウンロードしたが、なぜ26分冊にもしなければならないのであろうか。最後の章はわずか2ページである。一冊にするのは無理でも少なくとも3冊ぐらいにできるページ数である。よく見ると、スキャンしたようで、初めからPDF にしていない様子だ。蛇足ながら、このようなことが多い。電子政府はどこへ行ったのだろうか。(2007年10月31日追記)

 

市場化テスト

  今日の朝日新聞に、社会保険庁の市場化テストで民間委託が3~5割安かったと出ていた。すごく安いなあと思って良く読んでみると、子供だましの内容である。コスト削減の大きな理由は、戸別訪問中心から電話による支払い催促にかわったということである。社会保険庁がなぜ効率的な徴収方法をとらなかったかということは別にして、市場化テストの中身がこの程度とはあきれかえる。これは市場化テスト以前の問題で、公務員制度自体の問題である。なおこの市場化および以前から話題になっている民営化に対して、労働組合がどの様な戦略を持っているか興味があるところである。自分で墓穴を掘るようでなければいいが。(2007年2月8日記、2月15日追記)

年金の未納問題

この数週間は、年金の未納問題が話題になっている。政治家だけではなく、ニュースキャスターが謝ったり、魔女狩りの様子でさえある。

 国民年金の加入義務のなかった時期の未加入をなぜ問題にしなければならないのだろう。任意加入だった1986年までの時期に国民年金に加入していなかったことを、なぜ批判せねばならないのであろうか。この問題を党利党略的に扱い、政治問題化してしまったことが、必要以上に年金不信を増やすのである。問題の本質は、加入者の四割近くの「意図的未納者」を抱えた国民年金制度のひずみにある。いつまで事の本質から離れた党利党略的な駆け引きに没入しているのであろうか。政治家の役割は5年先、10年先のことを考えることで、今年金問題で話題にしていることは「今日の昼はカレーにしようか、うどんにしようか」と考えることとほとんど変わらない。(2004年5月15日記、2005年4月14日追記) 
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