社会保障番号の漏洩と個人情報の漏洩

今年10月のマイナンバー制度の導入により、漏洩問題が再び議論されている。日本の議論は以前からフォローしているが、議論のすり替えが少なくない。アメリカや韓国での状況が良く話題になるが、漏洩のプロセスがはっきりわからないことが多かった。ASAHI パソコンに社会保障番号の漏洩問題が載っている。「いったん社会保障番号が漏れれば、個人情報が丸裸になってしまうのだ」と書くのは、三流週刊誌のような書き方である。

多くの場合、問題は番号の漏洩自体ではなく、個人情報の漏洩が問題なのである(もちろん社会保障番号あるいはマイナンバー自体が漏れないようにすることは大事である)。たとえば社会保障番号の漏洩によるクレジットカードの不正収得は、番号の漏洩が問題なのではなく、カード収得における個人認証の不十分さが問題である。つまり他人の社会保障番号で、なぜカードを作ることが出来たか、どの様にして本人確認が行われたか、肝心の確認プロセスが不明である。日本でも以前から問題になっていたが、マイナンバーを使ってどの様にして個人認証を強化するかが問題なのである。しかしトレンドマイクロ社のスペシャリストがこの程度の議論レベルとは驚いた。

スウェーデンでもカードの不正収得事件は存在する。カードは住民登録された住所に送られてくるので、不正拾得者は本人宛の郵便を見張り、盗まなければならない。偽造カードの作成もあり得るが、これは社会保障番号の漏洩ではなく、カード情報の漏洩である(特にカード番号とカードの裏に書かれたセキュリティ番号の漏洩)。スウェーデンではクレジットカードか身分証明書の偽造であることが多い。少なくとも行政機関などの個人情報あるいは医療情報の漏洩は聞いたことがない。銀行や民間保険会社の個人情報の漏洩も聞かない。

所得制限

自民党政権になってから、例えば高校無償化に関して所得制限案が浮上している。所得制限案はひとつの政策であるが、その長所も短所も考察する必要がある。問題点はいくつかあり、ひとつはこれに必要な事務費、二つ目は就労に対する影響である。行政側が世帯の収入を正確に把握していると仮定しても、この判断に費やす事務費はどれくらいになるのであろうか。
二番目は収入が制限額に近い世帯の就労状況がどの様に変化するかである。仮に世帯の収入が900万円を少し越えるぐらいと仮定すると、無償化などの対象に含まれるために、特に母親の就労時間などを減らすことが考えられる。
これからの少子化社会を考えると、できるだけ多くの人が就労できることを考慮する必要があり、就労意欲を減らすような政策は考え物である。このため、まずは高額所得者層に重点を置いた課税強化という普遍政策によって平等化を図り、これで不十分なのであれば所得制限案を導入すべきではなかろうか。
日本は先進国の中で課税制度が可処分所得の平等化に寄与する度合いがいちばん低い国であり、まずは課税制度の見直しが必要なのではなかろうか。一般的に所得の平等化を図るためには貧困層あるいは高額所得者層だけを対象にすることは不十分で、この間の中間層も対象にしなければならない。

個人番号となりすまし

先日、マイナンバーに関するあるホームページを読んでいた。マイナンバーに反対の理由としてなりすましが上げられている。アメリカの例は直接わからないが、なりすましはマイナンバー/個人番号とどの様な関係があるのであろうか。
スウェーデンでもなりすましは話題になっていて、2つの例が挙げられる。1つは身分証明者あるいはカードの紛失、2番目はなりすましによる身分証明書あるいはカードの取得である。ただどの場合もどこまで個人番号の問題かということである。身分証明者の紛失によるなりすましは簡単にできるものではない。身分証明者は写真を必要とし、なりすましのために使うのであれば偽造しなければならない。また他人の個人番号を使ってカードなどを不法に収得することは不可能ではないが、住民登録、身分証明者を使って認証が行われる。もちろん他人のカードの不法使用はマイナンバー/個人番号とは関係のない話である。
数年前、データ監査院の調査員にインタビューした時になりすましが話題になった。その時に話題になった件に関しては、個人番号自体が問題なのではなく個人番号を使っての認証が不十分であることだと言われたのが記憶に残っている。

このようなレポートを見つけた。

医療ID

いわゆるマイナンバー制度が閣議決定された。マイナンバーは(少なくとも現在のところ)税金や社会保障のみに適用され、医療分野は含まれていない。このため厚生労働省は医療 IDの作成を考えているらしい。マイナンバー制度とは別に医療IDの必要性がわからない。どうも制度の問題が十分区別されてないように思える(内閣府と厚生労働省の間でどの様な調整があるか、どの様な政治的駆け引きかあるかは不明である)。特別法の必要性と医療IDの導入とは別個の問題である。問題は道具そのものではなく、道具を使って集められた情報の管理である。

制度として3つの問題があるように思う。第1はどの様な番号を使うか。第2にそれぞれの分野あるいはデータベース内における番号の使い方および個人情報保護。第3に異なった分野間の個人情報連携の問題。個人情報保護に関してはそれぞれの分野ごとに、番号の使い方および他の分野との連携に関して法律を作る必要がある。どこの国でも医療関係情報の保護は厳しいが、これと同じ番号か異なる番号かは関係のないことである。重要なのは上記3つの問題の区別で、同じ番号を使っていても情報管理が厳格ならば問題とはならないのである。医療でも本人確認を行う必要があり、またガン登録などに他の登録情報を研究のために利用することが出来る。

スウェーデンの個人番号制度で重要なのは個人番号は住民登録に連携していることである。言い換えるならば、スウェーデンの個人番号制度は一元化されたひとつの閉じたシステムではなく、個人番号(住民登録情報)をベースにした分権型システムである。そして分野ごとの使用および分野間の使用に関しては法律においてその方法、範囲が定められている。
日本のマスコミは、今までに何回かスウェーデンの個人番号制度に関する記事をのせたが、あまりにも一元化という言葉のみが注目されて、この分権型システムであるということには注意を払ってないように思える(あるいは意図的に書いていない?)。

医療を受ける権利

資料)医療・福祉研究2008年号 奥村芳孝『スウェーデンに社会保障カードはない』

人口変化

厚生労働省の「人口動態統計の年間推計」によると、2012年の人口は6年連続で減少する見通しである。この理由は、死亡数が出生数より多いからである。
スウェーデンでは出生数と死亡数の差である自然増加数は年間およそ1万2千人で、これは2060年ぐらいまで続くと推測されている。移民超過とあわせて、引き続いて人口は増えていく。

少子化は将来にわたって誰が働いて、社会保障の財源を作り出すかという点で一番大事な問題である。少子化問題は40年以上も前から話題になっていて、多くの報告書が作成されているが、残念ながら根本的な変化はいまだに見られない。

社会保障に関する国民意識調査

先日、厚生労働省から「社会保障に関する国民意識調査」が公表された。興味ある内容であるが、少し疑問がある。
「所得の高い人は、所得の低い人よりも、医療費を多く払って、よりよい医療を受けられる」との考え方が正しいかどうかという質問項目がある。比較の対象とされているISSPにおいては、質問項目は「Is it fair or unfair that people with higher incomes can afford better health care than people with lower incomes?」であるが、訳が若干異なる。
2番目の問題は調査の手法である。手法はウェブを使ったインターネットアンケートであるが、学術調査ではインターネットアンケートはあまり使われない。居住地、年齢、性別のみによって層化されているだけなので、バイアスがかかっている可能性がある。委託された会社が厚生労働省に相談することなく、この手法を使っているとは思えないので、厚生労働省の認識もこの程度なのであろう。

個人情報の外部流出

新聞によると、また個人の医療情報が外部流出した。
「岐阜大(岐阜市柳戸)は27日、同大医学部付属病院の患者1824人分の個人情報などが入ったUSBメモリー1個が盗まれたと発表した。同大によると、22日午後8時ごろ、同大医学系研究科の大学院生の30代男性が、岐阜県瑞穂市内のパチンコ店駐車場に車を止めて約1時間後に戻ると、窓ガラスが割られ、USBメモリーなどの入ったカバンが盗まれていたという。ーーーーメモリーには85年から昨年までの同病院眼科の患者1824人分の名前と、手術データ2726件、患者ID、生年月日、視力に関する情報などが入っていた。ーーーー」

上記の事件はマイナンバーとは関係ないが、マイナンバー制度が導入されようとしている時に、あまりにも情報管理がお粗末である。不正使用がなくても、個人情報の外部流出そのものが問題で、謝罪して済む問題ではない。医療情報だけでなく個人情報一般の管理が適正に行われているか監査を行う独立機関を早く設置するべきである。
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Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
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