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スウェーデンの難民問題

こんな記事が載っていたが、おかしなところがいくつかあるので調べてみた。ストックホルム郊外のクニューブシュタ(Knivsta)の例が挙げられているが数字がおかしい。統計庁の数字によると、この市の人口増加率は2.7%(2016年)であり、4.7%ではない(再チェックの結果、4.7%という数字は2015年度であることが分かった)。「2015年にスウェーデン入りした移民者は約16万3千人に上がった」と書かれているが、これは大きな誤解である。これは難民申請者の人数であって、移民者の人数ではない。移民統計と出入国管理統計は異なる。

念のため、人口の全国統計を調べてみた。2015年の人口増加はおよそ10万人で、このうち自然増加は2万4千人で、残りが移民超過ということになる。この年の難民申請者はおよそ16万3千人であるが、難民申請者は人口には含まれない。2016年の人口増加は14万4千人で、これは今までで最高の数字である。自然増加はこの20年間で最大であるが、一番人口増加に寄与したのは移民超過数がおよそ12万人になったことである。これは前年度の難民申請の認定結果であろうと思われる。2016年の移民者数はおよそ16万人なので、2015年度の難民申請者数と2016年度の移民者数を混同された可能性はある。
2016年度の移民者数のうち、第1位はシリア生まれでおよそ5万2千人である。第2位はスウェーデン生まれで、およそ1万5千人である。そのほとんどが就労あるいは留学であると思われる。たとえばノルウェーに住んでいたスウェーデン生まれの人2500人、イギリスに住んでいたスウェーデン生まれの人1300人がスウェーデンに戻っていて、統計上は移民者である。そして第3位はエリトリア生まれ6600人、第4位ポーランド生まれ5000人、第5位イラク生まれ4900人で、第9位にフィンランド生まれ3000人、10位ドイツ生まれ2700人と続く。移民者数が急増したのはシリアおよびエチオピアである。

また失業率の数字はほぼ正しいが、失業統計においては移民という言葉は使われていない。外国生まれが使われている(なお難民申請者は働くことができるが、人口に含まれないので失業統計にも含まれない)。そして欧州では失業統計の対象は15-74歳である。なお経済が好調なので、移民者あるいは外国生まれの就労状況は改善され、失業率も低くなっている。
難民の受け入れ体制および滞在を認められた難民の就労、統合問題は現在の一番大きな問題であるが、もう少し正確な記事を書いて欲しい。数字は古いし、言葉の使い方が不正確である。第1次資料を使って書かれた記事には思えない。

なおこのブログに何回も書いているが、移民者という言葉は不正確な言葉であるとして行政用語としてはあまり使われない。しかしこれに関連する用語は3つある。まず外国籍の者、外国生まれの者、外国の背景のある者である。外国の背景のある者とは外国生まれおよびスウェーデン生まれであるが、両親が外国生まれである者を指す。
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スウェーデンの統合政策

最近、特にアメリカを中心としてスウェーデンの難民政策と犯罪に関して誤解が広まっているので、スウェーデン外務省は広報ページを作成した。

スウェーデンの福祉(Youtubeから)

Youtubeには参考になる動画もたくさんあります。スウェーデンの福祉などに関する動画をアップしてみます。なお言語はスウェーデン語ですが、雰囲気だけでも感じてもらえば幸いです。 参考になる動画が見つかれば、追加していきます。

アンダーナースの紹介動画



精神科ナースの仕事



ヘルシングボリー市のヘルパー



高等訪問看護



病院から退院を前にしたケア会議。患者と一緒にいるのは病院のケア計画担当ナース。会議に参加しているのは市のナースとケア認定者。



遠隔医療の一形態。アンダーナースがIpadを使って褥瘡の状況をナースあるいは医師に送り、助言を得る。スウェーデンの北部のある市の様子です。



障がい者のデイ活動



市のショートステイ
対象は病院からの退院者で、県が運営する病院内に市がショートステイを設置している。ここで最高2週間滞在してリハビリを行ってから家に帰る(市の医療および介護職員が勤務している)。


家賃の決定

数日前に、住宅会社から来年度の家賃改定について連絡が来た。平均して0.5%上がるというものである。私が住んでいるのは市の住宅公社のアパートであるが、家賃は住宅公社と借家人協会との交渉で決まる。
スウェーデンではNPO団体である借家人協会は大きな役割を担っている。借家人協会はわずか53万世帯が加盟しているだけであるが、スウェーデン最大の借家人協会で、事実上ほぼすべての賃貸住宅に関して家主と交渉を行う。住宅が公営あるいは民営を問わず、居住者が借家人協会の会員であるかどうかは問わない。もちろん本人が自分で家主と交渉を行うのであれば、これを妨げるものではない。
最近の統計によれば借家人協会は750名の職員を有し、1425の地方協会から成り立っている。地方での交渉を行うのは地方協会の会員から選ばれた役員で、およそ1万人になるといわれている。借家人協会は歴史的に労働運動および社民党に近かったが、最近ではこれは薄れ、どの政権に対しても住宅政策に関して意見を述べている(設立は1915年)。なお高齢者ケアにおける特別な住居などの家賃も対象になる(以前に、あるグループホームの家賃が適当かどうかが話題になった)。
借家人と家主の間で賃貸に関する問題が起これば、全国8箇所にある賃貸委員会に申し出る。たとえば、借家人が家主の許可なく部屋を貸し出し、その結果契約が破棄されたとか、家賃が異常に高い場合とか、これらは賃貸委員会にてその合法性/妥当性が判断される。

追加
借家人協会の財政を調べてみた。会員の会費が一番大きく、次に多いのが交渉費用代である。この交渉費用代は家主が借家人協会に支払うもので、現在一戸当たり年間144クローナである。この費用は他の費用と共に家賃に含まれているので、入居者が意識することはない。他の費用の中には水道代、洗濯室の使用料などの共益費も含まれている(共益費をどこまで個人別にしたら良いかというのは徴収の効率性を考慮して家主が決める。なお電気代は含まれていない)。なおスウェーデンでは賃貸住宅の台所は冷蔵庫、冷凍庫、レンジなどの設備はすでに整えられている。もちろん暖房(温水による集中暖房)も込みである。

訪問看護

日本でも在宅看護あるいは包括ケアが話題になっているが、スウェーデンと日本の状況は異なる。スウェーデンでは在宅看護(在宅介護ではない)は医療に属し、県が行い、在宅介護は市が行っていた。このため医療と介護の連携が問題となっていた。1992年にエーデル改革が行われ、まず医療に属していたナーシングホームなどが市に移された。在宅看護に関しては市と県の合意にまかされることとなり、2014年にはストックホルム県を除くすべての県で在宅看護が市に移された(すでにエーデル改革によって1992年からおよそ半分の市では訪問看護は市に移っていた)。なおこの場合の在宅看護とは一般住居における訪問看護と特別な住居における在宅医療が含まれる。市が行う在宅看護には医師は含まれないが、医師は嘱託医のような形で参加する。どの様な形で統合するかは、県と市が話し合って決めている。

現在、スウェーデンの訪問看護は大きく分けると2種類存在する。一つは市の訪問看護で、二番目は医療を行う県の高等訪問看護である。一般的な訪問看護を行うのは市の訪問看護師であるが、医師は含まれない。高等訪問看護は県の病院を中心として行われる。県によって若干異なるが、高等訪問看護の特徴は3つある。第1に病院の老年科あるいは腫瘍科がベースになっていて、必要に報じて病院の救急を経ないで直接入院できる。第2は病院を中心として24時間の訪問看護チームが存在し、医師も参加している。地方の状況にもよるが、病院から車でおよそ30分以内が、その対象である。最近特に地方においては、第3の訪問看護が始まっているところがある。これは訪問看護助言チームと呼ばれる活動で、特に市の看護師や在宅で訪問看護を受けている人およびその家族に対して助言を行うチームである。このグループは緩和医療の可能性を広める役割も担っている(緩和ケアの一つの役割は家族などに対するサポートである)。
スウェーデンでは病院外、たとえば老人ホームや、ナーシングホームなども住居なので在宅看護である。これらの特別な住居ではナースは常駐している。また小さな市では特別な住居の医療と一般住居での医療(ナースまで)を統合して、訪問看護として提供している(ただし市の状況によって統合の仕方は異なる)。

病院からの退院

スウェーデンでも包括ケアが話題になっているが、その一つが病院からの退院である。エーデル改革は日本で話題になり、ナーシングホームなどが福祉施設/特別な住居になったことは一部では知られているが、病院からの退院時におけるプロセスについてはあまり知られていない。

− 1992年施行のエーデル改革と同時に「市の支払い責任法)が導入された。身体長期医療、身体短期医療、老年科医療では、市の福祉事務所がケア計画会議の招集を受けてから土、日曜、祝日を除いて5日後には市に支払い責任が生じる。なお精神科医療では30日後(休日および祝日を除く)から支払い責任が生じる。
− 患者の退院後に市の社会サービス、訪問看護あるいは県のプライマリケア、精神科外来などの医療が必要ならば、ケア計画を作成しなければならない。担当医はケア計画を作成するために、他の関係者にケア計画会議の招集を行う。
− ケア計画会議の招集、方法については県ごとに異なるが、ある県では、市はケア会議の招集に対して24時間以内に受領返信を行い、この時間を持ってケア計画が始まったと見なされる。最近はこの会議のためにIT技術が使用されることが多い。ケア計画には援助の内容、その責任者などが書かれ、患者が退院の際に持って帰る。
− 遅くとも予定された退院日の前日までに、担当医は退院連絡を関係機関および関係者(県のプライマリケアおよび市など)に送付する。
− 市がケア会議の招集に応じなければ、前項の条件で支払い責任が生じる。
− リハビリに関しても県と市は連携しなければならない。

− 病院からの退院の手順の例
1. 月曜日午後1時にケア計画会議の招集を連絡
2. 2週目の月曜日12時に退院連絡を行う
3. 2週目の火曜日に退院
4. もし2週目の火曜日に退院できなければ水曜日から市に支払い責任が生じる。

− 病院の担当医が退院可能と決定してから実際に退院するまでの期間は平均して4.2日である(2015年9月)。これも地域によって差がある。なお退院可能というのは治療が全く終わったということではなく、病院での治療が終わったということで、その後の治療はプライマリケアあるいは市の医療に引き継がれる。

スウェーデンに寝たきり老人はいない?

スウェーデンには寝たきり老人がいないと言われたことがあり、一方ではそれは間違っているという批判もあった。字義通りにとらえるならば、両者とも間違っている。まず90年代までのスウェーデンの施設はサービスハウス、老人ホーム、ナーシングホームなどに別れていた。エーデル改革によってこれらの施設は住居化され、特別な住居と呼ばれるようになった。
エーデル改革以前には、施設によって「寝たきり老人」の割合には差があった。この問題が話題になった頃、良く紹介されたのは日本からの視察者が行く サービスハウス(ケア付き住居)で、サービスハウスは介護度の低い高齢者が住む住居であった。このためサービスハウスには寝たきりの高齢者はいなかったと思われる。介護度の高い高齢者が住んでいたのはナーシングホームで、当時は医療機関であった(日本からの訪問者はいなかった?)。80年代の後半、日本の長期ケア施設における「寝たきり老人」の割合は約34%であり、同様にスウェーデンでは約4%であった(1995年に発行された厚生省高齢者介護対策本部事務局監修「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」234ページに、その数字は引用されているが、マスコミがこれをほとんど参考にしていないのは不思議である)。そもそも比較の対象が間違っているのである。スウェーデンには「寝たきり老人」がいないと言われたのは、文字通り一人もいないということではなくこの大差が問題とされたのである。そしてこれは寝かせきりになって(されて)いる老人が多いという批判でもあった。

なお、スウェーデンで寝たきり老人がいないのは在宅での24時間介護が普及しているからだと言われることがある。しかしこれもおかしい。ナイトパトロール などによる24時間介護が普及しているのは事実であるが、24時間介護が普及するということは相対的に介護度が高い人も在宅で看られるということであり、 単純に考えるならば在宅での寝たきり老人が増えても良いのである。スウェーデンで在宅での寝たきり老人が少ないのはいくつかの理由がある。第1は、スウェーデンでは高齢者が子供たちと一緒に暮らすということはほとんどないので、介護が必要な高齢者は連れ添いかホームヘルプの介護を受けているのが普通である。第2に、24時間介護の普及により介護度が高くなっても在宅に住み続けることが可能になったが、一般的に在宅での介護と施設での介護の境界線は常時介護/看護を必要(常に職員が近くにいる)とするかどうかである。もし常時看護/介護が必要になれば、施設(特別な住居)に移るのが普通である。なおガンの末期症状などでも在宅に住み続けることが出来るが、末期症状であるということは常時看護/介護が必要であるということと同じではない。

なお政府の報告書によれば、(自称)ナーシングホームにおける寝たきり老人の割合はおよそ4%(1998年)で、その後このような調査は行われていない。また全国統計においては特別な住居以外に種類分けは行われていないので、分母に何を持ってくるかによって数字は変わる。しかし私個人の施設などの訪問経験から言えるのは、寝たきり老人はいないわけではないが、非常に少ないということである。

2年ほど前に、読売新聞にも「スウェーデンには寝たきりはいない」という記事が出たので、その情報源を聞こうとしたが、編集部からは返事がなかった。記事を読んだ限りではいくつかの施設訪問がメインであったようである。スウェーデンで寝たきりが考えられるのはガン、ALSなどの病気、老衰などの末期症状などであることが考えられる。

(2016/07/10追加)
上記の4%という数字は1985年に行われた施設調査からの引用であるが、これは全施設調査なので少し訂正が必要である。この調査の対象は老人ホーム、長期療養施設/ナーシングホーム、精神医療、障がい者ケアで、また寝たきりには一時的な人も含まれる。このため上記の数字から一時的な寝たきりを除外し、老人ホームと長期療養施設/ナーシングホームに限定して再計算した。これによると老人ホームにおける寝たきりの割合は0.7%、医療施設に含まれる長期療養病床/ナーシングホーム5.6%で、両者を含むと3.1%になる。なおこの調査には同じように認定によって入居するサービスハウスは住居基準を満たしているので、施設の定義には含まれていないことに注意する必要がある(サービスハウスの対象は介護度が軽度の高齢者なので、サービスハウスを含めなくても結果的には影響しない)。

(2016/11/11追加)
スウェーデン語資料の名前を挙げておきます。
Socialstyrelsen, Att bo på institution, 1987
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Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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