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年金制度改革

スウェーデンでは1994年に年金制度改革が行われ、日本でも注目された。その後平均寿命はさらに3-6年延びている。さらに勉学などのために生涯の総就労期間が短くなっている。前回と同じく今回も年金問題を長期的な視点から解決するために、六党が合意を求めて話し合いを行った。そして改革合意案が12月14日に発表された(来年は選挙の年なので、各党とも年金問題を選挙の課題にしたくない)。左翼党とスウェーデン民主党のみが合意に参加していない。
各政党間で年金についての意見に違いはあり、社民党は積立年金に反対であるが、保守政党は賛成である。また積立年金制度上の安全性をさらに強化する必要も増えた。就労による年金を基本としながらも、何らかの理由によりこの所得年金を十分得られない人には税金からの最低保障を行っているのが最低保障年金であるが、所得年金の変化に応じて最低保障年金も変化せざるを得ない。今回の合意によってすべてが決まったわけではないが、その方向性は決まった。
なお1994年に年金制度が改革されたおり、いくつかの誤解があった。スウェーデンでは生涯年収、経済成長、平均寿命などにしたがって年金額が決定され、他の条件が同じならば年金総額は変わらない。反対に就労期間が延びるとそれにあわせて総所得も増えるので年金総額は増える。

1.年金を取得できる年齢を61歳から64歳まで延長する。2020年に62歳、2023年に63歳、2026年に64歳まで延長される(数年前に出された政府の委員会案では63歳までの延長が含まれていたのみだったので、今回の合意案はそれをさらに踏み込んだものとなった)。
2.公的な退職年齢というものは存在しないが、現在67歳まで働き続けることが雇用保障法によって保証されている。年金取得年齢の変更に伴って、2020年には68歳まで、2023年には69歳までの雇用保障を行う。
3.年金額が少ない高齢者のために保障年金があり、現在これは65歳から受けることが出来る。これを2023年には66歳まで延長し、2026年以降は平均寿命の変化に合わせる(1994年の改革においては年金財政悪化による年金額の自動減額制度が決まっている。ただしその計算方法はその後変更された)。
4.なお65歳以降まで働き続けることが困難な人を考慮して、最低44年間の就労期間を満たせば保障年金を得ることができるよう特例を設ける(18歳から働き続けると仮定すれば、62歳で保障年金を得ることができる)。
5.年金額が少ない高齢者のために保障年金および住宅手当を増額する(額は未定)。
6.積立年金の規定を厳格化し、安定した運営を目指す。

2017/12/16 追記編集。

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選択制度の導入。

保守政権時代、選択の自由制度が導入された。利用者から見れば選択制度の導入であるが、制度的には市の規定を満たす団体の自由参入制度である。市からの業務委託はまた別の概念である。なおこの制度を導入していなくても、許可を受けたホームヘルプ供給者から自由に選べるのが普通である(ただし自由参入ではない)。
現在、290の市のうち161の市で導入されている。これは市の任意であり、プライマリケアにおける強制的な選択制度の導入と同じではない。さらに導入していない市が76、調査中32、導入を決定した市11、廃止を決定した市が10である。なお特別な住居の分野ではわずか17の市が選択制度を導入しているだけである。

導入分野で一番の多いのが高齢者ケアである。しかし訪問介護を含めた分野で導入しているのはわずか8つの市で、一般的なのは訪問介護を含まない場合で125の市になる。またサービス業務のみに選択制を導入しているが25の市である。他の分野では障がい者ケアがあり、多いのはLSS分野での「(日常生活のための)通いの業務」で28の市で選択制度を導入している。

供給者に対する補償方法もその額も各市ごとに異なる。ホームヘルパーでは大きく分けると4つの方法が存在する。1.認定時間に対する補償、58市、2.行ったサービス時間に対する補償、76市、3.その他、16市、4.不明、8市。また日中1時間のホームヘルプにおける補償費は平均401クローナであるが、289クローナから410クローナと大きな差がある(市によって認定時間か実際に行った時間か、書面での報告あるいは電子化された報告など補償方法が異なるので、比較には注意を要する)。

児童の難民申請

2015年前後の難民急増で、スウェーデンも認定が厳しくなった。その中でも問題となっているのは成人の付き添えなしに難民として来る児童である。これらの児童の中には本国において浮浪児のような生活をしていた子供や、現在の状況を抜け出して欧州で自分の将来を見つけようとする子供もいる。入国管理政策上問題なのは、人数が多いこと、多くの場合身分を証明するものを持っていないので認定に時間がかかること、本国がこれらの子供の受け入れに積極的でないことが多いことなどである。今日の新聞にはいくつかの数字が載っていた(18歳以下であれば、滞在許可が出やすいとの考えから身分証明証を途中で捨てる児童が多いとも言われている)。
1.2015年中に、およそ3万1千人の(成人の付き添えなしの)子供が、2015年11月24日までに難民申請をした。
2.このうち2万8400件に関して認定が行われた。その結果、滞在が認められたのは1万3400人、1万1500人は却下、2700人取り下げ、600件ダブリン条約案件(スウェーデンで認定が行われない)である。
3.1万1500人が却下で、このうち2150人が18歳以下である。7000人は18歳まで認定が延ばされた。2350人は認定が行われた時に18歳を満たしていた。
4.2015年11月24日までに申請をして申請が認められれば、永久滞在証が発行される。

昨日、社民党は環境党は新しい試案を発表した。
1.一時的な難民法を2019年7月まで延長する。
2.2015年11月24日までに申請をして15ヶ月以上待っていた場合、再申請をすることが出来る。これには却下された児童も含むが、犯罪を犯した場合その限りではない。
3.高校で勉強したい場合、それを認める。

スウェーデンにおける#metoo運動

スウェーデンでは#metoo運動は大きな広がりを見せている。2千名近くの女性ミュージシャンがキャンペーンに賛同したのを始め、他にも1300名の政治家、1400名の女性技術者がこのキャンペーンに賛同していて、女性参政権運動以降一番大きな女性運動だと言われている。

以下、英語の記事にリンク。

音楽家

法律家

政治家

劇場など

高齢者ケアの目的

The objective for elderly policy is for elderly people to be able to lead active lives and have influence in society and their own everyday lives, for them to be able to grow old in security and retain their independence, for them to be met with respect and to have access to good health and social care.

Elderly care must meet high standards. Elderly people and their families must be able to feel confident that health and social care is of good quality and that enough staff with appropriate training and experience are available.
(社会省のホームページより)

高齢者ケアは社会サービス法の3つの分野の一つである。これらの分野はsocial careと呼ばれ、social omsorgの英訳である。特に1991年に決定されたエーデル改革以降、vård och omsorgという言葉が使われるようになった(omsorgは社会サービス法、vårdは医療法の言葉である)。英語ではCare and Servicesと呼ばれるが、上記の文章のようにhealth and social careという言葉が使われることもある。70年代後半から言葉の使い方が変遷しているので、注意が必要である。

著者の「スウェーデンの高齢者ケア戦略」(2010年)より引用。
1998年に決定された高齢者国家行動計画(Prop 1997/98:113 Nationell handlingsplan för äldrepolitiken)には、一般的社会保障の原則が述べられている。
「良い社会は連帯を基本に築かれなければならない。すべての人が同じ価値を持つという原則を出発点として、共同で責任を取ることは、社会において人々を結びつける力でもある」
● 必要性
援助は個人の財政、社会的背景、性別あるいは年齢に関わりなく、必要性に応じて配分される。ケアの供給と配分を市場に委ねることはできない。
● 民主制
選ばれた議会によって民主的に決定される。共通の利益にしたがって、ケアを民主的に発展させることは必要である。
● 連帯性
税金でもって連帯的に負担される。略

上の3つの原則を受けて、さらに高齢者ケアの目標が次のように述べられている。
− 高齢者は安心してまた自立を保ったまま老齢を迎えられるべきである。これは財政的安心感、年金の自由選択、自立した生活、住み続けられること、アクセスの改善、社会での安心感を表している。
− 高齢者は社会生活および自分の日常への積極的な参加ができるべきである。個人は、入居者、患者、ホームヘルプの利用者などとして影響力を行使できる。高齢者は市、県自治体、国会において代表がいるべきである。市や県自治体において高齢者団体が決定前のプロセスに参加できる。
− 高齢者は尊敬をもって迎えられなければならない。年齢によって差別されてはならない。個人として対応されなければならない。
− 高齢者は良質の医療ケアおよび社会サービスの利用が可能であるべきである。本人が望む限り、今まで住んでいた住宅にできるだけ長く住み続けられる可能性が与えられる。介護の必要性が大きくなった場合、特別な住居に入居できる。本人の背景や母国語に応じて、介護が与えられる。若年者と同じ条件で、医療が与えられる。個人の必要性、人間の価値、個人の希望、尊厳、自己決定は尊重されなければならない。終末期ケアの質は高くなければならない。不必要に施設間を移動させられるべきでなく、一人で亡くなることがあってはならない。

社会支出

日本では社会保障額あるいは(OECDによるGDP比の公的社会支出率)がよく話題になる。特にマスコミにおいて全体の額あるいはGDP比の割合のみで、この構成および実質の数字はほとんどの話題にならない。OECD統計から各分野ごとの数字を上げてみた。

スクリーンショット

これによると、2013年度のGDP比の公的社会支出は、スウェーデン27.6%、日本23%である。これを見ても分かるように、日本の高齢(年金)および保健医療はOECD平均よりも大きく、公的社会支出率が日本よりも大きいスウェーデンよりも大きい(「高齢」はOECD加盟国で7番目、「保健」は6番目で一番大きいというわけではない)。一方では、厚生労働省統計において福祉その他と名付けられているその他の項目は「遺族」を除いて、OECD平均よりも少ない。たとえば日本の障害などは数字自体は大きくないが、OECD平均の半分、住宅、労働市場では半分以下である(家族政策分野では62%)。日本の社会保障議論においては、「高齢者に手厚い社会保障」と良くいわれるが、どこが高齢者に手厚いのか不明である。日本の高齢化率を考えれば、特に大きい数字ではない。しかし貧困率などから見ると特に手厚いとは言えない。たとえば日本のいわゆる貧困率は16.1%(OECD加盟国で7番目に高い)であるが、65歳以上の高齢者を見ると19%(OECD加盟国で9番目に高い)になる。

また興味があるのは社会支出が現金か、現物かと言うことである。スウェーデンと日本におけるGDP比での現金給付はほぼ同じであるが、現物給付(社会サービス)の方が現金給付よりも大きい(現物給付の割合が50%を越しているのは、チリ、イギリス、アイスランド、韓国、スウェーデン、アメリカで、各国の制度の違いによる)

またもう一つの違いは現金給付の位置づけである。スウェーデンでは生活保護を除いて病気による欠勤、失業手当などの収入に比例した給付は課税されるのが普通である。このため、公的支出に課税分が含まれている。また給付ではなく、税金からの控除という形を取る国もあり、その国際比較には注意を要する。

たとえばスウェーデンの公的社会支出はGDP比で27.4%であるが、課税分などを考慮した純公的社会支出率は22.9%になる。なお日本はそれぞれ23.1%、22.1%である。一般的には高福祉国と呼ばれる国ほど、課税される給付は多い(課税される割合が高いのはデンマーク、フィンランドと続き、スウェーデン4.5ポイント、日本0.9ポイントで、課税される給付が1ポイント以下の国はOECD諸国の中でわずか6ヶ国である。)。

政府が使う三分法(医療、年金、福祉その他)は誤解を生んでいるのではなかろうか。厚生労働省および国立社会保障・人口問題研究所などの分析ではこれらの機能分析が使われているが、他の国との比較は行われていない。OECD統計はかなり前から公表され、日本の社会保障の特徴は「福祉その他」によく現れているにもかかわらず、何が他の国との違いかがほとんど伝えられていない。何か政策的意図があるとは思わないが、結果的に「福祉その他」の内容が軽視されたという意味で、関係部署の責任は重いであろう。

資料)https://data.oecd.org/socialexp/social-spending.htm

春の経済政策法案

 スウェーデンでは秋に来年度予算案、春に経済政策法案兼補正予算案が発表される。特に春の経済政策法案は経済政策の方向性を見る上で非常に重要である。これにはもう一つ重要な報告書が含まれている。所得などの再分配分析書である。この春に公表された再分配分析書に目を通してみた。

 スウェーデンでもジニ係数は増えているが、人口変化によるジニ係数の影響が載っていた。結論から言うと、単身世帯の増加の影響が大きい。ジニ係数増加のおよそ15%が世帯構造の変化による。高齢者の増加は10%の説明要因であるが、高齢者の増加は全体のジニ係数の増加を軽減している(年金制度の結果)。
 外国生まれの住民の増加は就労率が低いおよび失業率が相対的に高いため、ジニ係数変化の5%を説明している(スウェーデンでは統計上、外国籍ではなく外国生まれが使われる)。なお移民者の労働移民から難民への変化自体は、この分析に含まれていない。この結果が正しければ、政策の方向性というものがある程度見えてくる。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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