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福祉における民営化論争

福祉分野など(いわゆる福祉分野、医療、教育)における民営化はスウェーデン政治において一番議論が活発な話題である。今回の選挙を経て、新政権はどの様な方向性を出すか興味が持たれていた。6日、社民党と環境党の政権与党および左翼党はこの問題について合意に達したと発表した。

営利会社の参入は禁止はしないが、原則利益は再投資され、業務に使われる。少額の利益を得ることは禁止されない。
プライマリケアにおける選択の自由制度(選択制度の強制)は廃止される。
これらの種々の問題解決のために委員会を設置し、16年度中に法案を提出したい。

ロフベン首相は「多様性は保持するが、福祉は市場ではない」と述べている。営利団体を禁止するわけではないが、認められる団体とそうでない団体との境界線をどの様に引くかが大きな問題になると思われる。

話は横にそれるが、日本における同様の話題について読んだことがある。内閣府(?)も厚労省も議論が机上論過ぎて、あまりに二者択一的な感じを持った。

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「利益を目的とする会社が病院を運営することを妨げることが良いか」

スウェーデンの政治において、民営化は一番対立が大きい問題であるだけでなく、政治家と国民の間の意見も異なることが世論調査でわかっている。下記の表はヨーテボリ大学政治学科が公表したものである。質問は「利益を目的とする会社が病院を運営することを妨げることが良いか」で、数字は100(良い案である)-0%(悪い案である)である。上から順(左軸)に県の政治家、市の政治家、市民であり、折れ線グラフの頭文字はそれぞれの政党である。
この表を見てわかるのは、M(穏健党)、FP(自由党);KD(キリスト教民主党)、C(中央党)の政権与党の政治家の意見が政党を支持する市民よりもはるかに右寄りであることである。野党の意見は与党ほど異ならないが、V(左翼党)、S(社民党)では、政治家の意見は市民よりも若干左寄りである。


スクリーンショット 2013-12-19

公務員の情報提供の自由

スウェーデンには情報提供の自由に関する法律がある。憲法に相当する出版の自由法にその規定があり、すべての公務員に適用される。一言でいうと、秘密法の規定に触れない限り、公務員がマスコミなどに情報を提供するのは自由であり、行政はその情報源を詮索することは禁止されている。なおその内容は秘密法に触れないという以外何の制限もない。
最近、高齢者ケアのスキャンダルにおいてこの規定を公務員以外に適用する議論があるが、問題は複雑である。まず不適当な介護などに関してはすでにサラ法に規定があり、すべての職員は報告の義務を負う。
いちばん大きな問題は妥当な情報提供の範囲である。たとえば会社の営業秘密を外部に明かすことはできない。しかし職員が何らかの理由によって会社の名誉を傷つければ、解雇することは可能である。介護上の問題を外部に公表した場合(その結果、会社の名誉が傷つけられる)この職員を解雇することが合法かどうか。現在、委員会で情報提供の自由法を民間に適用できるかどうかが審議されており、この11月末までに結論を出す予定である。
なお介護上の問題を外部に公表したことによって、解雇されたという例は聞いたことはない。もしそうなれば、マスコミも政治家も黙ってはいないであろう。

民営化に伴う質の変化

福祉および医療における民営化(正確には民間委託)については、いくつか記事を書いているし、このプログにおいても不定期に書いている。この問題が難しいのは大きく分けて2つの理由がある。
1.福祉、医療における民営化問題は、スウェーデンの政治においていちばん対立の大きい問題であり、様々な意見がある。質の保障ということは言われているが、「必要なのは運営形態の比較ではなく、運営団体間で質の違いがあるかどうかである」ということで、系統的に調査されたことはなかった(社会庁は自主的に評価などを行うが、民営化の比較の問題は問題が大きいために政治的な指示がなければ動けないように思える)。あまりに批判が多いために、政府は去年高齢者ケアにおける公営/民営の比較を初めて行った。結果的には予想されるもので、民営の方が良い面も悪い面もあるので、一概にどちらが良いとも悪いとも言えないということであった。
2.比較の困難さ
比較の方法論的にも困難が伴う。まず何を質に含むかと定義し、これをどの様に計測するかというのがひとつの問題である。たとえば国政レベルでは職員配置基準は数字としては存在しない。その理由として一律的に決めるのは不可能であるという理由である。質というのはもっと多面的なもので、ひとつの指標のみに固持するのは適当ではないという意見も多い。もっと業務の全体像を見据えた総合的な判断が必要とされる。もちろんこのためにその分析、判断が出来る能力および経験を持った職員が必要なのは言うまでもない。またこれらの比較をどの様に紹介し、利用者が参考にできるかということもまたひとつの問題である。なおこれらの調査は地方自治体あるいは国の役目で、部分的に外部委託することはあっても行政機関が調査を行う。日本でよく使われる第三者による調査というものはない。

スピンオフ団体所有者に対して追徴課税

1991年に政権を取った保守政党は民営化を進め、特にストックホルム市においてはスピンオフが勧められた。スピンオフとは職員が市の業務を買い取り運営することである。2006年に政権を取った保守党もこの方針を続けた。ストックホルム市では合わせて24の業務が300万クローナで売られたが、その市場価値は8千万クローナであるといわれている。
数年前に、ストックホルム市のある地区でスピンオフされたホームヘルプ業務が違反だとして行政裁判に訴えられ、最終的に最高行政裁判所が法律違反と認定した。
業務を民間団体に売買する場合は、市場価値によって行わなければならない。しかし市は家具や事務機器などの価値のみを計算してだけだった。新聞記事によると、ホームヘルプ業務の市場価値はおよそ700万クローナであるが、これを7万クローナで売ったということらしい。国税庁は運営団体の所有者が市場価値より安く購入したことにより経済的恩恵を得たと判断、170万クローナの追加課税が行われた。またストックホルム市に対して170万クローナの雇用税支払いが命じられた(市場価値と実際の購入額との差が経済的恩恵と見なされ、支払者側は経済的恩恵に対しては雇用税を国に支払わなければならない)。なお運営者側は国税庁のこの決定を上訴しているので、最終的な結論はまだ不明である。

民営化論争

福祉/教育分野における民営化はいちばん政党間の意見が異なる問題で、特に社民党では歴史的に意見の対立がある。今週、社民党の役員会において、福祉/教育分野における民営化の基本的原則を決定した。
1.効率的な税金の使い方。
営利団体は禁止されないが、質を犠牲にして利益を取ってはならない。
2.多様性の保障。
監査の強化。非営利の強化。
3.税金を使っている分野のオープン性
財政報告の明確化。民間会社における内部告発の保障。

なおこの4月に党大会が開かれるので、議論はさらに続くと思われる。

民営化スキャンダル - その後

去年、民営化スキャンダルが話題になった。その後の変化をまとめてみた。

1.多くの市では、民間供給団体との契約が厳格化され、とりわけ職員配置、手順違反、監査などについては明確化された。
2.市の監査、コントロールが強化された。
3.社会庁では民間供給者と市の運営を比較したが、ほとんど差は存在しなかった(非常に重要なのは、民営あるいは公営かという一般論での比較か、一部の民間業者の問題かである。利益団体およびNPOの区別も必要である。議論が単純な二者択一的な問題になる傾向がある)。
4.社会庁の職員配置基準が2014年から適用される(あくまでも、居住者の必要性に職員配置が適しているということが重要で、このような基準がどの様に機能するか興味があるところである)。
5.リスク・キャピタル会社の税対策について厳格化。
6.福祉分野および教育分野における営利団体の業務に関して、左翼党がいちばん否定的であるが、株式会社そのものには反対していない。環境党と同じように、銀行利子以上の利益を取らない特別な株式会社形態のみを認める案を出している。社民党は党内で意見が分かれていて、来年の党大会においては大きな議題のひとつになると見られる。
7.社会庁監査部(医療および福祉の監査を担当)が来年6月から独立組織に改編。なおこれは今回のスキャンダルとは無関係であるが、国の監査強化の一部である(監査関係部門を独立組織にするのはこの20年の傾向で、すでに教育、社会保険部門の監査が独立化されている)。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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