子供の扶養費

2015年12月現在、22万5千人の子供(の親)が社会保険庁から扶養給付を得ていた。なお扶養給付費の最高額は月に1573クローナである。同時に扶養費の計算が正確に行われるならば、離婚した親からより多くの扶養費が得られると社会保険庁は指摘している。
扶養費の計算方式がアップされていた。数字は月あたりである。なお親の余剰額は個人によって異なる。
子供の必要額 3750クローナ
父親の(生活費を越える)余剰額 17341クローナ
母親の余剰額 7006クローナ
両親の余剰額合計 24347クローナ
養育費 2671=3750x17341/24347

これは母親が父親から得られる養育費は、子供の必要額に両親の余剰額に対する父親の余剰額の割合をかけた額になる。これを元にまず自主的な扶養費支払いの計算をして欲しいということである。

なお扶養給付費最高額1573クローナは社会保険庁によって支払われるが、父親はこの全額あるいは一部を社会保険庁に支払わなければならない。

スウェーデンの社会保障費

日本では社会保障費が過去最大になったというニュースが紙面を賑わしている。このような名目での費用比較は統計上意味がなく、スウェーデンではこのような使い方はされない(国民負担と同じく、なぜ財務省がこのような使い方をするかは理解に苦しむ)。そもそも社会保障費というのは事後統計によってわかり、年度予算において各項目ごとの予算はあるが社会保障費という項目があるわけではない。もちろんそれぞれの項目ごとの給付の増大は予算審議などにおいて議論される。
他のブログに書いたことではあるが、社会保障費などは名目価格での時系比較は行われない、中期では物価変動を考量した実質価格での比較あるいはGDP比の比較が使われる。また失業保険給付費用や傷病給付費用などの社会問題である給付と年金のような社会問題でない給付を同じように扱うことは出来ない。

なお国際的にはOECDの社会保障給付統計が使われるが、EUにおいては類似のESSPROS統計が使われる。また社会保障制度は国ごとにその構造が異なるので、最近では純社会支出という概念が使われることが多くなっている。このため、日本政府が公表している社会保障統計は十分比較の問題を考慮して読む必要がある(過去の社会保障費に関しては国立社会保障・人口問題研究所が公表している)。
ESSPROS統計によれば、2012年のスウェーデンの社会保障費はGDP比で29.9%で、課税されて税金として戻る分が3.5%あるので、これを差し引くと26.4%になる。もちろんESSPROS統計に日本は含まれていないが、OECD統計でも同様の計算が行われている。表面的な社会保障費は話題になるが、このように制度の違いを考慮した純社会保障費はあまり話題になってないような気がする。

給付にカードを利用

先日、大阪市で生活保護の支給およびチェックにカードを利用するというニュースが出ていた。よく似た制度はスウェーデンもあるが、その機能および目的は全く異なっている。

スウェーデンでは生活保護以外の社会保障給付は社会保険庁から行われる(年金の取り扱いは年金庁であるが、給付は社会保険庁から行われる)。生活保護は市の担当で、市が給付を行う。普通、受給者の銀行口座に振り込まれる。このため給付を受けるためには銀行口座が必要である。しかし何らかの理由で銀行口座がない場合はどうするのであろうか。この典型的な例は国の担当である難民申請者である。
難民申請者が施設で生活している場合は食事付きで、1日24クローナ(400円ほど)の小遣いが給付される(施設でない場合は71クローナ)。難民申請者は個人番号がないため、スウェーデンに銀行口座も開けない。このため今までは現金で支給していた。この給付をどの様にして効率化出来るかが話題になっていて、2006年からICAというスーパーマーケット系列のカードを使用している。今年だけで、10万枚のカードを発行するようである。最低条件はICA系列のお店だけでなく、他の店でもカードが使えることで、このためにマスターカードの機能が含まれている。
このカードには名前が記載されていなくて、移民庁の参照番号のみである。移民庁が支給を決定すると、これはオンラインでICAバンクに連絡され、カードの保持者は次の日から暗証番号を使ってこの額が使用可能になる。ICAバンクがカード保持者の個人情報にアクセスできるわけではない。移民庁のみがカードの参照番号に保持者の氏名をリンクできる。もちろんこのカードの使用は給付の簡素化、所持者の便利性であり、移民庁が給付額の使用用途などをチェックする必要性はない。
カードに名前ではなく参照番号のみが載ってるということはもう一つの利点がある。たとえば何らかの保護を必要とする人もこのカードを利用することによって、現住所を知られることはない(スウェーデンでは住民登録情報は公開なので、個人番号によって住所を知ることが出来る。なおカードには個人番号はのっていない)。ヨーテボリ市では何らかの理由によって銀行口座が利用できない人のためにこのカードを使用するというニュースが出ていた。
銀行はこれをビジネスとして行っていて、主な収入源は国が支払うカード発行料および現金を引き出す場合の手数料である。

なお大阪市で話題になっている「指導の必要がある」使用目的などは、スウェーデンでは全く話題になっていない。そもそも生活費を除く住居費などは領収書の提示によって支給される。生活費の額は国で決まっているが、その使用目的は直接チェックされない。たとえば一食減らして賭け事に使うあるいは酒を飲むのは、これが合法である限り市民である生活保護受給者の行動を制限できない。もちろんこの結果、自立した生活に影響することは考えられるが、これは定期的な面会などで助言できることである(例えば酒飲みであれば、酒を断つあるいは減らすコースに行くことが援助として決定される)。

他の記事も読んでみたが、この制度は問題点だらけで、三井住友カードと富士通総研が将来のビジネスにするための実験のような気がする。

社会給付

スウェーデンは就労率80%を目指しているが、このために「Number of full-year persons receiving social assistance and benefits」の時系的変化が分析されている。それぞれの給付の変化のみを追っていては全体の変化がわからないからである。この統計には、市の生活保護、失業基金の失業保険給付、社会保険庁の傷病給付、早期退職給付および労働市場庁の労働市場プログラムの参加者統計が含まれている。なおこの統計の単位は総人数ではなくて、年間人数である。たとえば生活保護を半年、失業保険給付を半年受けていれば、それぞれが0,5人分にあたる。
1990年からこの統計が取られているが、受給者が一番大きかったのは1994年の115万4千人で、これは20-64才人口の22,7%にあたる。その後、受給者数および割合は減少し、2012年現在受給者数80万人、人口比14,4%であり、これは1990年の割合とほぼ同じである。

社会給付
(統計庁資料より)

A swedish tax-benefit simulation model

スウェーデンの個人番号はただ単に「管理」するために使われるのではない。政策の影響予測や評価にも使われる。そのひとつの例はFASIT(A swedish tax-benefit simulation model)と呼ばれるデータベースである。このデータベースは統計庁が家計調査などから作成し、財務省、国会の調査局、他の研究機関が利用する。
このデータベースは毎年およそ200万人の課税情報、社会保険の給付情報などが集められ、課税および給付の条件がプログラム化されている。そして財務省などは例えば住宅手当を月に100クローナ増額すれば、国の負担はいくら増える、各所得者層ごとの可処分所得の変化などの計算ができる。このようにして予算時には政策変更に伴う影響を予測分析することが多い。なお所得情報は確定所得なので2年前の数字であり、ここから数年間の所得の変化も予測される。

統計庁のすべての情報は秘密守護法によって守られていて、特例は研究目的での匿名化された情報である(匿名化された個人情報には通し番号が振られ、統計庁が個人番号と通し番号を結ぶ鍵を持つ)。以前は使用を認められた各研究機関に匿名化された情報をCD/DVDで提供していたが、最近は統計庁のデータベースに直接アクセスするようになった。財務省などの外部の機関はデータベースにアクセスして計算、分析するのみである。またこのデータベースは各年の抽出であり、個人の年ごとの変化を見るものではない。パネル調査のために、統計庁はLINDAと呼ばれる別のデータベースを設置している。

社会保険審議会

失業保険および傷病保険のあり方は話題になることが多く、2010年に新しく審議会が設置された。目的は失業保険および傷病保険のあり方、就労に戻る際の援助、異なった社会保険制度間の協力、国際的な変化の審議、報告である。この審議会は2013年5月までに報告書を出す予定であったが、追加審議と共に期限は2015年まで延長された(多分、延長理由は失業保険の強制加入問題であると思う)。
この審議会は13名の政治家(各政党代表)から構成され、事務局には8名の専門官が入っている。労働組合や経営者連盟などの関係団体の代表は入っていない。審議会のメンバー構成は審議会によって異なるが、政治的対立が大きい問題ほど政治家から構成される場合が多い。もちろん関連団体の意見は別に聞かれる。
なおこれらの審議会は非公開で、発言議事録も存在しない。公開されるのは報告書および分析書であり、すでに2冊の報告書(およそ600ページ)および14冊の分析書を提出している(関連ページからダウンロード可能)。最終報告書において審議会の意見がまとめられるが、他の委員と意見を異にする委員は独自の意見を記することが認められている。なお審議会が報告書を執筆するが、分析書は研究機関などに委託されるのが普通である。

スウェーデンの社会保険制度

スウェーデンの社会保障費

各国とも社会保障費の増加が話題になっている。スウェーデンの社会保障費はEUのESSPROS統計(日本語では社会保護費と訳されている)に統合されていて、日本政府が使っている統計とは内容が若干異なるが、スウェーデンの数字を調べてみた。
スウェーデンの社会保障費は1993年から2011年まで、名目で76%増加した。しかしスウェーデンでは名目での比較は行われない。普通時系的変化を見るためにGDP比を使う。この期間、GDP比では37,3%から29,4%まで減っている。
日本で特に話題になっている医療費(現物給付と現金給付)は、同期間中GDP比で8,3%から7,4%まで減っている。これを現金給付と現物給付でに分けてみると、現物給付は割合ではほとんど変化がないが、現金給付はGDP比で2,1%から1,1%まで減っている。

なお統計上注意しなければならないのは、一部の現金給付は課税されるということである。この結果、医療費の現金給付である傷病による休職保障費は課税されて、およそ25%は税金として再び国庫に戻っている。この結果、負担と給付は二重計算されている。
スウェーデンの社会保障給付費はGDP比で28,9%であるが、課税される分を差し引くとGDP比で25,6%になる。
社会保障費の正確な国際比較をするためには、社会保障費の課税および税控除費用も考慮しなければならない。
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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