スウェーデンの年金制度


スウェーデンの公的年金の特徴。

スクリーンショット 2017-08-01

二階建てから単一年金制度への再編
 従来の年金制度は一律給付の国民基礎年金と所得に比例した国民付加年金から成り立っていた。これが新しい制度においては単一の所得比例年金に再編され、生涯に働いて得た所得によって年金額が決まるようになった。働けば働くほど年金が増えることになり(制限あり)、就労意欲を増やすことができる(将来的には就労する人が増えれば、保障年金が必要な人が減少し、国庫負担は減る)。

給付建て制度から拠出建て制度への転換
 ほとんどすべての国においては、給付水準を先に決定してからそれに必要な財源を確保するための保険料を決定する給付建て制度がとられてきた。この方式によれば運営上のリスクは費用を負担する現役世代が負うことになる。この制度の欠点は経済の低成長および高齢者の増加などの変化によって必要な財源確保が難しくなると、世代間対立を生みやすいことである。スウェーデンではこれを根本的に見直し、まず保険料を決定し、その後保険料総額およびその運用利回りの合計額に応じて給付水準を決定する拠出建て制度に変更した。この方法によれば運営上のリスクは年金受給者が負うことになる。新制度による保険料は18.5%で、このうち16%は賦課方式、2.5%は積み立て方式である。なおこの保険料率は自営業者でも同じである。

積み立て方式の導入
 保険料18.5%のうち16%は賦課方式によって運営される。つまり毎年納められる保険料は、各年の年金給付の財源に充てられる。2.5%は積み立て方式で、国の年金基金あるいは個人の選択する民間の運用機関などにおいて積み立てられる。この積み立て方式による年金分は、実際に積み立てられた保険料及びその利子の合計から保険数理的に計算され、運用の危険は本人が負う。

保障年金の導入
 年金受給額が生涯所得総額によって決まるということは、現役世代に種々の理由により無所得あるいは所得が低い者は、全く年金給付を受けられないか、あるいは低額の年金給付しか受けられないことになる。これらの人にも老後の所得保障を行うため保障年金が設けられた。その財源は租税である。なお保障年金を満額受給するためには、40年の居住が必要である。保障年金の満額は一人あたり7952クローナ(単身)、7093クローナ(夫婦)である。 所得年金がゼロの場合この額が保障され、所得年金が増えるごとに保障年金は減額される。保障年金を受給できる所得年金の最高額は11471クローナ(単身)、10167クローナ(夫婦)である(数字は2017年)。

物価スライド制から経済成長スライド制へ
 今までの制度では、年金額は消費者物価上昇に応じてスライドされ、経済成長はいっさい考慮されていなかった。たとえば経済成長がゼロでも、物価上昇率が2%であれば、年金給付額も(原則として)2%増額された。新しい制度では物価上昇率と実質賃金上昇率を考慮に入れた経済調整指数によって給付額のスライドが行われる。この場合経済の成長率1.6%が将来にわたって継続するとの前提に立って、これが基準値として使われる。たとえば物価上昇率3.1%、実質賃金上昇率1.6%の場合は3.1%(=3.1+1.6-1.6)、物価上昇率3.1%、実質賃金上昇率2.3%の場合は3.8%(=3.1+2.3-1.6)、物価上昇率3.1%、実質賃金上昇率0.6%の場合は2.1%(=3.1+0.6-1.6)のスライドが行われることになる。

年金額
 年金受給開始時の年金額は、積み上げた年金権の総額を除数で割って求められる。この除数は主に平均余命を基礎に算出される係数で、コホートごとに設定される。この結果、世代の平均余命が長くなればなるほど、年間の年金受給額は減ることになる。なお保障年金は物価上昇率を元にした物価基礎額を元に計算される。

社会保障給付受給者の年金権
 傷病手当、両親手当などの社会保障給付も所得と見なされ、国がその所得に対する保険料を納める。

育児期間などの年金権の保障
 新年金制度では生涯収入が年金算定の基礎となるため、育児期間や兵役期間についても年金権が保障される。育児期間中に両親手当を得ている間は、この手当も所得と見なされ年金額算定の対象であるが、所得損失分が全額保障されるわけではない。このため子供が4歳になるまで、一定の計算方式に基づいて年金権が算定され、これに対する保険料は国が支払う。

自動財政均衡メカニズムの導入
 制度の安定化を図るため、さらに「自動財政均衡メカニズム」が導入された。長期的な出生率の減少などにより年金財政が悪化した場合に、あらかじめ決められた計算方法に基づいて、国会の議決なしで自動的に年金額を減らす仕組みである。

年金保険料
 雇用主の年金保険料負担は10,21%、本人負担は7%である。なおこの数字はグロスの所得に対する額なので、合計は18,5%にならない。所得から本人の年金保険料負担を控除した額に対する割合に換算すると、それぞれ11%、7,5%になり、その合計は18,5%になる。

高齢者住宅手当と高齢者生計援助
 高齢者が良い住宅に住めるように、所得および家賃の大きさによって住宅手当が給付される。保障年金を含む年金を考慮しても、妥当な生活費に達しなければ高齢者生計援助費が給付される(たとえば保障年金を満額得られない移民者など)。なおこれらはすべて税金からの出費である。(2004年1月12日記、2017年8月1日追記)

税制度(2009年現在)

所得税には国税と地方税がある。地方税(市の住民税と県民税)は課税所得額(=所得-基礎控除)に平均して約31,52%が課税される。国税は課税所得額が32万8800クロ-ナを越える分について20%課税され、さらに49万5000クロ-ナを越える分について5%課税される。この結果、一般所得者層は地方税のみを支払っている。
間接税として一番大きいのは消費税で普通は25%であるが、特例として食品などが12%、日刊新聞、交通、書籍、文化関係が6%となっている。なお公的教育、医療には消費税はかからない。
雇用主が支払う社会保険料は給与の31,42%で、社会保険の本人負担分は年金の自己負担分7%のみである。なお個人営業の場合の社会保険料は29,71%である。法人税は26,3%。
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Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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