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日本のマスコミはどう報道したか

 選挙の際にはロンドンあたりから特派員が来るのが普通で、英紙の記事からの引用(コピー?)が多いようである。スウェーデンの政治、経済は日本であまり話題にならないで、スウェーデンの政治などは継続的にフォローされてはいない。このため何でもかんでも高福祉高負担に結びつけて報道される傾向がある。今回の選挙結果がどう日本で報道されたか、少し調べてみた。今回は、産経と朝日が記者を送ったようである。(2010年9月20日記、9月21日追記)

(産経新聞)

「4年前に政権に就いた中道右派・穏健党のラインフェルト首相(45)は高福祉高負担を見直し、減税で経済成長を実現、再選を目指している。----- 4党連合を率いる同首相は自由主義経済を導入。今年、国内総生産(GDP)比で4%超の経済成長を実現し、----」(2010年9月18日)

 減税の結果、GDP比の負担率は若干減少しているが、高福祉高負担そのものの見直しは言及されていない。なおスウェーデンは昔から自由主義経済である(いくら産経新聞でもこれはひどすぎる)。 

 「市場経済を重視するラインフェルト首相は総額700億クローナ(約8500億円)の減税を実施し、税収の割合を08年に47・1%まで押し下げた。これが内需を拡大して金融・経済危機を乗り切り、今年GDP比で4・5%の経済成長を実現し、来年には財政を黒字化できる見通しだ」(2010年9月20日)

 産経新聞は少し長い記事を書いている。経済、公的財政の分析は事実関係においては正しいが、90年代からの流れの中で触れるべきである。スウェーデンは90年代後半には公的財政を黒字化し、欧州の中では相対的に良好の経済成長を遂げている。保守政権になってからの話ではない。また保守政権による減税もある程度の内需拡大に効果はあったと推測されるが、これで金融/経済危機を乗り切ったと言えるほど単純ではない。現在、経済好調の最大要因は輸出が好調であることである。また就労人口は増えてはいるが、失業率はまだ高い。また格差も増えている。

 「ストックホルム大のジェニー・マッデスタム博士は「スウェーデンの社会民主主義モデルは曲がり角を迎えた。国民はより多くの所得を求めるようになった。今後、市場主義を取り入れた社会自由主義的傾向がさらに強まるだろう」と分析する」

 博士の意見は興味があるが、少し疑問なのは「社会民主主義モデルの曲がり角ーーーー社会自由主義的傾向」という言葉を使ったのだろうか。例えば、社民党の大敗が「社民党」か「社会民主主義モデル」の問題かである。そもそも「社会民主主義モデル」は歴史的に見ても、常に変化してきた。いわゆる民営化がその典型である。保守政権の中でも微妙に意見が異なり、いわゆる民営化が加速化されたのは90年代以降である。制度的にはこれ以上の大きな変化は考えられないが、民営化の割合は増加することは考えられる。これが社会自由主義的傾向が強まっている言えるかどうか。(この内容が不明なので、インターネットで調べてみた。New York Timesによく似た記事(9月14日)があり、マッデスタム氏の意見が載っているが、ニュアンスが異なる)

(朝日新聞)

「ラインフェルト首相は今後、経済の好調を背景に「高福祉高負担」システムを保ちつつ、減税や規制緩和をすすめる。しかし過半数を確保できず、少数政権となって苦しい国会運営を迫られそうだ。選挙終盤、「右翼とは手を結ばない」と述べていた。スウェーデンは人道主義や労働力確保のため、移民や難民に門戸を広く開いている。だが近年、治安悪化や移民への福祉コストを疑問視する空気が強まっていた。そうした不満の受け皿に右翼政党がなったとみられる」(2010年9月20日)

 減税は正しいが、規制緩和とは何のことをしているのだろうか。後半は異論がある。そもそもEU諸国を除くと労働移民はほとんどいない。大半は難民あるいは家族移民である。治安悪化や移民への福祉コストは、排他主義者が常に話題にするが、これを疑問視する空気は大きくはなっていない。移民者が働いていれば、スウェーデン人から仕事を取ると言われ、失業していれば働かないで福祉で生活していると排他主義者から言われる。なお産経は「高福祉高負担を見直し」と書き、朝日は「高福祉高負担システムを保ちつつ」と書いているのは、興味がある。

(毎日新聞)

「同党は移民が人口940万人の14%に達した同国で、移民受け入れの大幅削減と「イスラム教徒移民の増加はスウェーデンにとって戦後最大の脅威だ」などと訴え、世論調査で4-7%の支持を得ている。スウェーデンの選挙は比例代表制で、議席獲得に必要な得票率は4%。リベラルな国民性で移民にも寛容な同国で極右政党が議席を取れば初めてとなる」(2010年9月19日)

 スウェーデン民主党の支持拡大が焦点になっているが、極右政党が議席を取るのは初めてではない。90年代にも極右というか排他主義的な大衆党が議席を取った。しかし一期で姿を消した。「イスラム教徒」という言葉は、確かに使われているが、どちらかというと「移民/移民者批判」である。言葉の使い方が英語紙の記事に非常によく似ているのが気になる。(2010年9月30日追記)

 
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選挙結果 ー 私的考察

 今回の選挙は世論調査で大接戦が伝えられ、選挙結果にもいくつかの驚きもあった。私的考察をメモ的に書いてみたい。

今回の選挙結果はスウェーデン民主主義の成果である。社民党は1932年からほぼその83%において政権を握っていた(先進国の中で最長である)。今までにも保守政党が政権を取ったことはあったが、二期続いたことはなかった。保守政権が再選されたのは初めてである。この意味において、今回の選挙は歴史的である。

社民党大敗の分析は徐々に行われると思われるが、まず製造業からサービス産業への移行において、中間階層に対する政策が不十分であることが上げられる。例えば家事援助控除の廃止案は不評である。

大敗の原因の一つは環境党、左翼党との協力であるという指摘がある。前回の選挙では社民党に投票したが、今回は他の党に投票した人のうち32%はその理由を左翼党との協力を上げている。さらに26%が原子力問題、37%が家事控除問題を挙げている。社民党は保守政権が導入した家事控除に対して反対である。

社民党は長期的には環境党および左翼党との協力関係を再考するものと思われるが、短期的には協力関係はこのまま続くものと思われる。

右派政権は少数与党になったため、特に環境党との協力を考えているようであるが、個別の問題では協力するが閣内協力あるいは全般的な閣外協力は行われない。環境党の議員数は右派政権の穏健党以外の他の政党よりも多く、閣内協力すれば環境党は第2党になってしまう。一方、環境党にとって、支持だけして大臣の座を得られないというのは考えられず、また多くの分野で右派政権との距離も大きい。このため、スウェーデン民主党の影響力をできるだけ少なくするため、個別の問題で協力して多数決を得る方法を取るものと思われる。

今回の選挙で排他主義を掲げているスウェーデン民主党が始めて議席を取った。世論調査によると、特に排他主義あるいは移民問題が大きな問題であると思う人の割合が増えているのではないため、これは主には不満票であると思われる。

スウェーデン民主党の国会議席獲得によって、国会運営は複雑になると思われるが、スウェーデン民主党の影響力を少なくするために、各党が知恵を絞るものと思われる。すでに国会の各委員会の人数、配分が議論されている。

既成政党がスウェーデン民主党と協力するあるいはデンマークのように移民政策が根本的に変化するとは考えにくい。反対に各政党の反排他政策は強化されると思われる。選挙報道番組において左翼党の党首は化粧室でスウェーデン民主党の党首と同席したくないと言ってすでに「闘い」は始まった。19日未明に、17歳の女性がfacebookを通して呼びかけ、すでに20日午後には7000人がスウェーデン民主党の議席獲得に対してデモを行った。

社民党の元青年部部長が報道番組において、スウェーデン民主党の躍進の原因としてブロック政治の強化を上げていたのは興味のある意見である。前回の選挙後、右派および左派ブロックとして国会運営が行われたのでブロックを超えた政党協力が少なくなった。この結果、各ブロックの政治に不満な住民の票がスウェーデン民主党に流れたというものである(スウェーデンは右および左の政治イデオロギーによる行動が強く、他の国のように中央/地方、環境、民族問題などが大きい要因になったことはない)。

スウェーデン放送の調査によると、今回初めて投票をする青少年の左翼党および環境党支持は平均よりも高いが、社民党支持はほぼ同じ、穏健党支持が平均よりも低いことは少し驚きである。同様にして、政治家に対する信頼性は90年代後半から増え、今回さらに増えている。これは90年代の不況および現在の金融危機を乗り越えたことと関連があるように思える。なおスウェーデン民主党支持者に特徴的なのは、政治家/政治に対する信頼性が非常に低いことである。各政党支持者の政治イデオロギー上の自己認識によれば、政党間距離が増えた(穏健党を除く)。左派ブロックはさらに左寄りになり、右派ブロックはさらに右寄りになった。特に環境党支持者は、この20年間大きく左に寄った。なおこの調査はいわゆる出口調査である。
スウェーデン放送の調査によると、次の分野が重要だと思われている(大きい順に)。1.教育、2.就労、3.経済、4.医療、5.福祉、6.自分の家計、7.高齢者ケア、8.保育、9.男女平等、10.環境などで、下記の世論調査と少し異なる。(2010年9月20日記、9月30日追記)

選挙日当日

 ついに審判の日がやってきた。著者も投票に行ってきた。

近くの学校が投票所になる。投票所の前で投票用紙を配っているのは各政党の運動員である。ここでは4つの投票区の選挙が行われ、それぞれ部屋が別れている。
投票所内には、投票の仕方が書かれていて、職員が案内などをしている。なおこれらの職員はすべてボランティアに近い市民である。

先ず投票所に入ると、各政党の投票用紙が置かれてあり、投票したい政党の用紙を取る。そして投票用封筒をもらう。著者の場合は、地方自治体のみなので2枚である。投票用紙をそれぞれの封筒に入れて、選挙管理人に差し出す。一人の選挙管理人はこれらの封筒をそれぞれの投票箱の上に置く。もう一人の職員は投票権カードおよび身分証明書で本人確認をして、これを有権者名簿に書き入れる。これに基づいて管理人は投票箱の上に置かれた封筒を選挙箱に入れる。本人が直接投票箱に用紙を入れるのではない。


投票所

投票所

投票

投票の仕方

投票用紙

三種類の投票用紙、投票権カード、投票用封筒


 

選挙運動

選挙公約
選挙運動が始まる前から、各政党あるいは各ブロックは選挙公約を公表、選挙が近づくにつれ、公約内容も詳細になってくる。以下、新聞記事から各ブロックの公約をまとめてみた。なおスウェーデンが90年代初頭の経済危機から学んだことは、公的財政の健全な運営が必要不可欠ということで、これは両ブロックの共通した認識である(どこかの国とは異なる)。

左派ブロック
295億クローナの減税。レストランなどにおける消費税減税、高齢者減税など。
332億クローナの増税。ガソリン税、所得税、財産税など。
就学手当の増額、大学定員増加、義務教育7年からの成績表。
民間医療会社の自由開業制度廃止、幼児、高齢者の家庭訪問のためのドクターカーの導入、19歳から24歳までの歯科医療の無料化。
10万人の就労増加、実習制度の拡充、雇用保障の強化、失業中の青少年のために雇用税(社会保険料)の廃止。
夫婦で施設(特別な住居)に入居できる権利保障の導入。
幼稚園において、最低園児5人に対して職員1名とする。最高負担額の減額、時間外の保育の可能性、母子家庭の援助強化。
傷病休暇における最高日数廃止、傷病休暇手当の最高額増加(長期的には、すべての人が所得の80%が保障されるようにする)、失業保険給付の強化

右派ブロック
267億クローナの減税。レストランなどにおける消費税減税、高齢者減税、5回目の就労所得減税など。
20億クローナの増税。アルコール税、たばこ税など。
新しい教育指導要綱、義務教育6年からの成績表、低学年における授業時間の増加。
医療における患者安全の強化、歯科医療改革、待機期間減少プロジェクトの発展、救急医療における待機時間の減少。
69歳までの雇用保障、見習い制度の導入。
夫婦で施設(特別な住居)に入居できる権利保障。自由選択制度の拡充。
社会保険制度について調査、失業保険制度の強制化への方向付け
有子家庭のための住宅手当強化。(2010年9月5日記、9月15日追記)

選挙運動
 スウェーデンではいつから選挙運動が始まるという規定はないが、選挙年の8月になると選挙運動も活発化する。新聞やテレビでは党首討論、党首質問、討論会が連日行われ、各政党も支持者を増やすために公約を発表したりする。特に、保守系ブロックだけではなく、政権獲得の折には連立政権を組むと公約している革新派ブロック(社民党、左翼党、環境党)も党首が共に公約などを発表することが増えている。これによって、二大ブロックの選択というイデオロギー選挙の重要性が増した。選挙を前にして、各政党では各分野の政策、公約を発表、マスコミも政策ごとの違いを載せたりする。なおスウェーデンの選挙は、立候補者個人に投票する可能性もあるが、政党に投票するのが基本なので、立候補者個人よりも政策の特徴、違いが優先される。なお今日(8月30日)、著者の所にも選挙権カードが郵送されてきた。著者は日本籍なので、市議会と県議会の選挙権である。(2010年8月31日記)

 選挙まで2週間を残すのみとなったこの頃、各新聞では世論調査の公表、公約の分析、比較などが続き、テレビでは党首討論、質問などがほぼ連日行われている。今日(9月6日)の新聞に、国民が考える重要な政策課題が載っていた。次の分野が重要だと思われている(大きい順に)。1.失業/就労、2.医療、3.教育、4.高齢者ケア、5.幼児保育、6.高齢者の経済的条件、税金、8.環境、9.スウェーデン経済/成長、家族政策などである。重要分野は2006年の選挙とほぼ同じである。この数ヶ月間では、環境および社会保険の重要さは減り、就労問題がさらに重要さを増している。以外だったのは、経済の好調予測に応じて、スウェーデン経済の重要性が相対的に減っていることである。公約を見てみると、高齢者減税、学校における成績表などのように、両ブロックの政策の違いが少なくなっている分野がある反面、財産税の再導入、社会保険給付の水準、民営化、就労政策など考え方の違いによる政策の違いも徐々に明らかになってきた。(2010年9月7日追記)

スウェーデンでは公文書公開制度が発達していて、この制度を一番利用するのはマスコミである。各政党の立候補者リスト(国会)にはおよそ5000人が上げられていて(この中から349人が選ばれることになる)、DN紙はすべての立候補者の調査を行った。もっとも若い立候補者は18歳、立候補者の中で女性の割合が一番低いのは穏健党で41%、高いのは左翼党51%である。平均年齢が一番低いのは社民党で44歳である。平均年収が一番低いのは環境党で28万1000クローナ(2009年)、一軒家に住んでいる割合が一番高いのはキリスト教民主党で62%、大学以上の教育を受けている割合が一番高いのは環境党で76%である。党首への質問および党首討論は何回となく行われてきたが、選挙運動の最後を締めくくる党首討論が17日金曜日の夜にスウェーデン放送にて行われた。一部白熱した議論もあったが、政策討論はこれが最後である。(2010年9月19日追記)


立て看板

選挙に燃えているストックホルム。街路には各政党の選挙ポスターが張り出されている。党代表の写真/公約が載ることが多い。

小屋

広場には各政党の選挙小屋ができ、市民からの質問などに答えている。写真は社民党の小屋(候補者ごとではない)である。


プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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