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スウェーデン経済をどう分析するか

最近、スウェーデン経済についていくつかの日本語記事を読む機会があった。高福祉高負担政策、積極的労働市場政策、連帯賃金政策などが話題に上がっているが、十分時代考察がされていないような気がする。スウェーデンも常に経済が順調だったわけではない。とりわけ、スウェーデンのような小国はグローバル化された世界にあっては、他の国の影響を受けやすい。このため、長期的および短期的な分析が必要とされる。

 いわゆるスウェーデンモデルという観点からは、90年代初頭の不況の前後では大きく状況が異なる。50年代から70年代中頃までがスウェーデンの黄金期で、いわゆるレーン・マイドナーモデルが有名である。これは連帯賃金政策と積極的労働市場政策の政策リンケージで、経済の効率化を進める一方で、積極的に労働(者)を成長分野るいは効率性の高い分野に移すというものである。

 しかし70年代後半期から80年代初頭にはオイルショックの影響を受けて、経済は不安定になった。しかし失業率は低く、積極的労働市場政策も相対的には機能していた。これが変わったのは90年代である。90年代初頭にはマイナス成長が3年間続き、公的財政の赤字も急増した。しかしその後、短期間の間に財政バランスを黒字に変え、実質成長率が4%を超える年もあった。にもかかわらず、十分な雇用増加に結びつかなかった。

 このため、最近10年間の積極的労働市場政策の可能性と限界が議論されるようになった。一方では、連帯賃金政策に対して産業界の一部には反対もあるが、全体的には大きな合意がある。またスウェーデン政府は以前から自由貿易主義を掲げ、保護主義には反対である。この結果として、繊維産業や造船のように中および長期的に見て将来性のない産業、分野に補助金などを与えて維持するという政策は現保守政権でも取られていない。かわりに知識産業などに重点が置かれるようになっている。またグローバル化の影響を受けて、スウェーデンの労働市場における雇用保障政策も大きく議論がされている。たとえば保守党や経済界などは雇用が十分増えないのは雇用保障が厳しすぎるからだと主張しているが、左派ブロックは雇用保障が原因ではないと言っている。

 大きな変更があったのは、2006年の保守政権後である。保守政権は従来の積極的労働市場政策に対して批判的で、たとえば労働市場プラグラムは2007年にはほぼ半減した。2010年には2006年度の参加者数を超すと見られるが、積極的労働市場政策に批判的であった保守政権が以前とあまり変わらないプログラムを取り始めているのは政治的には興味のある現象である。ただこれらのプログラムに問題が多いことも事実で、最近では行政監査庁が批判を行った。同様にして失業保険の条件が厳しくなり給付額も減額および保険料が増額された。また保守政権は2007年から数回にわたり、就労所得減税を行った。これは就労所得がある人のみが対象で、失業保険給付その他の給付で生活している人は含まれない。保守政権のこれらの政策は就労意欲などを増やすことを目的としていると言われるが、その理論および政策に対して疑問も多い(同じような議論は90年代に生活保護について行われた記憶がある。経済学では給付を減らすなどの政策による労働者の行動変化が前提とされることがあるが、これは十分証明されておらず、また部分的な証明があっても状況および制度が異なるイギリス、アメリカの例であることが多い。このためこれらの仮定に基づいた政策がどこまでスウェーデンにおいても有効かは疑問である)。

 スウェーデン経済が分析される時、公務員の割合の高さが良く話題に上がる。先日読んだ日本の新聞で、ある有名な経済評論家は公務員が多いことを「歪んでいる」と表現していた。「歪んでいる」かの判断はともかくとして、この評論家はあまりその内容を知っているようではなかった。スウェーデンの公務員が多いのは、教育、医療、福祉などが主に公的に運営されているからであり、60年代から70年代にかけて急増した。その後、90年代には減少、この10年間は大きな変化はない。(2009年9月21日記、2010年12月26日追記)


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北欧はここまでやる

 週刊東洋経済1月12月号(7日発行)で北欧特集がされている。福祉と経済についていろいろな記事を目にしてきたが、今まではあまり感心できるような記事はなかった。この特集に私も記事を一つ書いているが、正直言ってどの様な特集になるのか危惧感もあった。今日日本から雑誌が送られてきて、内容に目を通した。話題は広く集められているが、所々誇張や簡素化のため誤解を与えているところも見受けられる。この記事のように広く浅く書くとなれば、それぞれの記事は簡単にならざるを得ない。また日本での議論から「格差なき成長」という言葉を使っていると想像されるが、格差がないわけではなく反対に格差は増えている。ただ他の国に比べて相対的に格差は少ない(最新のOECD報告書によると、スウェーデンとデンマークは加盟国の中で一番不平等度が少ない)。

 あえて、気になった点をいくつか上げる。国民負担率はGDP比であると書いておきながら、数字は国民所得比のようである。原典はOECDとなっているが、OECDの数字はGDP比である。他には公務員の割合がある。就労人口に占める公務員の割合は80年代の中頃30%強まで増加し、その後減少している。90年代に急に増加したわけではない(就労統計はパートあるいは時給の取り扱いをどうするかにもよるが、方法論的問題はここでは触れない。なお90年代数年間の増加は公務員数が増加したのではなく、不況により私的部門の就労者が減少したために、公務員の割合が一時的に増加したものである)。経済誌であるならば、もうすこし公務員の割合が大きいということの内容およびその影響の分析が望まれる。

 高齢者ケアも誤解の多い分野である。「施設から自宅介護へ。これがスウェーデンにおける高齢者ケアの大きな流れだ」(48ページ)と書かれているが、これも誤解を与える言葉で、私も以前からこのことを指摘していた。減っているのは一番一般住宅に近いサービスハウスである。これは決して、「高齢者の自己決定権や残存能力の活用を重視している結果」ではなく、この20年近くの施設の変化を理解していない文章である。

 ここまで書いてから、高齢者ケアの記事におかしなところがいくつもあるのがわかった。訪問市はスンドビュベリ市らしいが、この市の人口はおよそ3万5千人で、高齢化率は13,75%でストックホルム県で10番目である。記事にあるように人口2万5千人、高齢者が多い市ではない。他におかしいのは、記事に書かれているホームヘルプの料金表である。高すぎるのである。市のホームページで調べてみた。記事に料金表として載っているのは、市のホームヘルプに対する予算配分表で料金表ではない(なぜ利用料金表を載せなかったのか不思議である)。スウェーデンの高齢者ケア運営の基本的な仕組みが理解されてないようである。なお蛇足ながら、この市の高齢者ケアはスウェーデンで一番満足度が低いという調査結果が発表され、市の高齢者ケア部長は辞職した(編集部は調査時においてこれは知らなかったかもしれないが)。(2008年1月8日記、2010年12月25日追記)
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Author:Taro
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