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生活保護の申請

日本では生活保護申請の厳格化が話題になっているようである。スウェーデンではどうか調べてみた。
まず、社会サービス法において申請は必ず書面にて行われなければならないとは書かれていない。口頭での申請も可能である。しかし福祉事務所は申請内容のチェックを行う必要がある。このために最初の会合で提出する書類リストおよび申請書が前もって送られる。そして申請書にサインすることによって、申請者は申請内容に間違いはないこと、福祉事務所が他の公的機関から必要な情報を得ることを認める。
もし申請者が必要な情報/書類を提供しないあるいは他の行政機関とコンタクトすることを拒否するならば、福祉事務所は生活保護の申請を却下すべきであると、社会庁のガイドラインは述べている。

なお社会サービス法の適用はあくまで市が判断して行うもので、法律および社会庁の政令は守らなければならないが、市の判断責任から逃れられるものではない。社会庁の生活保護ガイドラインもそのような観点から書かれている。
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ウェルフェアか社会サービスか

最近、日本のある人からスウェーデンでは福祉という言葉はもう使われない。使われるのは社会サービスであるという説明を聞いた。この表現は初めてではなく、15年ほど前にも聞いたことがあるが間違いである。日本語あるいは英語の社会サービスに近い言葉としては、「ウェルフェアサービス(välfärdstjänster)」が使われる。スウェーデン語で社会サービスというのは社会サービス法による業務で、高齢者ケア、障害者ケア、生活保護などをさし、医療、教育などは含まない。
この表現はどの様にして出来たか調べてはいるが、引用先が書かれていないのでまだ詳細は不明である(ある人が言い出し、そして他の人がこれを引用して広まるというのは考えられることである)。

EU諸国からのホームレス

この数年、外国人のホームレスが話題になっている。これは拡大EUと共にEU諸国から移動が自由になったためで、東欧からのホームレスあるいは物乞いを通りで見かけることが増えた。
このたび、社会庁が外国人のホームレス調査を行った。これによると、全国で他のEU諸国からのホームレスがおよそ370名存在し、その80%は男性である。大部分は外で寝るか車、テントあるいはキャンピングカーで寝ている。出身はルーマニアが一番多く、次にポーランド、スペインで、本国における失業から逃れて来るらしい。一部は一時的な仕事を得ているようであるが、ほとんどは浮浪者として市内で物乞いをしている。ホームレスのほとんどは食事、衣服などの一時的な援助をNPO団体から受けてはいるが、根本的な対策は見つかってないようである(EUでは、ルーマニアなどが物乞いを「輸出」しないよう補助金を出しているが、十分機能してないようである)。
問題点のひとつは、物乞いが自由意志で行われる限り、これは法律違反ではないということと、スウェーデンでの滞在が短期間であることが多く、居住者ではないので社会の援助を受けられないことである。
なおロマ人(ジプシー)が騙されて物乞いをさせられているという噂もあるが、真偽のほどは不明である(現在、一人のロマ人の訴えに従って、警察が調査を行っている)。

青少年の失業率

青少年の失業率は政治的に常に話題になっている。しかし正確に理解がされているとは言えない。例えば青少年の失業率が25%であるということは、青少年の25%が失業しているということを意味していない。正確には、青少年労働力の25%が失業中である。つまり働いていないか求職もしていない学生は労働力に含まれない。2011年の15-24才の青少年の失業率はおよそ23%であった。これを15-24才の青少年全員に比較すれば、12%が失業中である。

スウェーデンの青少年(15-24才)の失業率は23%(2011年)であり、これはほぼEU平均(21%)に近い。ギリシャ、スペインでは44-46%の失業率であるが、ドイツ、ノルウェー、オーストリアは8-9%である。
青少年の失業率は国によって大きな違いがあり、特に15-19才の青少年および学生の間での違いが大きい。この違いのひとつの原因は見習いあるいは徒弟の取り扱いである。例えばドイツでは、15-24才の学生の4分の1は見習いあるいは徒弟制度によって就労として扱われ給与を得る。しかしスウェーデンでは見習い制度に参加している生徒はわずか0,5%である。この結果、学生の失業率はドイツ13%、スウェーデン32%と差が出てくる。
2番目の問題は学生のための奨学金制度である。例えばデンマークでは奨学金は12ヶ月支払われるが、スウェーデンでは9ヶ月である。このためスウェーデンでは夏の間働くことが前提で、もし求職中であれば失業者としてカウントされる。

このため、青少年の状況を見るには、NEET(Not in employment, education or training)の数字の方が適当であるという意見も多い。2011年、EU平均の割合は13%(15-24才)であるが、フランス12%、ドイツ8%、スウェーデン8%である。なおいちばんニートの割合が高いのはブルガリア22%、いちばん低いのはオランダ4%である。

2013年6月6日一部訂正、追加した。

青少年の暴動

スウェーデンにおける暴動が日本でも話題になっているが、マスコミに書かれているほど単純な話ではない。今日、朝日新聞にストックホルム発のロイター電の記事が載っていた。以前の記事に比べて相対的に正確であるが、異論がある部分も存在する。
まず今回の騒動の原因は複雑であり、聞く人によって意見は異なる。左翼系の団体は社会問題と警察の対応を批判するが、特に警察の対応に問題があったかどうかまだ不明である(問題点は、投石される中での排除行為という状況で、必要以上の手荒い対応をしたかどうかである)。刃物を持った男性が警官に手向かい、射殺されたことが原因であるという意見もあるが、これに関しては調査委員会が設置されている。

一般的な背景要因と特殊要因を区別することが必要である。
騒動の直接的な原因でないにしても、背景要因は青少年層の社会に対する不満であると思う。特に騒動が起こった地区は失業率も高い(青少年失業率についてはここを参照)。特にこの地区でおいては学校にも行かず働いてもいない青少年が多い。一般的に義務教育しか出ていないあるいは高校中退の青少年は職を得ることが難しい。もちろん差別もあるかも知れないが、これがいちばん大きな問題かどうか。
新聞記事には、すでに逮捕された青少年の背景分析が載っていた。これらの青少年は麻薬、窃盗などの犯罪歴があり、警察にはよく知られていたらしい。また家族との関係が悪く、バガボンド的な生活をしている青少年もいるらしい。また写真を見ていて気になったのは黒の衣装で黒のマスクをしている青少年の群れである。暴動の際にはよく現れるグループで、どの様なグループかは知らないが、以前ヨーテボリでのEU会議の際に暴動の中心的な役割を担ったのはこのグループである(アナーキスト/極左集団だといわれている)。今回もこれらのグループの組織的行動が市民パトロールによって報告されている(これは日本のどの新聞にも引用されていないようである)。
この事件はまだ終わってはいないが、青少年(特に貧困層)の社会に対する不満という一般的な背景の中で、一部の青少年あるいは青年グループが暴動を扇動したような気がする。警察によると、暴動に参加した青少年は地域に住んでいる青少年、犯罪を犯した不良グループ、職業活動家に分けられるようである。

なお前記の記事の中で、誤解を招くようなコメントがある。
「「反移民」を唱えるスウェーデン民主党の躍進は、同国民の意見を二極化させてきた」
スウェーデン民主党の役割は過小評価も過大評価もすべきではない。前回の選挙でこの党の得票率は5,7%であり、移民者あるいは難民に対して世論が厳しくなっているわけではない。スウェーデン民主党と他の政党との違いはこれを移民問題として捉えるか階層/格差問題として捉えるかである。
「深夜にストックホルム中心部を出発する列車は、単純労働を終えて帰宅するアラビア語やスペイン語を話す移民であふれている」
外国背景のある住民が20%いる国なので、列車で他の国の言葉を聞くのは珍しいことではないし、どの路線に乗るかによっても異なる。
「スウェーデンが2012年に受け入れた難民申請者は4万3900人。前年から50%近く増え、過去2番目に最も多い人数となった。---- 難民申請者は、短期的には社会保障制度の財政負担となる。OECDのデータによると、外国出身者の失業率が16%であるのに対し、スウェーデンで生まれた国民の失業率は6%。同国が充実した福祉制度を維持するには高水準の就業率が不可欠となる」
2011年の難民申請者数は2万3千人、2012年は4万4千人である。しかしこれらの申請者がすべて認められるわけではない。2011年に認められたのは1万2千人であり、シリア、アフガニスタン、ソマリアが多い。もちろん移民者も含めて高水準の就業率は不可欠で、この問題が統合政策の一番重要な点である。

「しかし一方で、同国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、格差が最も急速に拡大している国でもある」
これは事実であるが、先進国の中では依然として格差が少ない国の一つである。たとえば2008年ジニ係数は0,26(OECD平均は0,31)である。なお日本は0,32(2006年頃)で、OECD平均よりも格差は大きい。

Inequality-sweden.jpg
OECD (2011), Divided We Stand: Why Inequality Keeps Risingより


可処分所得は1991年から2011年まで39%上昇しているが、年齢層によって大きな違いがある。特に20才から24才の単身者の可処分所得は1991年から微増しているだけである(単身女性の場合1%、単身男性の場合5%、子供がいない二人家族の場合10%)。言い換えるならば、国民一般の可処分所得は1999年には1991年のレベルに回復しているが、20-24才の男性は2007年、20-24才の女性は2011年に1999年のレベルまで回復した。統計庁資料より。

移民者とは誰か?

スウェーデンでは90年代から移民者という言葉の使い方に疑問が出されていた。外国籍か、外国生まれか。スウェーデン生まれの第2世代も含むのか。このため、現在では政府文章などにおいては移民者という言葉の使用は減り、外国生まれという言葉が使われることが多い。
外国籍の居住者は1960年代および2000年代に増えたが、外国生まれで見ると、1960年代から継続的にに増えている。つまり帰化した人が増えたことである。この間、出身国も大きな変化があった。60年代は労働移民が多く、フィンランド、ユーゴスラビア、イタリアなどが多かった。90年代になると、移民のカテゴリーは難民および家族呼び寄せと変わった。移民の理由で一番多いのが家族の呼び寄せで、次に亡命/難民、就労、留学と続く。

住民登録法による移民者とは海外から住民登録変更をした人をさし、国籍とは関係がない(最低1年間の居住を目的とし、許可書を持っていること。ただし北欧諸国の住民は許可を必要としない)。このため移民者のおおよそ20%がスウェーデン国籍者で、一時的に海外で働いたあるいは就学していた人であろうと思われる。なお2番目から、シリア、アフガニスタン、ソマリア、ポーランド、イラク、デンマーク、中国、タイ、フィンランドの順である(2012年の数字)。

2012年12月末現在、外国籍の居住者は住民全体の7%である。外国生まれの居住者の割合は15,4%になり、一般的に移民者と呼ばれる場合はこの数字が使われることが多い。一番大きいグループはフィンランド生まれで、およそ16万人である。2位以下は順に、イラク、ポーランド、ユーゴスラビア、イラン、ボスニア/ヘルツェゴビナ、ドイツ、トルコ、デンマーク、ソマリア、ノルウェーである。なお外国の背景がある居住者(外国生まれ+外国生まれの両親からスウェーデンで生まれた子供)の割合はおよそ20%である。

スウェーデンの難民受け入れ

Immigration and emigration 1960-2012 and forecast 2013-2060
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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