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社民党の勝利?


2010年の選挙と比べた得票率と議席数の変化

得票率


日本のマスコミでは今回の選挙を「増税を掲げ、福祉国家の再建を訴えた中道左派の野党が勝利した」という表現を使っている記事が多い。しかし少し書き過ぎのような気がする。社民党党首が首相になるとみられているので、中道左派あるいは革新ブロックが勝利したと表現されているが、革新ブロックは得票率ではほぼ前回と同じ、議席数では3議席の増加である。一番大きな変化は穏健党の惨敗で、得票率では6.74ポイント減り、議席数では23議席の減少である。これに対して支持が増加したのは極右であるスウェーデン民主党で、得票率では7.16ポイント、議席数では29議席、ほぼ倍増している。また穏健党以外にも自由党やキリスト教民主党が1ポイント以上、得票率を減らしている。
革新ブロックの得票率が増えたので「勝利した」のではなく、保守中道ブロックの得票率が減少した結果、革新ブロックの得票率が保守中道ブロックを上回った。そして極右であるスウェーデン民主党が得票率をほぼ倍増させた(たとえばスウェーデン民主党の得票のうちおよそ3割は前回の選挙で穏健党に投票している)。このように革新ブロックの支持は増えたわけではないが、出口調査によると国民の平均的な政治的ポジション度は以前の選挙時よりも若干左寄りになった。

社民党を中心とした少数与党内閣になるとみられているが、政策の内容はまだ不明である。スウェーデン民主党の影響を避けるため保守党の支持も必要で、社民党の法人税やレストランの消費税などの増税案がどの様になるかまだ不明である。組閣してからの第一の関門は来年度の予算案である。

上記に述べたように「福祉国家の再建」あるいは「福祉の再建」という言葉がよく使われている。社民党と保守党では民営化など根本的な意見の違いがある分野も存在するが、どの政党が政権についても効率的な運営を行わなければならない。たとえば失業保険制度の厳格化は効率的な運営が目的で、単純に悪化とは言い切れない。社会状況も変化しているので、それぞれの対策も変化せざるを得ない。このような状況の中で、「悪化」、「再建」という言葉を使うのであれば、もう少し詳しい分析が必要である。あまりに単純に高福祉高負担という言葉を使っているように思う。
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投票率の増加

スウェーデンの投票率は相対的に高く、国政選挙で今まで一番高かったのは1976年、91,8%である。その後、投票率は徐々に減少した。2002年には80,1%まで減少し、民主主義の危機だと話題になったが、その後、投票率は82%(2006年)、84,6%(2010年)、85,8%(2014年)と毎回増加している。
1956年から統計庁とヨーテボリ大学政治学科によって、標本調査による選挙の特別調査が行われている。この調査結果によると、18歳から24歳の投票率は69,9%(2002年)から79%(2010年)まで回復し、回復幅が一番大きい。投票率回復の原因は推測するしかないが、すでに2000年頃から政治あるいは政治家に対する信頼性が増えていることが指摘されている。


国政選挙における投票率の変化(1911-2010年)、%
valdeltagande

選挙、その後

2014/09/18
今日の新聞によれば、スウェーデン民主党は第三政党として副議長の席を要求しているそうである。9月29日に国会議長などが選ばれるが、一騒動あるような気がする。
ストックホルム市における穏健党の大敗を受けて、穏健党の財務コミショナー(市長役)がコミショナー役を辞職することを表明。ただし市会議員としては残る。

2014/09/19
国会の議席配分が決定。住宅大臣Stefan Attefall氏、高齢者ケア大臣Maria Larsson氏(両氏ともキリスト教民主党)、穏健党幹事長Kent Persson氏が議席を失う。他にも中央党のIT担当大臣、自由党幹事長なども議席を失う。

2014/09/20

国会議員
(平均所得2013年というのは課税年度を表し、対象は2012年度の所得である)

当選者リストが発表され、これにもとづいて日刊紙SvDは平均年齢や平均収入などを調査した。これによると、平均収入が一番高いのは自由党で、2012年の平均収入は91万5千クローナである。反対に一番平均収入が低いのはスウェーデン民主党で52万1千クローナである。同様にして平均年齢が一番低いのはスウェーデン民主党39歳、一番高いのは社民党47歳である。また女性の割合が一番高いのは左翼党57%、低いのはスウェーデン民主党22%である。国会議員の平均年齢はおよそ45歳になるが、これは前回選挙よりも2歳若い。

2014/09/25
穏健党は、大敗により政党補助金も減額される。このため党本部職員およそ55名の解雇が計画されているようである。

2014/09/27
29日に国会議長が選ばれ、10月2日首相の選挙そして3日に各大臣の紹介が行われる予定のようである。現在の報道では社民党と環境党の少数内閣になるようである。

悲しきためいき

1976年10月から1978年3月まで放映された『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』で、キャンディーズは「美しき伝説」と「目覚めれば秋」の主演を務めていた。「美しき伝説」はバレーボールを、「目覚めれば秋」は柔道を題材としている。そしてそれぞれ「卒業」、「悲しきためいき」がテーマ曲であった。1975年4月にリリースされた「悲しきためいき」は隠れた名曲でもあり、シングルカットされていたならばもっと一般に知られたと思われる。個人的にも好きな曲の一つである(ハーモニーが美しい)。


「悲しきためいき」 作詞:山上路夫 作曲:宮川泰 編曲:竜崎孝路



音源は1976年10月11日蔵前国技館における『キャンディーズ10000人コンサート』。動画は同じコンサートであるが、この歌を歌っている場面ではない。

選挙2014

選挙結果

17日水曜日は海外投票および市外での事前投票の開票が行われている。19時現在以下の結果が選挙庁のホームページで公表されている。


スクリーンショット 2014-09-17


左翼ブロック(S+V+MP)が43.6%、保守ブロック(M+C+FP+KD) が39.4%、極右(SD)が12.9%である。なおフェミニスト党(FI)は最低得票率4%を得ることができなかったので、国会に議席を得ることが出来ない。現時点での議席配分は左翼ブロック158議席、保守ブロック142議席、スウェーデン民主党(極右)が49議席になる。全議席数は349議席なので、社民党を中心とする左翼ブロックは過半数には届かない。なお現時点における国会の投票率は85.7%で、前回の選挙に比べて1.2ポイント増加した。

この選挙は2つの特徴がある。第1は政権与党である穏健党の大敗で、第2は極右であるスウェーデン民主党の躍進である。穏健党は前回の選挙より6.8ポイントも得票率を減少させた。そしてスウェーデン民主党は前回よりも7.2ポイントも得票率を増やし、得票をほぼ倍増させた。社民党の得票率は前回とほぼ同じである。興味があるのはスウェーデン民主党の得票はどこからきているかということであるが、出口調査によれば、スウェーデン民主党に投票した市民のうち29%は、前回の選挙において穏健党に投票している。次に多いのが前回社民党に投票したという市民で17%になる。スウェーデン民主党は排他主義あるいはは移民主義であると思われているが、そう単純ではない。移民/難民問題が大事だと思う支持者が多いのは想像が付くが、政治家への信頼が低い市民の割合も多い(なお全体では政治家への信頼性は増加している)。

政治状況

今回の選挙結果は、ある政治家によると「今までで一番困難な状況」であり、組閣および政権の維持が困難になっている。すべての政党はスウェーデン民主党と協力しないと明言していて、出来るだけスウェーデン民主党の影響力を弱めようと考えている。しかし穏健党の大敗およびスウェーデン民主党議席の倍増によって、社民党を中心とする革新ブロックだけでは議席の多数を得られず、少数与党になってしまう。現在必要とされているのはスウェーデン民主党に影響されないために安定政権を作ることであるが、まだその行方はわからない。社民党と環境党とは連立政権を作ると思われるが、左翼党の政権への参加を社民党は拒否した。その理由はこれを認めれば、保守ブロックの協力を得ることが難しいと思われることである。前回の組閣において、左翼党が入らなかったことを批判した労働組合関係者は、今回は全く沈黙していて「党首に組閣の全権を委任している」と言っている人が多い。
現時点においては、保守ブロックの各政党代表は社民党との政権には加わらないと明言しているが、保守政党の地方支部や産業界では社民党との閣内あるいは閣外での協力を押し進めるべきであるという意見が増えている。社民党と保守ブロックの各政党との協力が機能しなければ、制限事項の変更が必要であると言っている関係者も存在する。この制限事項とは4%条項をさし、全得票数の4%を満たさなければ議席を得ることができない。機能しなければこの4%を上げなければならないという意見である。このような政治状況のため、どの様な組閣状況になっても、スウェーデン民主党以外の政党との協力が増えるとみられ、例えば社民党の選挙での公約がそのまま実行されるとは思えない。

マスコミの報道に見るスウェーデン感

今回の選挙は日本ではあまり注目されてないようで、記事の数も少なく、通信社あるいはロンドン特派員の記事が多いようである。いくつかの記事において、「高福祉へ回帰」という表現が見られる。例えば14日付の日経新聞の共同発電に、「スウェーデン総選挙、高福祉への回帰が焦点」、「高福祉政策に戻る」という言葉が使われ、保守政権では高福祉ではなかったかのような書き方である。もちろん野党である社民党などが「教育や医療の民間委託を進めたが、貧富の差が拡大、学生の成績が落ち、福祉施設の質が低下した」と批判するのはごく普通であるが、その内容が十分正確であるとは言えない。保守政党の「成績」をブロッグで分析する余裕はないが、いくつかコメントを書きたい。

統計庁は毎年所得分析を行っているが、絶対的貧困度として「低い生活水準」という定義では、貧困の拡大は2006年から2010年に起こっている。可処分所得のメジアン値は90年代中旬より増加している(なお所得にキャピタルゲインを含めばその変化は大きく、ジニ係数は1980年頃から増加している、ただし他の国よりもジニ係数は小さい)。スウェーデンは昔から「就労戦略」を取っているが、これが特に傷病保険、失業保険において強化された。また90年代から青少年の失業が問題となっている。高福祉に戻るというのは、これらを是正するという意味であろうと思われるが、「高福祉に戻る」という表現はあまりにも単純過ぎはしないか。保守政権においてもマクロでの社会保障費用は減少していないので、「中福祉」であったわけではない。

「福祉施設の質が低下した」というのは最近新聞を賑わした一部の高齢者ケア施設でのスキャンダルのことをいっていると思われるが、民間施設の方がレベルが低いあるいは保守政権になってレベルが落ちたという証拠はない。ただ、福祉および医療分野に利益を目的にする会社が参入することに対して世論の多くは反対である。またマスコミの報道は単純に株式会社とスキャンダルを結びつける傾向がある。

14日付の朝日新聞には記者が書いたと思われる「増税、支持する有権者 スウェーデン総選挙で与野党が主張」という記事が載っている。ここでは主に増税に焦点が当てられている。中身は相対的に正確であるが、このような表現がある。
「「大きな政府」に振り子が戻ってきているという面もある。現政権は「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」として、減税や公的部門への民間参入を進めてきた。この「中福祉・中負担」路線への不満が出ているのだ。」
傷病保険および失業保険などが厳格になったということはあるが、福祉あるいは社会保障費は減ってはいない。公的部門の民間参入が増えたが、これによって福祉費用が減ったわけではない。これを中福祉路線への不満と書くのは書き過ぎである。なお所得減税の結果、GDP比での負担率は減ってはいるが、中負担路線と書くのも書き過ぎであるように思える。とにかく「高福祉高負担」という言葉の乱用あるいはあまりにも単純化しているように思える。

90年代から「就労戦略」は強化されたが、「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」というのは誰が言った言葉なのであろうか。「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」という言葉は日本でもよく使われるが、どの様な科学的根拠による表現なのであろうか。ましてや、「減税や公的部門への民間参入」とどの様な関係があるのであろうか。例えば失業保険制度は厳格化されたが、これは失業保険制度が就労までの一時的機能として非効率な点があるとして改革されたものである。もちろん野党は改正に反対であるが、「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」というそのような単純な認識レベルで議論は行われていない。経済学においても生活保護や失業保険給付のレベルと就労との関係は常に議論の対象になっている。

社会保障費削減の誤解に関してはここを参照。

地方自治体における選挙結果

今週末あるいは来週に追記します。

選挙に行く


今日は選挙である。引っ越ししてから初めて選挙に行ってきた。投票所は近くの学校に置かれている。

IMG_0147.jpg

左側が学校で、右側は市立の屋内プールである。なおプールの右側には屋内スポーツセンター、屋外競技場がある。

IMG_0145.jpg

学校内の様子。

プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
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