スウェーデンの個人ポータル

日本では2017年からマイナポータルを通じて、自分の情報がどの様にやり取りをしたかが確認できるようである。国によってこのようなポータルの取り扱いは異なり、一つのポータルを設けている場合と行政機関ごとに複数のポータルを設けている場合がある(利便性とセキュリティを考慮した結果だと思われる)。スウェーデンでは行政機関ごとに個人用のポータルを設けている。たとえば、市では保育などの申請がインターネットで出来ることが多い。そして保育費計算に必要な前年度の収入などは申請書に記入する。必要に応じて、市は国税庁の確定申告情報をチェックする。まず申請者が必要な数字を記入することが前提で、無条件に他の行政機関の個人情報を使っているわけではない。他に利用度が高いのは社会保険庁である。制度説明、申請あるいは給付額の計算などに使われる。年金関係では年金受給申請、年金額の計算、高齢者用住居手当の申請などを行うことが出来る。また積立年金の投資先の変更も行える。

日本ではマイナポータルを通じて、自分の情報がどの様にやり取りされたか確認できるようであるが、スウェーデンではこれらの機能はない。法律によって行政機関間の情報のやり取りが認められていて、これをいちいち「公開」していたら、行政機関にとってはこの業務が肥大する(これらの個人情報を定められた行政機関の間で提供できるのは法律で定められていて、その記録は行政機関には残るが、いちいち市民に報告するような性格のものではない)。もちろん情報交換は法律にもとづいて行われなければならないし、各行政機関は情報漏洩がないように努めなければならない。なお法律によって国民は各行政機関に最高年1回、どの様な個人情報が含まれているか請求する権利を要する(私は使ったことがない)。

個人的には、一番利用するのは銀行のネットバンキングである。月に何回も利用する。次に多いのは年金庁で、年に数回アクセスし、積立年金の投資先のチェックを行う。三番目に多いのは国税庁で、ここも年に数回、口座の確認を行う(自由業なので、税金、社会保険料および消費税を毎月支払わなければならない。これは年間の見込み収入から月々の支払額が計算される)。一様毎月支払うようになっているが(正確には、毎月決められた日に国税庁にある各個人の税口座に必要な額がなければならない)、毎月支払っても数か月分まとめて支払っても良い。なお支払いが遅れれば催促が来て、3ヶ月ぐらいの遅滞で最終催促が来る(そのしてこれを支払わなければ、未納額の請求は徴収庁に送られ、最悪の場合差し押さえとなる)。なおスウェーデンの個人番号はすでに住民登録とリンクしているので、住民票が必要なことはあまりない。民間の奨学金を申請する場合、住民票が必要であるが、国税庁住民登録部の当該ページに個人番号を記入するだけで住民票は住民登録された住所に送られてくる(多分、自分でプリントアウトも出来る)。

個人情報の確認あるいは申請などのためにこれらのポータルに入るためには個人番号と暗証番号が必要である。個人の確認方法は徐々に向上し、現在では携帯電話を使った認証方法(BANK ID)が一番普及しているようである。それまではクレジットカードに含まれる認証情報をカードリーダーで読み込むか、カードリーダーの暗証番号作成機能を使うのが多かった)。今までは銀行ごとにカードリーダーが異なったり、マックに対応してなかったりして不便であったが、BANK IDを使うことにより、インターネットでの個人認証がこれだけで出来るようになった(以前のようにカードを必要としない)。普通、パソコン画面で個人番号を入力し、携帯電話のBANK ID機能を立ち上げると、個人認証が求められ暗証番号を入力する。なお銀行などでは支払い、他の口座へのお金の移動などに認証が求められる。

生活保護行政における所得/給付額の把握

日本ではマイナンバーをどのように活用できるかという議論が盛んである。スウェーデンでは60年代から個人番号を本格的に使うようになった。例えば生活保護申請者の公的機関からの収入や対応の確認などは福祉事務所の担当者がそれぞれの機関に連絡して情報を得る。去年からこれが改革された。これは地方自治体連盟、社会保険庁、職業安定所、国税庁、年金庁、奨学金庁などの行政機関と失業保険組合協力機構との連携によるもので、銀行などの民間団体などは含まれていない。現在のところ、290のうち180の市がこれを利用している。運営自体は地方自治体連盟の委託に応じて社会保険庁が行っている。その目的は認定の効率性および正確性である。生活保護の決定にあたっては個人の種々の情報が必要であり、このため間違った支払い(申請者の間違いおよびごまかし、行政側の間違いなど)も多い。

もし市が申請者の情報が必要である場合、このサービスにオンラインでアクセスして上記の参加団体から申請者の所得/給付情報などを入手するという方法である(7秒で入手できるようである)。なおこれらの所得情報は各機関が業務において公開できる情報である。たとえば、国税庁では確定された確定申告情報であり、それまでの過程において入手された第1次的情報ではない(各年度の所得は次年度の12月に確定される)。社会保険庁などは各月ごとの給付情報が送られる。なお財産税は廃止されたので、国税庁は預金情報を集めていない。このサービスを使って、たとえば職業安定所の対応状況も入手することが出来る(失業している場合、まず職業安定所に登録して職業安定所の就労援助を受ける。今までは書類で提出していた)。
今までは各市の生活保護担当者がこれらの機関にそれぞれ連絡していたが、このサービスの導入によって、これらの業務は大きく合理化された。報告書によると、月にあわせて27万5千件の質問があり、これを年間数に直せば300万件になる。これは150万時間、人件費としては4億5千万クローナ、職員760名分に相当する。一件当たりの問い合わせに換算すると、今までの150クローナが58オーレに減額されたことになり、今までの0.4%しか費用がかからないことになる。
これによって福祉事務所職員はもっと申請者の自立援助に力を入れられるようになる。なおこのシステムを使うために、第1に各市の議会の承認、第2に社会保険庁の技術的要求を満たす必要がある。

追記
銀行の預金額の把握に関しては、福祉事務所の要請に応じて申請者自身が銀行口座の明細のコピーを提出するようにしているようである。ストックホルム市では申請から数か月前の銀行口座の出し入れの明細を要求している。なおスウェーデンの銀行は全国レベルで管理され、すべての口座は利用者の個人番号にリンクしている。なお利子や株の売買による利益などには国税が課せられるため、これらの情報は各銀行(あるいは証券会社)から国税庁に送られている(雇用主あるいは支払者は1月に前年度の年間情報を国税庁に送る)。もちろんこの段階で源泉徴収がされている。

銀行などは預金者の個人情報を守らなければならない。この例外はたとえば課税に必要な情報であり、それ以外の情報を行政機関などに漏らすことはありえない。

またスウェーデンでは国税庁が地方自治体に対する住民税なども扱っている。雇用主は国税庁が定めた源泉徴収表にしたがって源泉徴収するので、仮に副業があってもこれが会社に漏れることはない(普通は副業が禁止されていない)。住民税を含めた税金については、国税庁がすべてを取り扱っているので、税金について市民が市役所と情報のやり取りをすることはない(住民登録も国税庁住民登録部が行っている)。



高齢者の住居問題改善案

スウェーデン政府は高齢者の住環境改善のため2014年委員会を設置し、委員会は改善案を10月5日、政府に提出した。

報告書は4つの分野における改善案を提案している。
1.既存の住宅のアクセス改善
集合住宅地におけるアクセスを改善する(段差の解消など)。
集合住宅におけるエレベーター設置に対して、費用の半分を補助する。
集合住宅におけるアクセス指標を開発する。

2.「安心住居」の増加
70歳以上の高齢者を対象とした「安心住居」への国庫補助を続ける(原則70歳以上であるが、場合によっては65-69歳でも可能)。新築の場合、2800クローナ/㎡、改築 2200クローナ/㎡。最高面積は60㎡、共有部分は20㎡/戸。新築の場合、トイレ、寝室はアクセスの強化。賃貸か共同組合型賃貸。最低10年間は「安心住居」として運営。
共同的住居をスタートするための補助を行う。
住宅供給法に市の福祉局の関与を明確化する。
(「安心住居」は、すでに2010-2014年に国庫補助の対象であった。この時に比べると、1.補助額が増額されている。2.対象面積が35㎡から60㎡に増やされた。3.利用権買い取り形式の住居は対象から外された)
(報告書では損益分析がされ、「安心住居」の建設により特別な住居の必要性が減るので、市の経費節減になると結論づけている。なお「安心住居」の建設費は住宅会社の負担なので、計算には含まれていないようである)

3.引っ越しをして住み続けることの改善
住宅補助の限度額を5000クローナから7300クローナまで上げる。
75歳以上の高齢者の引っ越し費用に対する補助
住宅供給法に市の責任を明確化。
75歳以上の高齢者に対するホームヘルプ決定の簡素化

4.住居におけるアクセスおよび一体感を持てる住居に関する研究強化
建築基準法におけるアクセスに関する条件見直しのため、2017年から2021年まで研究費として毎年2千万クローナ出費。
「安心住居」の意味、戦略および援助形態を継続的に発展させるため、住居形態としての「安心住居」の全体的評価。
機能障がい者のゴミ処理方法に関して研究。

このために5年間で26億クローナを予算化する。
これから関係者の意見を聞いて法案が提出され、うまくいけば2017年からの施行が計画されている。

まだ案ではあるが、ある程度の方向性が見られる。
1.出来るだけ長く在宅に住み続けられるという在宅主義は維持される。
2.在宅に住み続けられないほどの介護の必要性がある高齢者に対しては、特別な住居あるいは介護住居への引っ越しが選択され、入居は行政決定である(介護住居は普通、ユニットケアである)。
3.在宅に住むことに不安を持つ高齢者に対しては、(法律的には一般住居に含まれる)「安心住居」での入居が可能性として導入される。ただし「安心住居」への入居に行政は関与しない。また介護が必用な場合、ホームヘルプ/訪問看護を市に申請し、「安心住居」にはホームヘルプ、訪問看護は付いてはいない。
4.このように特別な住居と「安心住居」との違いは、第1に入居に行政決定が必要かどうか、第2に介護/看護が付いているかである。しかし「安心住居」はまだ数年の経験しかないので、将来的には内容が変わる可能性も存在する。

2015年10月8日追加、編集
プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
詳しいプロフィール

カウンター
検索フォーム
カレンダー
09 | 2015/10 | 11
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク