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スウェーデンの生活保護

スウェーデンの福祉は地方自治体によって行われ、国の規制は少ないと言われる。一般論としてこれは正しいが、この中でも生活保護関係は全予算が市の税金から出費されるが国のガイドラインが詳細な分野である。もし権利性が不明確あるいは問題点があるのであればこれを指摘するのは社会庁の役割で、後は政府および国会の政治的判断である。社会庁は生活保護のガイドラインを出しているが、単純に社会庁の法解釈だけでなく、行政裁判による判断もこの内容に含まれている。

生活保護は社会サービス法によって判断され、生活保護のみの法律は存在しない。具体的には、生活保護も高齢者援助も社会サービス法第4章第1条によって決定される。生活保護は経済的援助と呼ばれ、生計援助およびその他生活のための援助に分けられている。 さらに生計援助は全国標準額と個別認定額に分けられている。全国標準額は一般的な生活費(食費、衣服、余暇、消耗品、新聞、電話代、テレビの視聴料)で全国同じ額である。全国標準額は消費調査に基づいて個人の必要額と世帯の必要額に分けられ、個人の場合さらに青少年に関しては年齢別に分けられている。
個別認定額は家賃、電気代、交通費、組合加盟費などで実際の支出額が援助される。その他の援助は原則的に項目の制限はないが、医療の自己負担、医薬品の自己負担分、移送サービスの自己負担分、保育園の利用料金などが含まれる。なお全国標準額に関しては領収書は必要としないが、その他に関しては領収書が必要である(領収書に対して、後で補償される)。
生活保護による援助は最低生活ではなく、妥当な生活水準を維持するものでなくてはならない(妥当な生活水準は消費庁の家計消費調査をもとに計算される)。妥当な生活水準は必要性によって決まるが収入によって決まるものではない。

スウェーデンの生活保護は日本と同じく最後のセーフティーネットであるが、日本の生活保護との違いは他の社会保障制度にある。つまり他の社会保障制度の中でどのようにして最低保障が考慮されているかである。他の制度による保障があるので生活保護の給付条件は部分的には厳しく、最大限の自助努力が必要とされる(国際比較においては、スウェーデンとデンマークの受給条件が厳しといわれている)。
生活保護を申請した場合、福祉事務所は認定を行うが、目的は経済的自立である。このための条件(求職など)と給付額が書かれるのが普通である。例えば就労可能な65歳以下の人は職業安定所に登録して求職活動を行わなければならない(職業安定所に登録することによって失業保険給付の条件ができるが、登録と共に求職の行動計画が作成され、そのチェックも行われる。なお生活保護を受給しているという情報は、原則職業安定所には連絡されない)。
また財産を処分することが求められ、特例を除いて車の所有も認められていない。同様にして、たとえば失業保険からの給付が受けられるのに、代わりに生活保護を得ることは出来ない(生活保護の対象として考えられるのは、失業保険などからの給付額を考慮してもなお生計費が足らない場合で差額が給付される。このため失業保険あるいは他の給付を受けているということ自体は、生活保護受給の権利を奪うものではない)。

日本で話題になっている通院交通費に関しては、生活保護受給とは関係なく医療の責任主体である県の責務である。原則的に、公共交通等を使うことになっていて、自己負担分以上の費用が補償される。なお医学的理由によって公共交通が使えない場合は、タクシーなどの使用が認められるが、その判断は県が行う。普通、県には配車センターが設けられていて、県が契約しているタクシー会社から車が配車される(患者が自由にタクシー会社を選ぶわけではない)。もし利用者が生活保護を受けていれば、自己負担分(初診料も含む)は生活保護から支給されるのが普通である。

なお子どもは親の経済的扶養義務を有してはいない。1956年の生活保護法において廃止された。国際的に見ても、子どもの親に対する扶養義務を課している国は多くはない。また子どもに対する親の扶養義務は子どもが18歳になるまでかあるいは高校を卒業するまでである。
高齢者の場合は、年金の他に高齢者住宅補助、高齢者生計援助などの制度があり、生活保護を受けている高齢者はほとんどいない。仮に受けていても歯の治療代などの一時的援助で生計援助ではない。

生活保護申請において、一番難しいのは現時点での所得の把握である。スウェーデンは個人番号があるので所得の把握は簡単であると思われているが、部分的である。知ることができる所得は1年前の確定所得であり、現在の所得ではない。税務署でさえ、現在の所得は把握していない。同様にして、財産の把握も困難である(以前は財産税があったので、銀行は年末の預金残高を国税庁に報告した。そして国税庁が毎年市民に送る確定申告資料に銀行名、預金残高、利子額などが載っていた)。しかし財産税は廃止され、この報告義務もなくなった(現在、国税庁が送る確定申告資料には銀行名、利子額が載っているが、預金残高は載っていない)。このため、最近では申請者が任意で銀行口座の明細を福祉事務所に提出するようにしている。形式的には任意であるが、もし提出しなければ、福祉事務所は必要書類の不提出ということで、申請を却下できる。なお銀行には秘密守秘義務があるので、福祉事務所が銀行に預金残高などを聞くことも銀行が法的根拠なしに情報を行政に伝えることもあり得ない。唯一の例外は犯罪などに関連し、警察、検察あるいは金融庁が調査を行う時のみである。

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