スウェーデンの家族政策


 スウェーデンには少子化対策は存在しない。あるのは家族政策である。スウェーデンの家族政策の目標は主に3つである。
子供のいない家庭と有子家庭の生活の平等化
労働と育児の両立
特に援助の必要性の大きい家庭に対する援助

 このための手段として児童手当、両親保険などの財政的援助、保育園などが上げられ、児童手当、両親保険などの財政的援助/保障はすべて社会保険庁が一元的に給付している(普通は各自が銀行口座を社会保険庁に連絡して、口座に給付が振り込まれる)。

● 親休暇法

 親が働いている場合、子供の年齢に応じて休職あるいは労働時間を短縮することができる。2ヶ月前までに雇用主に申請する必要があるが、育児のために休む権利は雇用期間とは無関係である。なおこの休暇は、両親保険給付と組み合わせる必要はない(無給で休む権利がある)。

乳児が18ヶ月になるまで、親は休職することができる。
子供が8歳になるまで、親は労働時間を正規労働者の4分の1まで短縮することができる。
母親は出産の前に7週間、出産後7週間の休みを取ることができる。

● 両親保険給付制度

 両親保険制度は親休暇法と両親保険給付制度から成り立っている。現在(2009年)、両親のいずれかが育児休業をした場合、併せて480日間休職して休職補償を受ける権利がある。父親も休暇を取りやすくするために60日間の父親および母親の月が導入されている。

 両親保険制度は所得に比例する所得補償を基本にしながら所得が少ない人に適用される最低額とを組み合わした制度である。収入に比例する補償分は就労に基づく社会保険給付で、その財源は雇用主が支払う保険料であるが、最低額および90日間の基本額は居住に基づく社会保険給付で、その財源は税金である。公的財政の改善に伴って両親保険制度も改善されてきたが、全国民を対象とする保険という考えから、裕福な層も制度の恩恵にあずかれるようにすることが保険制度の維持および信頼につながる。もし裕福な層の信頼がなくなれば、全国民を対象とする保険制度として機能しなくなる。同時に保険制度であっても何らかの理由によって収入がない人たちに対しても最低保障を行うことが必要である。

480日のうち最初の390日は給与の80%(正確には77,6%)が給付される。収入が全くないか少ない親のために180クローナの最低額が支給される。
残りの90日は1日につき180クローナが支給される。
補償される所得の最高額は価格基礎額の10倍(2009年の年収が42万8千クローナ)である。
両親給付は課税対象である。

● 児童手当

 児童手当は普遍的原理にもとづく典型的な給付形態であり、居住に基づく給付である。1937年に導入され、1948年からほぼ現在の形になった。給付条件は児童の年齢および人数のみであり、世帯の収入、財産などは一切考慮されない。支給対象は16歳までの子供を持つ親で、国籍とは無関係であるが、原則親も子供もスウェーデンに居住している必要がある。外国人は1年以上スウェーデンに居住する場合、滞在許可が必要で、住民登録が行われ居住者と見なされる(反対に、1年以下の滞在者は居住者ではない)。親か子供が外国に居住している場合は、少し複雑である。一時的に外国に居住する場合、EU内であれば1年、EU外であれば半年以内の場合、スウェーデン居住者として認められる(なお一部例外がある)。子供が外国の学校に行っている場合、学校の休みなどに定期的にスウェーデンに帰国することが必要であり、この条件は国籍とは無関係である(著者の理解では、子供を本国に残したまま親が就労のためにスウェーデンに移民した場合、子供はスウェーデン居住者ではないので児童手当は支給されない。しかし家族でスウェーデンに移民し、子供が本国の学校に行く場合、児童手当は支給される)。なおEU国民はEU条約の適用を受けるが、詳細は省く。

 2010年、児童一人あたり1050クローナ/月であるが、多子加算がある。16歳を超えれば児童手当は支給されないが、児童が高校に行っている場合、就学援助庁から勉学手当が自動的に支給される。児童手当の財源は国税で、非課税である。給付の申請は必要ではなく、社会保険庁(国)が住民登録情報に基づいて毎月自動的に支給する(普通は母親が申請した銀行口座に振り込まれる)。このように児童手当の支給は社会保険庁であり、かりに両親が市に支払わなければならない費用があっても、それは相殺されない(技術的な問題よりも、原則論である)。(2006年7月4日記、2011年2月12日追記)

● 児童保育

 児童保育の所管は1966年に社会庁から教育省に移り、関係法も社会サービス法から学校法に移った。このように福祉から教育に移ったのは、児童保育の持つ教育面を重視したこと、学校教育と幼児保育を統合的に捉えなおしたことである。女性の就労率の増加などにより、児童保育は60年代から不足が指摘され、政府は保育を受ける権利を強化するために、1995年から「市は遅れることなく、児童保育を提供しなければならない」という条項を追加した。行政法上は、「遅れることなく」というのは3-4ヶ月を指している。運用などは市によって異なっているが、ストックホルム市では以下のようになっている。

私立保育園も含めた市共通の待機リストが使用されている(一部の市立保育園は独自の待機リストを使用)。保育園は自由に選べ、一度に5つの保育園を順を付けて希望することができる。入園の申請からおよそ3ヶ月以内に地区の保育園への入園が保証されるが、希望の保育園であるとは限らない(この場合、優先順位の高い保育園の待機リストに留まることができる)。
入園は1歳からであるが、申請は出生6ヶ月からできる。
利用料金(1歳から3歳児)
一人目の子供の利用料金は月の所得の3%で、1260クローナを超えることはない。
二人目の子供の利用料金は月の所得の2%で、840クローナを超えることはない。
三人目の子供の利用料金は月の所得の1%で、420クローナを超えることはない。
四人目からの子供は無料である。

4歳児からは週に15時間は無料であり、残りの時間が以下のように計算される。
一人目の子供の利用料金は月の所得の2%で、840クローナを超えることはない。
二人目と三人目の子供の利用料金は月の所得の1%で、420クローナを超えることはない。
四人目からの子供は無料である。
利用料計算のもととなっている所得とは課税対象所得を指し、就労所得だけでなく社会保険庁からの課税対象所得を含む。ただし、住宅手当、児童手当、生活保護は上記の計算には含まれない。
所得は世帯所得であり、月当たりの所得が4万2000クローナ以上の場合、利用料金は上記リストの最高負担額である(4万2000クローナ以下の場合、上記の%の数字が適用される)。

6-12歳までの児童のために学童保育が組織されている。
(保育園の利用料金は各市にまかされていたが、90年代に利用料金が増加し、また市の格差も増えた。このため政府は、利用料金の最高負担制度および制度を導入する市に対する補助金制度を2001-3年に導入した)
(2006年7月4日記、2009年9月19日追記)
関連記事

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめteみた.【家族政策】

家族政策在宅育児手当日本のある新聞にスウェーデンの在宅育児手当の簡単な紹介があったが、かなり美化であった。日本語の在宅育児手当に相当する制度としては、両親保険制度による90日間の保証(下記参照)と現在の在。在宅育児手当は保守政権によって1994年に導入された...

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
詳しいプロフィール

カウンター
検索フォーム
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク