スウェーデンは公的セクターが大きいので、経済の成長を妨げている(?)

 スウェーデンは公的セクターが大きいので、経済の成長に悪影響を与えているといわれることがある。公的セクターが大きいという場合、いくつかの意味がある。GDP比の公的セクターの歳入、歳出、消費、社会保障移転、負担率、社会保障給付率および公務員の相対的割合である。

 スウェーデンはすでに60年代から、高負担のために国が破綻すると言われ続けてきた。しかし現在では、スウェーデンだけでなく他の北欧諸国も経済成長は欧州の平均以上である(金融危機では北欧も影響を受けているが、その影響は軽度である)。反対に先進国の中でも負担率が低い日本はスウェーデン以上にもっと経済成長が高いはずであるがそうではない。スウェーデンの公的セクターの支出は、国内総生産比では国際的にも一番高いが、相対的に多いのが社会保障を通じての所得の移転である。そしてこの移転は、国民に直接現金として支払われるためふたたび消費されて、国内総生産に貢献するのである。公的セクターの支出が多いということは、経済活動の一面でしかない。

 最近はスウェーデンの経済が好調のため、日本の新聞のスウェーデンパッシングはあまり見なくなった。これは日本の新聞が常に参考にする英語圏の経済誌のスウェーデン批判が少なくなったことも関連しているような気がする(90年代後期から、このような批判は少なくなったように思われる)。スウェーデンには何の問題もないというつもりはないが、スウェーデンを「大きな政府」として批判する評論家あるいは研究者はもっと実証的研究をして欲しいと思う。どうも主観にもとづく決めつけが多いような気がする。

 スウェーデンでは全就業者の約3分の1弱が公務員で、これが批判されることがある。国際的にみてみると、確かにスウェーデンの公務員の割合は高いが、あまり知られてないのは、「小さな政府」の例として良く上げられるアメリカはOECDの平均で、およそ14%前後が公務員である。OECD加盟国の中でも、日本は公務員の割合が一番小さな国に属する。問題は、単純に数字が多いか少ないかではなく、与えられた業務を遂行するために十分な人数かどうかである。

 スウェーデンの公務員の80%以上は地方公務員で、ほとんどが現場職員(福祉、医療、教育など)である。仮に医療や福祉部門が民営化されて公務員が減っても、これによって経済が良くなるわけではない。なぜならば、現場職員の人件費は公的セクターでも民間セクターでもほとんど変わらないからである(同じ職業であれば、原則的に給料はほぼ同額である)。考えられるのは、競争がないことによる非効率である。福祉や医療においても効率化は可能であるが、質に影響を与えることなしに効率化することは限界がある。(2000年5月10日記、2010年8月22日追記)

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