社会保障カードと個人番号

 年金記録紛失問題の対応策として「社会保障カード」の案が出てきた。詳細は不明であるが、新聞記事を読んでみるといくつかの問題点が浮かび上がる。まず第1は、国民一人一人が持つ社会保障番号とカードの問題とが区別されていないことである(新聞でさえ、この2つの問題を区別していない)。番号とカードの区別をしていないので、賛成派にも反対派にも致命的な問題点がある。第2に社会保障あるいは行政とは関係なく、何らかの個人情報を管理している民間企業も含めて、どのように正確な個人情報取り扱いが出来るかということと、社会保障の個人情報の区別がされていない。第3に、電子認証手段としてのカードと社会保障情報の記録媒体としての区別がほとんどされていない。特にカードに個人認証以外の情報を含めることがセキュリティから見て安全かどうかおよびこれが望ましいかどうか。例えば年金記録のインターネットで確認するというのは電子認証の問題であって、ICに認証以外の情報を含むことは別の問題である。これらの3つの異なった問題が十分区別されずに、(味噌も糞も一緒にして)議論が行われている。一番大事なのは、社会保障番号あるいは納税者番号でも良いが、住民登録における住所とのリンクと行政機関が個人情報に対する取り扱いを厳密かつ効率的に行うことである。(2007年8月5日記)

 税と社会保障の共通番号の導入案がふたたび出てきたが、住基ネットの時と同じくマスコミは正確な報道をしているであろうか。今日(2010年1月31日)の朝日新聞に、「共通番号を導入すれば、所得や健康状態など個人情報を、国が一元管理することになる」と載っている。2010年5月17日の読売新聞に同様の記事が載っている。「番号を一本化すると、病歴などプライバシーに関する情報が一つの番号でつながり、情報漏れの可能性が高まるためだ」そもそも、この「一元管理」という言葉使いが正確であろうか。個人番号などを使って種々の情報を別々のデータベースで管理し、データベース間の検索を法律などで制限することと、一つのデータベースに情報を集めることとは全然異なるのである。仮に他のデータベースと同じ番号を使っても、他のデータベースとの連結を禁止するとか、情報管理を厳格にすれば情報漏れは起こりえないのである。そもそも国家戦略室の資料においてこの区別をしていないからである。例えばスウェーデンは単一の個人番号を使っているが、個人情報が一元的に管理されているのではなく、各行政機関における分散管理方式である(単一の番号=一元化ではない)。各行政機関間の情報伝達は法律によって規定され、医療情報などは個人情報法によって守られている。なお個人の所得情報は公文書公開の原則によって公開対象であるが、これは個人番号の問題ではない。(2010年7月12日追記)

 
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まとめteみた.【社会保障カードと個人番号】

年金記録紛失問題の対応策として「社会保障カード」の案が出てきた。詳細は不明であるが、新聞記事を読んでみるといくつかの問題点が浮かび上がる。まず第1は、国民一人一人が持つ社会保障番号とカードの問題とが区別されていないことである(新聞でさえ、この2つの問題を...

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