脱原発からその見直しへ

 昨日、保守4党は記者会見を開き、エネルギー問題について合意にいたっと発表した。原子力問題はスウェーデンの政治上、左右のイデオロジーと並ぶ重要な政策項目であり、保守与党の間でも意見の違いがある。特に保守与党の中央党が原子力発電所の新築に反対しているので、保守与党ではこの問題について触れないことになっていた。2002年の三党合意(社民党、左翼党、中央党)によって、現在ある10の原子力発電所の安全性が保たれ、採算が取れる限り使用していくと合意されたが最終的には廃止することを目指している。今回、保守与党はエネルギー政策の長期的安定が重要であるとして、引き続き原子力発電所を使用していくこと、原子炉の寿命が来れば(同じ場所に)建て替えできること、その費用は電力会社が出すこと、さらに再生可能なエネルギー源にさらに投資することなどを発表した。これによって、中央党はイデオロジーよりも現実主義を取った。なお政府発表文書には、はっきりと脱原発の廃止が明記されている(原発への依存を少なくすると同時に、原発廃止政策は撤回)。

 原子力発電に関しては必ず、1980年の国民投票が話題に上がる。スウェーデンの国民投票に強制力はなく、状況が変わっても30年前の決定に固持することにも問題がある。しかし前回には国民投票を行ったのであるから、今回も行うべきであると言っている政治学者もいる。

 福島原発事故の後、原発問題が世界各国でふたたび話題になっている。日本ではスウェーデンが紹介されることが多いが、上記に見たように、「スウェーデンは脱原発」であると単純に言えなくなっている。良くも悪くも現実路線を取っている。これらの政策変化は少なくとも全国新聞では触れられてはいるが、他のメディアにも十分浸透しているとは言い難い。あとひとつの問題点は、発熱は地域での対応が大きい分野であるが、発電は全国あるいは欧州対応である点で、この区別が十分されていない。

 地域レベルでの対応で力が入れられているのは、地域暖房と公共交通である。地域暖房がカバーする地域が大きくなり、効率化されている。またエネルギー源として自然エネルギーを使うことが増えている。スウェーデンの公共交通の責任は県にあるが、県が積極的に再生エネルギー(エタノール、ガスなど)の使用を実践している。また交通政策として自動車の使用を制限する政策(混雑税など)も行われている。(2009年2月6日記、2011年10月1日追記)
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Taro

Author:Taro
OKUMURA CONSULTING社代表
Sweden

スウェーデンの社会政策などを日本に紹介する仕事をしています。
詳しいプロフィール

カウンター
検索フォーム
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
最新コメント
カテゴリ
RSSリンクの表示
リンク