日本の生活保護行政の問題点

河本氏の生活保護問題はまだ続いているようであるが、特に週刊誌の記事は生活保護行政の問題と個人の問題を区別していない。今回の「事件」によって、生活保護行政の変化に弾みがつくものと思われるが、その議論は科学性、客観性にもとづいて行われなければならず、不必要に感情論、政治性を持ち込むべきではない。とりわけ今回の事件は週刊誌のスクープが発端であり、週刊誌の記事がどこまで正確であったか、私が言うまでもないと思う。一部の新聞では読者からの情報を載せているが、これも問題である。読者からの情報自体が問題なのではなく、その情報がどこまで正確かが不明なことである。場合によっては間違ったあるいは誤解した情報であることもある(一部の国会議員の無責任な発言も問題である)。

日本の生活保護行政は直接フォローしてないが、以前仕事上で関係者と話しをする機会があった。日本の生活保護行政はいくつかの問題がある。
1.経済的自立のための支援が不十分
生活保護はただ単に給付を行うだけの業務ではない。申請者が生活保護を申請するためには種々の理由があるが、特に就労可能な年齢層に対しては経済的自立のための支援を行うことが重要である。しかし職業安定所との協力もなきに等しいと聞いている。特に就労可能な人たちに関しては、生活保護の最大の目的は経済的に自立できるまでの一時的な援助であり、経済的自立のための支援策がより重要である。
2.他の社会保障制度が貧弱
生活保護受給者のおよそ半分は高齢者であり、その原因は年金であると思われる。無年金者あるいは年金が十分でない高齢者の最低保障をどうするかということがまだ解決されていない。この結果、これらの人たちは生活保護が収入源になる。本来、生活保護制度は一時的な援助として捉えるべきできであるが、他の社会保障制度が貧弱なためにそれらの社会保障でカバーされず、生活保護に頼らざるを得ないということになりやすい。
3.職員不足と能力不足
福祉事務所の職員が不足していることは以前から指摘されていた。しかしこのために各地方自治体および厚生労働省はどの様な対策を取っていたのであろうか。また資格という点からも、すべての社会福祉主事が大学での専門教育を受けているわけではない(ただ単に、職員の人数および能力だけではなく、生活保護行政の質はどうなのであろうか)。生活保護は単純に生活保護費は支払うだけの制度ではないにもかかわらず、職員不足などの理由によって、必要な自立支援などの援助ができてないのではないかと思う。
4.医療扶助の問題
生活保護費総額のおよそ半分が医療扶助であり、やはりこれは異常である。大きな改革が必要である。単純計算で、医療扶助費を20%減らすだけで、生活保護費総額は10%減らすことができる。

生活保護費の減額も以前から話題になっていたが、結論が出ていなかったと思う。問題点は一定の条件下で生活保護費が他の給付を上回ることである。生活保護と他の給付(たとえば国民年金)とは考えも、計算方法も異なるにもかかわらず、単純に額だけで比較するのは無理がある。そもそも国民年金だけで生活できるのであろうか。やはり年金制度上の問題を生活保護(福祉)で解決せざるを得ないという制度上の問題(あるいは制度上の問題解決を怠ってきたこと)が一番大きいであろう。この問題を解決しない限り、表面的な支給額あるいは保護世帯数の変化だけを比較しても何の意味もない。

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