生活保護の現状

話題になっている日本の生活保護について、保護世帯統計を調べてみた。
2009年現在、被保護世帯数は127万世帯で、1965年に比べておよそ2倍である。特徴的なのは、この10年間増加していることである。特に高齢者世帯は1965年に比べて4倍になっている。高齢者が増加しているので、他の条件が変わらなければ生活保護を受給している高齢者も増えることは予測されることである。
全世帯数に対して生活保護を受給している割合である世帯保護率で見ると、これも大きな特徴がある(保護率の増加は貧困化が進んだと理解しても良いと思う)。全世帯での保護率は1996年頃まで減少したが、以降急増し、2009年現在2,65%である。保護率は世帯によって異なり、母子世帯は13,2%、高齢者世帯は5,9%、その他の世帯は1,6%であるが、どのグループの保護率もこの10年間で増加している。

1.保護世帯は各グループごとにその変化、理由も異なるため、全体の保護世帯数の変化だけではなく、グループごとに見る必要がある。全体の保護世帯数だけを見ていれば、変化の要因を誤解する恐れがある。
2.高齢者が保護世帯に占める割合はほぼ44%で、高齢者世帯数が増加していることと保護率の増加が被保護世帯数増加の最大の要因である。高齢者の増加以上に保護率が減少しない限り、生活保護を受給する高齢者の増加は予測されることであり、今さら驚くことではない。
3.保護世帯に占める障害者および傷病者の割合はほぼ34%で、その割合は若干減少している。保護率は不明。
4.全被保護世帯の14%を占めるその他の世帯は、就労可能な世帯と思われる。このグループの割合は1997年から急増し、保護率も増加している。
5.母子世帯も1996年から増えているものの、被保護世帯に占める割合としてはわずか8%である。なお母子世帯の保護率は一番高くて、13%が生活保護を受けている。
6.保護費総額から見てみると、生活扶助はおよそ33%で、一番大きいのは医療扶助の50%、三番目は住宅扶助の14%である。保護費総額は1965年に比べて名目でおよそ20倍になっているが、住宅扶助が68倍、生活扶助及び医療扶助がおよそ18倍になっている(時系的には名目費用よりも物価変化を考量した実質費用の変化が重要であるが、実質費用が公表されていないのは不思議である)。

生活保護費の10%削減とかの話が出ているが、単純な削減は無意味である。少なくともそれぞれのグループごとにその変化、生活保護を申請しなければならない要因を分析し、根本の原因をなくす政策を取らなければならない。詳細な分析をする時間はないが、高齢者に関しては年金問題、母子世帯およびその他の世帯に関しては就労の問題(失業保険を含む)、障害者/傷病者に関してはその他の保障制度が不十分であることが問題であるように思える。なお不正受給は0,4%と言われているので、過大評価も過小評価もするべきではない。

参考資料

参考資料1

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Re: 生活保護と地方財政

メールありがとうございます。

> >地方自治体が保護世帯の支援策に力を入れて生活保護を減らす誘因が非常に弱いのではないかと想像する。

複数の関係者から支援策(および給付に対する条件)が弱いと聞いています。財源との関連はあくまで推測です。
もちろん窓口での却下の話は知っていますが、これはこれで問題だと思っています(申請条件を満たさないのか、調査の結果却下されたのか、法律上大きな違いです)。

>個人的には、ナショナルミニマムの保障という観点からは、生活保護・公的扶助の現金給付の支給決定は全国一律の基準(もちろん地域差の考慮は必要)で中央集権的に行われるべきと思います。しかし一方で、上述の星野論文にあるように、生活保護には現金給付ではなく対人社会サービスという側面も強いため地方自治体のケースワークの役割も重要と考えます。

もちろん基準額などの決定は国で決めるべきですが、ソーシャルワークとの組み合わせも含めて、その運用/決定は市で行うべきだと思います。 とりわけ、職業安定所および社会保険庁との協力は大事です。
現在どの市でも何らかの形のアクティベーションを行っていますが、その効果は一様ではありません。多分ウプサラ大学の労働市場政策研究所はご存じだと思いますが、複数の報告書が出ています。

生活保護と地方財政

はじめまして。いつも勉強させて頂いております。

>地方自治体は生活保護費の25%を出費し、残りは国が出していると思う。この結果、地方自治体が保護世帯の支援策に力を入れて生活保護を減らす誘因が非常に弱いのではないかと想像する。

多くの方が誤解されていますが、生活保護の地方負担分は地方交付税の財政需要額の算定(具体的には補正係数の部分)で考慮され、交付税措置されているので、25%が額面通り地方自治体であるわけではありません。もちろん、基準財政需要額における生活保護需要の算定と実際の自治体負担の乖離については地方公共団体と総務省の間でも議論があり、研究もあります。

http://www1.ubc.ne.jp/~jichisoken/publication/monthly/JILGO/2009/05/hoshino.pdf

(4. 基準財政需要額と一般財源との乖離)

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h22pdf/20107801.pdf

(4.2.3. 財源保障の度合い)


>地方自治体が保護世帯の支援策に力を入れて生活保護を減らす誘因が非常に弱いのではないかと想像する。

国庫負担と上述の交付税措置により、地方自治体は生活保護増による自治体負担増を制度上は大方免れるはずにもかかわらず、実態として地方自治体に生活保護の「負担感」があり、少なくない自治体で(支援策というよりも窓口での申請却下などにより)生活保護を減らす誘因が働いてきたのは、この「生活保護費充当一般財源と基準財政需要額の乖離」にも一因があるとは思いますが、その影響力の大きさについてはまだよくわかっていない段階だと思います。

ちなみにスウェーデンでも財政調整制度による地方間の財政需要の差は考慮されていますが、

http://db.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/h17-7.pdf

(表9 需要均衡化モデル)

それがコミューンの公的扶助行政に効果、影響についてどのような議論や研究があるのか、興味があります。(私はスウェーデン在住で、地方自治体の統計分析が盛んな大学の経済学部に所属していますが、私の知る限り英文の統計分析ではそのような研究は見たことはありません)

個人的には、ナショナルミニマムの保障という観点からは、生活保護・公的扶助の現金給付の支給決定は全国一律の基準(もちろん地域差の考慮は必要)で中央集権的に行われるべきと思います。しかし一方で、上述の星野論文にあるように、生活保護には現金給付ではなく対人社会サービスという側面も強いため地方自治体のケースワークの役割も重要と考えます。

私はスウェーデンの研究はしていませんが、スウェーデンがこのバランスをどう考え、どう制度化し、実務を行っているのか、興味深いテーマだと思っています。

長文失礼致しました


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