政策決定過程

スウェーデンの政策決定過程は相対的に明確である。
まず国会決議あるいは政府のイニシアチブによって、政府は調査委員会を設ける。この際、政府は指示書において問題点、調査の目的、報告書の提出期限などを明記する(指示書はすべて公開)。政治的に意見が大きく異なる場合は、各政党から委員が選ばれる。その他の場合は、他の政治家(県知事、議員)かいわゆる有識者が委員長になることも多い。必要に応じて、専門家が加わる(委員ではない)。そしてこの委員会の報告書(SOU)は期日までに政府に提出される。提出と同時に公表され、多くの場合政府のホームページからダウンロードできる。
この調査委員会はいくつかの特徴がある。第1に、この委員会は閣議に基づく政府の調査委員会なので、各省から独立している。第2に委員会は非公開であって、発言議事録もないことである。その代わり、詳細な報告書が作成される。報告書が数百ページになることも珍しくない。なお一部の委員が多数決決議に反対ならば、その意見を明記することはできる。特にこの報告書が発言議事録ではなく、問題を分析した報告書であることが重要である。なお報告書の中には、問題の調査および報告が目的で、直接法案作成に結びつかないものもある(たとえば11冊からなる「90年代の社会保障の変化」)。

この報告書が提出されると、政府はこの報告書を各関係団体および他の政府機関に送って意見を求める。これはレミスと呼ばれる制度である。もちろん個人が意見を送ることも可能であるが、これはレミスとは呼ばれない。その後、政府は報告書原案およびレミスを考慮して、政府政策案(Proposition)をまとめる。意見が大きく異なるあるいは反対が多い場合は、この段階で原案がボツになることもある(例えば、生活保護を社会サービス法ではなく特別法にするとか、同様にして児童保護を特別法にするとかの案は廃案になっている)。
政府案ではそれぞれの問題について審議会の意見、レミスそして政府の意見という形で最終的な政府案の説明が行われる。これで他の団体がどのような意見を述べたかということや、これらの意見に対して、政府はどう判断したかということを知ることができる。なお政府政策案は調査委員会の報告書ほどは分厚くはないが、それでも50-200ページぐらいはある。スウェーデンの法案制作過程およびその内容を知るには、委員会報告書および政府案を読むのが最低限必要である。

政府案が国会に提出されると同時に公表される(多くはインターネットで公表され、ダウンロードできる)。国会に提出された政策法案は、まず専門委員会に送られる。専門委員会では国会議員からの動議と共に審議され、議事録が作成される。国会の専門委員会は非公開であるが、議事録は発言議事録ではなく答申書と呼ばれる決定議事録である。そして専門委員会の議事録は本会議に送られ最終決定が行われる。なお本会議では発言議事録が取られる(本会議においては各議員と大臣あるいは各政党間の議論が行われる)。委員会の会合が非公開で、議事録が決定議事録であることによって、委員会において政党間の話し合い、交渉も行われるので、合意を得やすいと思われる(特に、政治的駆け引きから与党と野党の対立は大きいように見えても、実際には見かけほど意見の対立は大きくないことは良くある)。大きな問題になるほど、政党間での合意に努めようとする伝統があり、年金制度の五党合意などはその典型的な例である。
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