生活保護の全国標準額

スウェーデンの生活保護に関しては、他のページにその詳細を書いた。
スウェーデンの生活保護は生計援助およびその他生活のための援助に分けられている。さらに生計援助は全国標準額と個別認定額に分けられている。全国標準額は一般的な生活費で全国同じ額である。

全国標準額は消費調査に基づいて決められるが、今までその構成、位置づけに関して議論が続いていた。まずその構成であるが、家具などの一時的に必要な項目を標準額に含めるかどうかの議論があった。これはある市が家具費の支給を拒否したことから始まり、行政裁判などを経て、最終的に家具費などは生計援助ではなくその他の援助に含まれることとなった。アフリカから来た難民に対する冬用の衣類の購入も同じ理由で、生計援助ではなく「その他生活のための援助」に含まれる。
同様にして、携帯電話も議論の対象となった。電話代は世帯の費用に含まれているが、携帯電話が普及し、各個人が携帯電話を持つようになった結果、携帯電話の費用を個人の費用に含んではどうかという議論が起こった。現在、これは個人の費用に含まれている。
2番目の議論は標準額と物価指数との関係である。原則的に標準額は物価の変化に合わせることになっているが、物価指数とはすべての物価であり、標準額に含まれない商品も含む。90年代の初め、税制改革によって家賃の上昇率が大きかった年があった。そしてこの年の消費者物価指数は上がった結果、標準額が増額された。しかし家賃に対する給付は標準額に含まれず、個別認定額に含まれている。このため、標準額の増加は「増やしすぎ」ということになり、最終的に計算方法が変更された。

生活保護は社会サービス法にもとづいて市が決定する業務である。このために社会庁はガイドラインなどを出している。市は社会庁のガイドライン、行政裁判の結果などを参考に、独自にその決定を行う。一方、政府として市の間で認定格差が出るのは好ましくない。この結果、全国標準額に関しては省令という形で法律化された。なお社会サービス法では、必要性がある場合には標準額の増額あるいは減額も認められている。
国は市の生活保護行政などを監査するが、主に申請のプロセス、合法性などが監査される。申請者が福祉事務所の決定に不服であれば、行政裁判所に不服申請することになる。

社会サービス法においては、「妥当な生活」という言葉が使われ、支給は最低レベルではない。実質的に低所得者レベルであるが、「妥当な生活」という言葉の厳密な定義は行われていない。「妥当な生活」は状況によって異なり、一律に決められるものではないという判断である。「妥当な生活」という言葉は生活保護に限定されないで、社会サービス法で広く使われている。例えば高齢者のうちひとりのみ介護の必要性があった場合でも、(本人が望むならば)高齢者施設に入居できることが最近決定された(社会サービス法の変更)。その理由は夫婦など長く生活を共にしてきた人が一緒に高齢者施設に入居できるのは「妥当な生活」に相当するという判断であった。

生活保護は一時的な援助であって、生活保護で長期間生活するということを前提に作られてはいない(生活保護は、原則毎月申請するということになっている。このため日本で話題になっている保護辞退という概念はない)。その典型的な例は高齢の移民者である。特に高齢で移民した場合、保障年金を満額得ることはできない。満額を得るためには40年の居住が必要である。これらの移民者は全体から見れば多くはないが、生活保護制度の対象にするのではなく、根本的な問題は年金であるという観点から、高齢者生計援助という新しい給付制度が作られた。どちらも税金から出費されているが、高齢者生計援助は市ではなく国の出費である(制度上は年金制度の一部である)。

世帯収入の認定において学童のアルバイト収入を考慮するかどうかは、以前は各市にまかされていた。しかしその後ガイドラインでは「考慮するべきではない」と明記され、現在その規定は「格上げ」されて、社会サービス法に明記されている。この場合の学童とは、21歳以下で高校生までを指す。
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