高齢者施設の居住水準

現在ではほぼすべての高齢者施設は個室でなおかつ住居水準を満たしているが、一夜にして出来たわけではない。スウェーデンでは50年代から老人ホームの個室化が進められていたが、政策上の大きな転換は1985年に決定された住宅法および1992年のエーデル改革である。
1985年に決定された住宅計画法によって、高齢者、その他の長期的疾患者、精神病患者、障がい者も住宅に住めるようにすべきであると、その方向性が決定された。1985年、老人ホーム入居者の91%が個室に住んでいた。残りは二人部屋である(居室の89%にはトイレが設置されていたが、居室は狭かった)。一方、当時医療施設であったナーシングホーム/長期療養病院では個室27%、二人部屋30%、四人部屋38%であった。

そしてエーデル改革によって、すべての高齢者施設は特別な住居と位置づけられた(特別な住居という言葉は一般住居に対する概念で、行政決定によって入居が決まり、原則入居とケアは一体となっている)。なお自由に入居できる「高齢者住居」は特別な住居という概念には含まれないので、上記の数字には含まれないことに留意する必要がある。1992年配偶者以外の人と同室だったのは入居者のおよそ15%になる。

現在(2010年の状況)、配偶者以外の人と同室なのは入居者のおよそ1%(住基準を満たす場合0,6%、住基準を満たさない場合0,4%)である。なお完全な住居基準を満たすのは75%、個室ではあるが住居基準を満たさない居室の居住者はおよそ20%である。なお個室ではあるが住居基準を満たさないというのは、簡易キッチン、トイレ、シャワー/浴室のどれかが欠けている場合を指す(入居者が認知症である場合、居室に簡易キッチンを設置しないことは認められている)。
2010年の状況を2003年と比べてみると、簡易キッチン、トイレ、シャワー/浴室のすべてが欠けているのはおよそ70%減少し、キチネットのみが欠けているのは10%減少した。また3部屋などの大きな居室も47%減少している。一方、住基準を満たす1居室は9%増加した。配偶者以外の人と同室である入居者は、この7年間で87%減少した。

住居化することにより住居費が高くなることは考えられるが、家賃を含む生計費が総収入(家賃補助を含む)と比較されて最低額が残らなければならないように決められている。このため、収入が低いという理由により、特別な住居に入居できないということはない(この結果、利用者の20-25%は介護費用を払っていない)。

高齢者施設の住居化は数回国庫補助があり、市が計画案を作って実施する(運営委託も含む)。また国が公表している高齢者ケア統計においては、個室の割合などが市ごとにわかるため、これが無言の圧力になっている。もし十分住居化が行われていないならば、市は市民およびマスコミから批判されることになる。このように施設の住居化は、スウェーデンでさえ20年以上にわたるプロジェクトなのである。政治家がビジョンを作り、それに従って淡々と実行していく(数年おきに市は住宅計画を作成するが、その時に高齢者施設/特別な住居の改築案/新築案が計画される)。

80センチ論争

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