青少年の暴動

スウェーデンにおける暴動が日本でも話題になっているが、マスコミに書かれているほど単純な話ではない。今日、朝日新聞にストックホルム発のロイター電の記事が載っていた。以前の記事に比べて相対的に正確であるが、異論がある部分も存在する。
まず今回の騒動の原因は複雑であり、聞く人によって意見は異なる。左翼系の団体は社会問題と警察の対応を批判するが、特に警察の対応に問題があったかどうかまだ不明である(問題点は、投石される中での排除行為という状況で、必要以上の手荒い対応をしたかどうかである)。刃物を持った男性が警官に手向かい、射殺されたことが原因であるという意見もあるが、これに関しては調査委員会が設置されている。

一般的な背景要因と特殊要因を区別することが必要である。
騒動の直接的な原因でないにしても、背景要因は青少年層の社会に対する不満であると思う。特に騒動が起こった地区は失業率も高い(青少年失業率についてはここを参照)。特にこの地区でおいては学校にも行かず働いてもいない青少年が多い。一般的に義務教育しか出ていないあるいは高校中退の青少年は職を得ることが難しい。もちろん差別もあるかも知れないが、これがいちばん大きな問題かどうか。
新聞記事には、すでに逮捕された青少年の背景分析が載っていた。これらの青少年は麻薬、窃盗などの犯罪歴があり、警察にはよく知られていたらしい。また家族との関係が悪く、バガボンド的な生活をしている青少年もいるらしい。また写真を見ていて気になったのは黒の衣装で黒のマスクをしている青少年の群れである。暴動の際にはよく現れるグループで、どの様なグループかは知らないが、以前ヨーテボリでのEU会議の際に暴動の中心的な役割を担ったのはこのグループである(アナーキスト/極左集団だといわれている)。今回もこれらのグループの組織的行動が市民パトロールによって報告されている(これは日本のどの新聞にも引用されていないようである)。
この事件はまだ終わってはいないが、青少年(特に貧困層)の社会に対する不満という一般的な背景の中で、一部の青少年あるいは青年グループが暴動を扇動したような気がする。警察によると、暴動に参加した青少年は地域に住んでいる青少年、犯罪を犯した不良グループ、職業活動家に分けられるようである。

なお前記の記事の中で、誤解を招くようなコメントがある。
「「反移民」を唱えるスウェーデン民主党の躍進は、同国民の意見を二極化させてきた」
スウェーデン民主党の役割は過小評価も過大評価もすべきではない。前回の選挙でこの党の得票率は5,7%であり、移民者あるいは難民に対して世論が厳しくなっているわけではない。スウェーデン民主党と他の政党との違いはこれを移民問題として捉えるか階層/格差問題として捉えるかである。
「深夜にストックホルム中心部を出発する列車は、単純労働を終えて帰宅するアラビア語やスペイン語を話す移民であふれている」
外国背景のある住民が20%いる国なので、列車で他の国の言葉を聞くのは珍しいことではないし、どの路線に乗るかによっても異なる。
「スウェーデンが2012年に受け入れた難民申請者は4万3900人。前年から50%近く増え、過去2番目に最も多い人数となった。---- 難民申請者は、短期的には社会保障制度の財政負担となる。OECDのデータによると、外国出身者の失業率が16%であるのに対し、スウェーデンで生まれた国民の失業率は6%。同国が充実した福祉制度を維持するには高水準の就業率が不可欠となる」
2011年の難民申請者数は2万3千人、2012年は4万4千人である。しかしこれらの申請者がすべて認められるわけではない。2011年に認められたのは1万2千人であり、シリア、アフガニスタン、ソマリアが多い。もちろん移民者も含めて高水準の就業率は不可欠で、この問題が統合政策の一番重要な点である。

「しかし一方で、同国は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、格差が最も急速に拡大している国でもある」
これは事実であるが、先進国の中では依然として格差が少ない国の一つである。たとえば2008年ジニ係数は0,26(OECD平均は0,31)である。なお日本は0,32(2006年頃)で、OECD平均よりも格差は大きい。

Inequality-sweden.jpg
OECD (2011), Divided We Stand: Why Inequality Keeps Risingより


可処分所得は1991年から2011年まで39%上昇しているが、年齢層によって大きな違いがある。特に20才から24才の単身者の可処分所得は1991年から微増しているだけである(単身女性の場合1%、単身男性の場合5%、子供がいない二人家族の場合10%)。言い換えるならば、国民一般の可処分所得は1999年には1991年のレベルに回復しているが、20-24才の男性は2007年、20-24才の女性は2011年に1999年のレベルまで回復した。統計庁資料より。
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