ある改善プロジェクト

スウェーデンの高齢者ケアもバラ色の話だけではない。市によっては財源縮小の結果、状況が悪くなっている市も存在する。この夏に、過疎地のある特別な住居において、予算を増やすことなく高齢者ケアの状況を改善するプロジェクトが行われ、これが4時間の番組として放映された。スウェーデン語がわからなければ、番組内容をフォロ-するのが難しいが、最後の番組のみをアップする。10月12日までは日本でも見られるはずである。

番組

背景。
4ヶ月でこの施設をお金をかけることなく、改善しようということで始まった。このために二人の専門家の援助を得た。一人はウーメオ大学の老年学教授、二人目は介護学の専門家である。
いくつかの問題があることが判明した。
1.医薬品
他の薬との服用で副作用をもたらす医薬品、処方が不適正であるのが見つかった。
これが転倒原因になり得る。
担当医、薬剤師、看護師が居住者の医薬品リストのチェックを行い、一人当たりおよそ3種類の医薬品を削減した。
2.食事
食事に対する不満が大きく、これが十分な栄養が取れないことにもつながっている。
夜の食事から朝の食事までの時間が長すぎる。
食事の改善。半加工品の削減。夜に間食。
3.活動
施設内での活動が少なく、居住者は個室で一人でテレビなどを見ていることが多い。
居住者が集まって行う活動を増やす。同時に身体を動かす活動/リハビリの強化。居住者の必要性ではなく、職員のスケジュールによって居住者の生活が決められる(例えば寝る時間など)。一部屋を美容室にする。ユニットでの日常活動に居住者が参加(家事など)。
4.職員
職員のモチベーションを強化。研修。

結果。
このプロジェクトを始める間に、居住者の身体状況、精神状況を計測。職員にもインタビュー。プロジェクトの終わりに、再び居住者の身体状況、精神状況を計測。ほぼすべての項目において居住者の状況が改善された。居住者の体重も増え、鬱病も減った。転倒事故も大きく減少した。居住者は以前よりも他の居住者と交流するあるいは活動することが増えた。職員は以前よりも仕事に対するモチベーションが増えた(自分たちでも改善することができるという自覚の増加)。

なおこの特別な住居は築30年で、私は20年ぐらい前にこの施設を訪問したような気がする。その時はサービスハウスであったような気がするが、サービスハウスの内部構造(特に長い廊下)がユニットでの「共同生活」を困難にしているのではなかろうか(内部はほとんど変わっていないと仮定しての話だが)。
社会庁資料によれば、この市のサービス受給者の満足感は100点満点で90点(ホームヘルプ)、83点(特別な住居)で、全国平均はそれぞれ88点、80点である。

この番組の後、入居者、関係者、高齢者ケア担当大臣も参加した1時間半の討論が行われた。

後で確認したところ、この施設は1993年7月に訪問している。
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