選挙2014

選挙結果

17日水曜日は海外投票および市外での事前投票の開票が行われている。19時現在以下の結果が選挙庁のホームページで公表されている。


スクリーンショット 2014-09-17


左翼ブロック(S+V+MP)が43.6%、保守ブロック(M+C+FP+KD) が39.4%、極右(SD)が12.9%である。なおフェミニスト党(FI)は最低得票率4%を得ることができなかったので、国会に議席を得ることが出来ない。現時点での議席配分は左翼ブロック158議席、保守ブロック142議席、スウェーデン民主党(極右)が49議席になる。全議席数は349議席なので、社民党を中心とする左翼ブロックは過半数には届かない。なお現時点における国会の投票率は85.7%で、前回の選挙に比べて1.2ポイント増加した。

この選挙は2つの特徴がある。第1は政権与党である穏健党の大敗で、第2は極右であるスウェーデン民主党の躍進である。穏健党は前回の選挙より6.8ポイントも得票率を減少させた。そしてスウェーデン民主党は前回よりも7.2ポイントも得票率を増やし、得票をほぼ倍増させた。社民党の得票率は前回とほぼ同じである。興味があるのはスウェーデン民主党の得票はどこからきているかということであるが、出口調査によれば、スウェーデン民主党に投票した市民のうち29%は、前回の選挙において穏健党に投票している。次に多いのが前回社民党に投票したという市民で17%になる。スウェーデン民主党は排他主義あるいはは移民主義であると思われているが、そう単純ではない。移民/難民問題が大事だと思う支持者が多いのは想像が付くが、政治家への信頼が低い市民の割合も多い(なお全体では政治家への信頼性は増加している)。

政治状況

今回の選挙結果は、ある政治家によると「今までで一番困難な状況」であり、組閣および政権の維持が困難になっている。すべての政党はスウェーデン民主党と協力しないと明言していて、出来るだけスウェーデン民主党の影響力を弱めようと考えている。しかし穏健党の大敗およびスウェーデン民主党議席の倍増によって、社民党を中心とする革新ブロックだけでは議席の多数を得られず、少数与党になってしまう。現在必要とされているのはスウェーデン民主党に影響されないために安定政権を作ることであるが、まだその行方はわからない。社民党と環境党とは連立政権を作ると思われるが、左翼党の政権への参加を社民党は拒否した。その理由はこれを認めれば、保守ブロックの協力を得ることが難しいと思われることである。前回の組閣において、左翼党が入らなかったことを批判した労働組合関係者は、今回は全く沈黙していて「党首に組閣の全権を委任している」と言っている人が多い。
現時点においては、保守ブロックの各政党代表は社民党との政権には加わらないと明言しているが、保守政党の地方支部や産業界では社民党との閣内あるいは閣外での協力を押し進めるべきであるという意見が増えている。社民党と保守ブロックの各政党との協力が機能しなければ、制限事項の変更が必要であると言っている関係者も存在する。この制限事項とは4%条項をさし、全得票数の4%を満たさなければ議席を得ることができない。機能しなければこの4%を上げなければならないという意見である。このような政治状況のため、どの様な組閣状況になっても、スウェーデン民主党以外の政党との協力が増えるとみられ、例えば社民党の選挙での公約がそのまま実行されるとは思えない。

マスコミの報道に見るスウェーデン感

今回の選挙は日本ではあまり注目されてないようで、記事の数も少なく、通信社あるいはロンドン特派員の記事が多いようである。いくつかの記事において、「高福祉へ回帰」という表現が見られる。例えば14日付の日経新聞の共同発電に、「スウェーデン総選挙、高福祉への回帰が焦点」、「高福祉政策に戻る」という言葉が使われ、保守政権では高福祉ではなかったかのような書き方である。もちろん野党である社民党などが「教育や医療の民間委託を進めたが、貧富の差が拡大、学生の成績が落ち、福祉施設の質が低下した」と批判するのはごく普通であるが、その内容が十分正確であるとは言えない。保守政党の「成績」をブロッグで分析する余裕はないが、いくつかコメントを書きたい。

統計庁は毎年所得分析を行っているが、絶対的貧困度として「低い生活水準」という定義では、貧困の拡大は2006年から2010年に起こっている。可処分所得のメジアン値は90年代中旬より増加している(なお所得にキャピタルゲインを含めばその変化は大きく、ジニ係数は1980年頃から増加している、ただし他の国よりもジニ係数は小さい)。スウェーデンは昔から「就労戦略」を取っているが、これが特に傷病保険、失業保険において強化された。また90年代から青少年の失業が問題となっている。高福祉に戻るというのは、これらを是正するという意味であろうと思われるが、「高福祉に戻る」という表現はあまりにも単純過ぎはしないか。保守政権においてもマクロでの社会保障費用は減少していないので、「中福祉」であったわけではない。

「福祉施設の質が低下した」というのは最近新聞を賑わした一部の高齢者ケア施設でのスキャンダルのことをいっていると思われるが、民間施設の方がレベルが低いあるいは保守政権になってレベルが落ちたという証拠はない。ただ、福祉および医療分野に利益を目的にする会社が参入することに対して世論の多くは反対である。またマスコミの報道は単純に株式会社とスキャンダルを結びつける傾向がある。

14日付の朝日新聞には記者が書いたと思われる「増税、支持する有権者 スウェーデン総選挙で与野党が主張」という記事が載っている。ここでは主に増税に焦点が当てられている。中身は相対的に正確であるが、このような表現がある。
「「大きな政府」に振り子が戻ってきているという面もある。現政権は「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」として、減税や公的部門への民間参入を進めてきた。この「中福祉・中負担」路線への不満が出ているのだ。」
傷病保険および失業保険などが厳格になったということはあるが、福祉あるいは社会保障費は減ってはいない。公的部門の民間参入が増えたが、これによって福祉費用が減ったわけではない。これを中福祉路線への不満と書くのは書き過ぎである。なお所得減税の結果、GDP比での負担率は減ってはいるが、中負担路線と書くのも書き過ぎであるように思える。とにかく「高福祉高負担」という言葉の乱用あるいはあまりにも単純化しているように思える。

90年代から「就労戦略」は強化されたが、「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」というのは誰が言った言葉なのであろうか。「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」という言葉は日本でもよく使われるが、どの様な科学的根拠による表現なのであろうか。ましてや、「減税や公的部門への民間参入」とどの様な関係があるのであろうか。例えば失業保険制度は厳格化されたが、これは失業保険制度が就労までの一時的機能として非効率な点があるとして改革されたものである。もちろん野党は改正に反対であるが、「福祉が充実しすぎると働かない人が増える」というそのような単純な認識レベルで議論は行われていない。経済学においても生活保護や失業保険給付のレベルと就労との関係は常に議論の対象になっている。

社会保障費削減の誤解に関してはここを参照。

地方自治体における選挙結果

今週末あるいは来週に追記します。
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