給付にカードを利用

先日、大阪市で生活保護の支給およびチェックにカードを利用するというニュースが出ていた。よく似た制度はスウェーデンもあるが、その機能および目的は全く異なっている。

スウェーデンでは生活保護以外の社会保障給付は社会保険庁から行われる(年金の取り扱いは年金庁であるが、給付は社会保険庁から行われる)。生活保護は市の担当で、市が給付を行う。普通、受給者の銀行口座に振り込まれる。このため給付を受けるためには銀行口座が必要である。しかし何らかの理由で銀行口座がない場合はどうするのであろうか。この典型的な例は国の担当である難民申請者である。
難民申請者が施設で生活している場合は食事付きで、1日24クローナ(400円ほど)の小遣いが給付される(施設でない場合は71クローナ)。難民申請者は個人番号がないため、スウェーデンに銀行口座も開けない。このため今までは現金で支給していた。この給付をどの様にして効率化出来るかが話題になっていて、2006年からICAというスーパーマーケット系列のカードを使用している。今年だけで、10万枚のカードを発行するようである。最低条件はICA系列のお店だけでなく、他の店でもカードが使えることで、このためにマスターカードの機能が含まれている。
このカードには名前が記載されていなくて、移民庁の参照番号のみである。移民庁が支給を決定すると、これはオンラインでICAバンクに連絡され、カードの保持者は次の日から暗証番号を使ってこの額が使用可能になる。ICAバンクがカード保持者の個人情報にアクセスできるわけではない。移民庁のみがカードの参照番号に保持者の氏名をリンクできる。もちろんこのカードの使用は給付の簡素化、所持者の便利性であり、移民庁が給付額の使用用途などをチェックする必要性はない。
カードに名前ではなく参照番号のみが載ってるということはもう一つの利点がある。たとえば何らかの保護を必要とする人もこのカードを利用することによって、現住所を知られることはない(スウェーデンでは住民登録情報は公開なので、個人番号によって住所を知ることが出来る。なおカードには個人番号はのっていない)。ヨーテボリ市では何らかの理由によって銀行口座が利用できない人のためにこのカードを使用するというニュースが出ていた。
銀行はこれをビジネスとして行っていて、主な収入源は国が支払うカード発行料および現金を引き出す場合の手数料である。

なお大阪市で話題になっている「指導の必要がある」使用目的などは、スウェーデンでは全く話題になっていない。そもそも生活費を除く住居費などは領収書の提示によって支給される。生活費の額は国で決まっているが、その使用目的は直接チェックされない。たとえば一食減らして賭け事に使うあるいは酒を飲むのは、これが合法である限り市民である生活保護受給者の行動を制限できない。もちろんこの結果、自立した生活に影響することは考えられるが、これは定期的な面会などで助言できることである(例えば酒飲みであれば、酒を断つあるいは減らすコースに行くことが援助として決定される)。

他の記事も読んでみたが、この制度は問題点だらけで、三井住友カードと富士通総研が将来のビジネスにするための実験のような気がする。
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