生活保護行政における所得/給付額の把握

日本ではマイナンバーをどのように活用できるかという議論が盛んである。スウェーデンでは60年代から個人番号を本格的に使うようになった。例えば生活保護申請者の公的機関からの収入や対応の確認などは福祉事務所の担当者がそれぞれの機関に連絡して情報を得る。去年からこれが改革された。これは地方自治体連盟、社会保険庁、職業安定所、国税庁、年金庁、奨学金庁などの行政機関と失業保険組合協力機構との連携によるもので、銀行などの民間団体などは含まれていない。現在のところ、290のうち180の市がこれを利用している。運営自体は地方自治体連盟の委託に応じて社会保険庁が行っている。その目的は認定の効率性および正確性である。生活保護の決定にあたっては個人の種々の情報が必要であり、このため間違った支払い(申請者の間違いおよびごまかし、行政側の間違いなど)も多い。

もし市が申請者の情報が必要である場合、このサービスにオンラインでアクセスして上記の参加団体から申請者の所得/給付情報などを入手するという方法である(7秒で入手できるようである)。なおこれらの所得情報は各機関が業務において公開できる情報である。たとえば、国税庁では確定された確定申告情報であり、それまでの過程において入手された第1次的情報ではない(各年度の所得は次年度の12月に確定される)。社会保険庁などは各月ごとの給付情報が送られる。なお財産税は廃止されたので、国税庁は預金情報を集めていない。このサービスを使って、たとえば職業安定所の対応状況も入手することが出来る(失業している場合、まず職業安定所に登録して職業安定所の就労援助を受ける。今までは書類で提出していた)。
今までは各市の生活保護担当者がこれらの機関にそれぞれ連絡していたが、このサービスの導入によって、これらの業務は大きく合理化された。報告書によると、月にあわせて27万5千件の質問があり、これを年間数に直せば300万件になる。これは150万時間、人件費としては4億5千万クローナ、職員760名分に相当する。一件当たりの問い合わせに換算すると、今までの150クローナが58オーレに減額されたことになり、今までの0.4%しか費用がかからないことになる。
これによって福祉事務所職員はもっと申請者の自立援助に力を入れられるようになる。なおこのシステムを使うために、第1に各市の議会の承認、第2に社会保険庁の技術的要求を満たす必要がある。

追記
銀行の預金額の把握に関しては、福祉事務所の要請に応じて申請者自身が銀行口座の明細のコピーを提出するようにしているようである。ストックホルム市では申請から数か月前の銀行口座の出し入れの明細を要求している。なおスウェーデンの銀行は全国レベルで管理され、すべての口座は利用者の個人番号にリンクしている。なお利子や株の売買による利益などには国税が課せられるため、これらの情報は各銀行(あるいは証券会社)から国税庁に送られている(雇用主あるいは支払者は1月に前年度の年間情報を国税庁に送る)。もちろんこの段階で源泉徴収がされている。

銀行などは預金者の個人情報を守らなければならない。この例外はたとえば課税に必要な情報であり、それ以外の情報を行政機関などに漏らすことはありえない。

またスウェーデンでは国税庁が地方自治体に対する住民税なども扱っている。雇用主は国税庁が定めた源泉徴収表にしたがって源泉徴収するので、仮に副業があってもこれが会社に漏れることはない(普通は副業が禁止されていない)。住民税を含めた税金については、国税庁がすべてを取り扱っているので、税金について市民が市役所と情報のやり取りをすることはない(住民登録も国税庁住民登録部が行っている)。



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